社会科学上の不満

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ミサイルが飛んだ日

2007-03-09 14:44:36 | 外交と防衛
2006年7月5日未明から早朝にかけ、北朝鮮民主主義共和国が数種のミサイルを日本海に向け発射しました。2006年7月5日13時現在6発のミサイルが発射されたことを日米及びロシア・中国・韓国・オーストラリアなどの各政府が公式に発表しました。更に同日17時にもう一発発射されました。

政府の発表によれば、3発目はテポドンⅡ、他の4発はノドンorスカットCだそうです。
このうちテポデンⅡは米国の発表で発射40秒後に失速・墜落したそうです。
ここで注目して頂きたいのは、旧ソ連製のスカッドミサイルです。このミサイルは射程600km前後の中短距離ミサイルで1991年の湾岸戦争の時もイラク軍によりイスラエル爆撃に使用されました。しかし速度もMac0.7~0.8程度で、パトリオット迎撃ミサイルにその殆どが迎撃されました。この時のスカッドBの発展型がスカッドCでその性能は大差ありません。問題はこのミサイルでは日本には届かないことです。つまり韓国が目標で配備されたミサイルです。

北朝鮮よりの政策を支持して来た、現韓国の政権には大打撃となりました。拉致家族の対面で韓国世論からバッシングを受けつつあるこの政権にとって、日本が反論することを狙った竹島の調査を強行し反日を煽る児戯に出たところで、この北朝鮮のミサイル発射事件です。韓国政権の無能を世界に示したようです。当初韓国政府の発表はテポドンⅡとスカッドではなくテポドンⅡとノドンでした。しかし米国の発表がそれを否定しました。ノドンならば標的は日本であり韓国ではないのですが、スカッドでは韓国か中国もしくはロシアにしか届きません。

弾道弾とされるノドンやテポドンは発射されると一旦成層圏を出、秒速5000mで目的の地点に落下してきます。余りの高速で迎撃が困難なのです。
 約1週間前に米国がノドンに見立てた標的のミサイルを迎撃したデモンストレーションを行ないました。ここで使用した迎撃ミサイルSMⅢも100%の保証はありません。

北朝鮮の1度に7発のミサイル発射によるデモンストレーションは世界史上存在しません。これは米国へこれだけの数を迎撃できるのかというメッセージでもあるのでしょう。
 
しかし、北朝鮮の失敗は意外に大きなものではないでしょうか。まず6カ国協議の議長国中国が面子を潰されました。さらにミサイル着水地点全てがウラジオストックの鼻先の海域でロシア太平洋艦隊の司令管がインタビューで憤慨していました(大統領府とは裏交渉があったようだが)。いくら盧泰愚大統領の韓国でも表立った援助はできなくなりました。日米はいまさら言うにおよばず、北朝鮮は自らの立場を悪くしてしまったのです。また、テポドンⅡの発射が成功であればそれなりにヤミのテロネットワークでも受け入れられたでしょうが。
イラン高官が見学していたとの情報もありますが、信憑性はいかがでしょうか。

