よく「レモンを絞りかけるような料理には爽やかな酸をもった白が合う」と言います。
これは間違ってはいないと思います。
目板カレイの唐揚げにレモンを絞ってリースリングなどを合わせる。
フライドチキンもそうです。
美味しいですよね。
ハーブを散らしたスモークサーモンにレモンを絞ってソーヴィニヨンブランを合わせても美味しいものです。
ですから「酸には白である」と思われるかも知れません。
しかし、それらの料理にレモンを絞っても「酸っぱい料理」ではありませんね。
脂を切る、塩分と酸でバランスをとる、などの理由でレモンを絞っている訳で酸っぱい料理にしている訳ではありません。
これがレモンに浸すくらいに酸っぱくして白ワインを合わせると途端に不味くなります。
白ワインが持っている酸以上の酸が料理にあるとボケてしまうだけではなく、引き算された酸以外の風味が臭く感じる事さえあります。
が、タンニンの効いた赤を合わせると甘く、しかも美味く感じるのですね。
えっ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは理論通りです。
つまりタンニンの効いた赤はデキャンタして=酸化させて頂いた方が美味しい訳です。
デキャンタの替わりを口中のヴィネガーがタンニンを酸化させ甘く感じさせるからなんですね。
ピクルス然り、タコの酢の物然り、エスカベッシュ然りです。
酸に限らず、ワインを料理にマリアージュさせる場合、度合、というのが大事ですね。
「その要素がもう少しあった方がいい場合」と「その要素は充分ある」場合では答えが逆になる場合が多いのです。
面白いですね。
ですからソムリエは辞められません。
長年やってても新しい発見は後を絶ちません。
「真逆を試してみる」がソムリエのやって見る試みかな、と思います。