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『閃光のハサウェイ』(劇場公開・映画感想)

2021-06-26 00:01:00 | 機動戦士ガンダム
今日は予定を変更して、劇場公開された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の感想を書きます。
(先週が昔話だったので、「今」の記事にしてみました。)



当初の公開予定が昨年7月ですから、1年近く待たされての放映です。
興業収入も現時点で10億突破らしいので、大成功でしょうか。

では感想です。

1.総評
良かったです。
もう一回見たくて、劇場先行発売BD購入し、自宅でも再視聴。
良かった点を一言で言えば、実に「映画的」な作品だということ。
いや、凄いですよ。
「映像」と「演出」が!
「宇宙世紀ガンダム作品、別次元に突入」といえるものでした。

ただ、具体的に「どこが良くて」「どこが期待ハズレ」か記事にしないと、これから視聴するか検討する方の「参考」にならないし、視聴した方の「別の人間の感想を楽しみたい」狙いにも嵌まらないので、詳しく個別に書いていきます。

2.物語
本作は以下のようです。

①物語は「原作・小説(上)」ほぼ改編無い。
②但し「原作・小説」は「小説・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」の続編。本作(映画)は「映画・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の続編。

①「物語」については、本作の内容に触れる必要があるので、以下「ネタバレ」になります。
「ネタバレ」部分は****内で、文章の色も「青」にしてます。まだ「未視聴の方」は、「ネタバレ部分」を飛ばして頂ければと存じます。

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本作は以下の構成
①ハイジャック
②オープニング
③空港・ホテル
④市街地戦
⑤マフティ合流
⑥クスィー回収
⑦ラストバトル

①は緊迫感ある出だし。
「モビルスーツ戦が物足りない」との前評判でしたが、序盤の「ハイジャック」場面はハリウッド映画さながらにスリリング!
モビルスーツ戦が少ない部分も、こういうアクションで十分補填していると個人的に感じます。

②は①の最後に「ハサウェイ・ノア」を名乗った直後にオープニング切替。
ベタな差し込みですが、ドラマチックでキャッチーな演出。ズルいです。
モビルスーツのアップカットで流れますが、過去の「逆襲のシャア」ダイジェストシーンを載せて「物語の繋がり」や「映画・逆襲のシャアの続編のアナウンス」に利用するのもありだったかとも思います。
しかし、監督のネットインタビューをみると
「過去の作品を知らない方にも、本作だけで楽しめる作品を目指した」
というような内容のコメントがあるので、過去作つながりは
「解る人にはわかる」
程度で、露出を控えたのかもしれません。
オープニングの短い時間で「逆襲のシャアのダイジェスト」を流しても、情報過多でエンタメ性が薄れる気もしますし。

③は世界観・登場人物の紹介シーンなんですが、①が「急」で③が「緩」、④が「急」と、テンポ・バランスとしても良い感じ。
まず、背景美術が素晴らしい。
「宿泊ホテル」の立体的デザインが秀逸で、「泊まってみたい!」と素直に思える建物。
「澄み切った青空」と相まってリゾート体験している気分になります。

ストーリーは、ハサウェイとギギのやりとりが中心。
これにケネスも加わって、「正体を隠しながら、敵となる人物とふれあう」というガンダムでは得意のシチュエーションが続きます。
表面的に「ゆったりした時間」が流れる中に、一定の緊張感をもって物語が進行。
ギギの自由な振る舞いの危うさもあって、ハサウェイの正体を知られた状況が、グイグイ物語を引っ張って行きます。
このあたりは、原作が秀逸なんでしょうね。

ただ、これらのシーンで注目したいのは、各キャラクターの「演技」。
気まぐれなギギの豊かな表情の変化。内心苦悩するハサウェイの仕草。
声優さんの表現も相まって、殊更目が離せないシーンが続きます。

ストーリーのメイン以外では、連邦高官の家族が無邪気にハサウェイを招きいれたりするシーンを差し込み、かたや地元商店街でマンハンター捕獲描写をいれたりする事で、さりげなく貧富格差色濃い世界観を表現。
地元のタクシードライバーがマフティの有りようの矛盾をつくことで、マフティの行為を考えさせるのですが、それをモブの一般人の目線の台詞として言わせてるので、効果的に「特別な人たちの世界ではない、地に足がついた世界」を作り出しています。

④好評の「中盤の市街戦」はパニック映画さながらに。
このシーンは、皆さん言ってますが、是非劇場で見て、感じて欲しいです。
とにかく等身大の人間目線のモビルスーツの巨大さ、その戦闘が間近で起こる恐怖。
下手に文章にするより「体験」して欲しい。

⑤「マフティが基地に合流する」このパートは本編中、唯一「弛む」シーン。
「緩急」の後の「緩」ってこともありますが、マフティの仲間を紹介するパートでもあり、仕方ないところでしょうか。
これからクライマックスに向ける静けさと言えば納得?