スカッドとノドン・テポドンⅠ・テポドンⅡは大きく異なるミサイルです。
スカッドはMac0.7~0.8(秒速250m前後)の速度ですからジャンボジェット機と同じくらいの速度です。さらに射程距離は約600kmですから、日本には届きません。
 しかし、ノドン・テポドンⅠ・テポドンⅡは弾道弾です。一度成層圏を出て
秒速5000mの速度で落下してきます。ノドンの場合日本まで発射されてから
6~7分で着弾します。この速さに対応が難しいのです。
 双方とも液体燃料方式のミサイルですので、発射前に(発射体制を整えてから)燃料を注入する必要があります。スカットでは燃料注入に約1時間かかりノドンやテポドンにはまる1日以上かかります。これは射程距離により注入する燃料の量により決まります。
この液体燃料は、腐食性が激しく更に安定性が極端に悪いため爆発し易い危険物です。一旦燃料が注入されると中止することは考えにくいものです。
 旧ソ連の技術で燃料を注入したミサイル本体は1ヶ月程もつそうですが、
今回のテポドンⅡの失敗もそのあたりに原因があるのかもしれません。
 また弾道弾の射程距離は最大射程距離を言う場合が殆どですが、最小射程距離は意外に発表されていません。通常最大射程距離の75%と言われています。
このような理由から韓国政府がスカットでなくノドンとして発表したのではないかと推測します。ノドンの最大射程距離1300kmとすると最小射程距離は
975kmとなり日本がスポッリ射程内にいりますが、韓国国土は飛び越えてしまいます。
 テポドンⅡの最小射程距離では日本を飛び越えてしまうので、脅威になり得ません。しかし、40秒で失速・墜落する程の不良品では代えって日本にとって脅威となりました。
 
北朝鮮が経済制裁発言に極端に反応していますが、そのあたりに今回のミサイル発射というデモンストレーション(砲艦外交)の一因があるのでしょう。
朝鮮日報によれば「韓国大統領が一言のコメントも無い」と批判しています。
「平和・平和」と唱えていれば平和がくると寝言を標榜している社民党や共産党は非難声明を出すだけで何も行動していません。
与党は経済制裁という行動をとることを発表しました。民主党は運がよいのか小沢党首が訪中中であり、中国高官にクレームを着け、党間外交を行ないました。適当にあしらわれましたが。その他の野党は寝言を標榜するというだけで行動が伴いません。安全保障について明確な国民に対するアピールがなければ国会議員としては失格です。100万の謹言より1つの実績です。実績といえば北朝鮮の日本国内のテロに協力してきた両党です。

 2006年7月10日国連の安全保障理事会で北朝鮮への議決なされる予定ですがこれは延びます。中国は議決ではなく拘束力のない議長声明に収めようと必死です。中国は現実的に北朝鮮を21世紀の植民地としており、今回の暴挙に頭を抱えています。
北朝鮮最大の銅の鉱山の租借、東岸の港の租借、期間は50年間と北朝鮮が現状のままであることを最も望んでいます。
 ここで日本に援護射撃をしてくれた国がインドです。核搭載可能なミサイル
の発射実験をしてくれました。それも事前通達の上国際慣行にのっとりミサイルの発射実験をしたのです。このアグニ3は射程距離が3500kmあり、隣国パキスタンが目標のミサイルではありません。西部のペシャワール近辺が目標となり首都イスラマバード近辺は飛び超えます。目標は中国です。
実験は失敗しましたが、これで益々中国は北朝鮮を弁護し難くなりました。
 もっとも中国自身が北朝鮮を扱いかねています。反対に北朝鮮も中国が目の上のタンコブになっています。現在の中国政府は北朝鮮に対し権力の世襲を止める様に圧力をかけています。社会主義陣営での権力の世襲はありえないことです。金日成から金正日への世襲を例外的に認めた訳ですから、3代の継承は絶対に認めることはありません。ここに中国と北朝鮮との微妙な齟齬が生じています。中国の言う事を聞かなくなった北朝鮮は厄介なものです。北朝鮮はロシアの資料によれば匪賊(盗賊団)の統領(金日成)をスターリンが朝鮮半島に送り込んだそうで、対日パルチザンの英雄金日成とは40年程活躍の時期にズレがあります。ロシアの金日成の出自に関する情報の発表に北朝鮮は激しく非難した過去があります。日本マスコミの多くが無視していますが。

 しかし自国の隣に米国や日本・韓国など自由主義的な要素の強い国家が成立することを、中国もロシアも望まないということを前提に物事を推察すると国連安保理で日本が提出した議案が成立する可能性は極めて低いと考えなければならないでしょう。国連は世界政府ではないのです。UNAITED NAT-ION つまり連合国、第二次世界大戦の戦勝国クラブです。
 日本はこの結果をみて国連の分担金の額に応じれば良いと考えます。何も拒否権をもつロシアや中国より多額の分担金を負担する必要があるのか、国民的な議論が必要ではないでしょうか。

 額賀防衛庁長官が、ミサイル基地攻撃が必要ではないかと問題提起しましたが、昭和31年鳩山総理の時にもこの議論がありました。社民党や共産党は猛反対でしょうが、ミサイルが発射され着弾まで約7分間、如何なる防御方法があるのかこの両党は明示しなければなりません。それでなければ反対だけの無責任政党であることを国民に公示することになります。「外交で」と言いますが中国の外交でも北朝鮮の暴発を防ぐことはできませんでした。まして武力がない日本でどの様に北朝鮮を説得するのでしょうか。具体的に国民に示さねばなりません。「無防備都市宣言を発しチベットのように幸せに生きればようい」と寝言を言っている社民党議員(辻本議員)がいますが、それは中国のプロパガンダを信じ込んだ、国民より自分の理論が正しいと証明したいだけではないでしょうか。この様な寝言を言っているようでは益々議席を減らすでしょう。まさか、麻薬や覚せい剤に偽ドルの決済を行なっていたマカオの銀行への金融制裁を北朝鮮の要求通り撤回しろとは、さすがに現実感覚のない社民党や共産党でも言えないでしょうが。今回の件でのマスコミの露出率を見てももはや国民は相手にしていない政党ですが。

 日本のミサイル防衛に中国・韓国がクレームを付けるのは当然です。マスコミは扱いませんがアエラの編集長であった軍事評論家の田岡氏が、米軍の司令官から直接聞いた話として、韓国の軍部がF-15k(2006年より配備)を採用するにあたり「これで日本の自衛隊機を撃墜できるのか」と何度も質問したそうです。日本でこのような発言を防衛庁の人間が行なえば大問題ですが、韓国が発言すれば日本マスコミはもみ消すのでしょうか。マスコミは日本国民ではなくどちらを向いて仕事をしているのでしょうか。アエラは朝日新聞系の週刊誌です。反日に抵抗する者を利するような記事は掲載しません。
また韓国の仮想敵国は北朝鮮ではなく日本の自衛隊である事を示した出来事でありました。それでも日本は韓流ブーム本当にオメデタイ国民です。一度ミサイルで被害者(死者)が出ないと理解できないのではないでしょうか。いやオームのサリン事件の例を見ても化学兵器テロを世界で最初に行なわれたテロであり、世界にこのテロ方法を輸出したことを既に忘れている国民です。「よど号」にはじまり「テル・アビルの無差別銃乱射事件」、日本はオームによる毒ガステロだけでなく、多くのテロのモデルを世界に先駆けて行なった国です。

 米国の新聞の社説で、「ミサイル問題で国連の対応が何もできないのであれば日本は核武装を行なうことになるであろう」と言うような社説がありましたが、現在の日本人の意識は殆どそのようなことはありません。核アレルギーは健在です。しかし、世界各国がその様に日本を見ているとした場合それを外交的に有効に使わない手はありません。2004年までIAEAも日本が核兵器を密造していると疑い査察を行なっていました。「経済大国であり、世界の技術大国であり、高速増殖炉を有しており、人工衛星をロケット発射できる国が、核武装しないはずはない」と言うのが世界の見方でした。
 とんでもない誤解ですが、武器の生産=経済大国と言う図式で世界は動いています。日本のように民生品=経済大国と言うのは、世界では理解できない図式です。

 外交の一面は騙し合いでもあり、偽善と欺瞞の中で自国の国益を図ることもまた事実です。同盟国が「血を流す」と言うことが同盟相手に多大な恩義と貸しを作ることになります。当然「血を流した」国の言い分を飲まざるを得なくなります。
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