⑥「クスィー受領」は、いよいよ主役機登場の期待感がでてます。
微妙なモビルスーツ操作シーンで、「クスィー受領が失敗するかも」といったハラハラする場面もあり、テンションが上がります。

⑦ラストバトル
終盤は「暗くて残念」との評価がありましたが、音響とパースや構図がよく、実に「映画的」。
アムロのサプライズ出演も嬉しい演出。
古谷さんは
「ハサウェイはアムロにとって、親戚みたいな感覚。甥に語りかけるように挑みました」
とのこと。
ここも是非、劇場で体験して欲しいシーンです。

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②「劇場版・閃光のハサウェイ」は小説版と違い「劇場版・逆シャア」がベース。
(小説版は、逆シャア・小説「ベルトーチ力チルドレン」ベース)
ですが、今回はその差は感じませんでした。

ちなみに「劇場版・逆シャア」と「小説・ベルトーチ力・チルドレン」の違いは、

①モビルスーツの違いとして、以下に代表される差異があります。
(左が「劇場版・逆シャア」、右が「小説・ベルトーチ力・チルドレン」)
「νガンダム」と「Hi-νガンダム」
「サザビー」と「ナイチンゲール」
「ヤクトドーガ」と「サイコドーガ」

②キャラクターの違いとして、以下に代表される差異があります。
(左が「劇場版・逆シャア」、右が「小説・ベルトーチ力・チルドレン」)
「チェーン」と「ベルトーチカ」
「ギュネイ・ガス」と「グラーブ・ガス」

③ストーリーの違いとして、以下に代表される差異があります。
(上が「劇場版・逆シャア」、下が「小説・ベルトーチ力・チルドレン」)
「チェーンのリガズィがクェス搭乗するアルパ・アジールを撃破。
逆上したハサウェイがチェーンのリガズィを撃破」

「ハサウェイがクェスを撃破」

今回、映画化にあたり、①のモビルスーツはオープニングに反映されてました。
今後のストーリー展開では、特に③がどう影響するか気になるところですね。


3.モビルスーツ

メインのガンダム2機はミノフスキーフライトする高火力モビルスーツとして、その飛行挙動がSE含め「特異」に表現されてました。
「上手いなあ」と感心する事しきり。
ジオン軍所属の私は、メッサーのガード越しのモノアイ描写、通常の重力下でのモビルスーツ挙動のリアル描写に痺れました。
プラモ欲しくなるかも。

余談ですが実は私、「ゲスト・モビルスーツ」のサプライズ出演に期待してました。
「Z」では「ジャブロー攻略」等で「MSV」等のサービスカットがありました。
「UC」でも「トリントン襲撃」等は熱かったですよね。
ですが、「ハサウェイ」では残念ながら、そういう「既存モビルスーツのサービスカット」はほぼ無し。(序盤にギャプランが出たくらい。)
ここを過度に期待すると、私のように残念な事になるのでご注意!

ついでに私の場合、更に
「富野由悠季氏が原作以外に参加してないから、氏が不参加の宇宙世紀キャラクターがチョイ役でゲスト出演してないかな。」
とか的外れな期待もしてました。
「この時期のバナージが登場」等、ファンサービスしてないかな・・・なんて、夢見てたんですね。
まあ、原作に登場しないビックネームが声で出演してますから、それ以上は贅沢ってもんですね。


4.富野由悠季・原作小説なのに、富野由悠季が製作に参加しないガンダム映画

富野由悠季氏の小説作品がアニメ化した際、その製作に富野由悠季氏が参加しなかった作品は、本作が初めてじゃないでしょうか?
そもそも氏の小説は、先にアニメありきのものが多く、氏の性格から小説先行アニメも「自分がやる!」と言いそうです。
今回は氏の手がける「Gのレコンギスタの映画化」を条件に、本作が成立した背景があり、
『富野由悠季・原作小説なのに、富野由悠季が製作に参加しないガンダム映画』
という珍しい作品が生まれました。
これは成功したのか?
興行成績では、先述とおり現時点で10億超え。
これは「劇場版・逆襲のシャア」に匹敵する数字。
しかも本作は公開3週間目の数字。これは大成功といえます。
この結果は、「コロナ禍という特殊環境」「入場料の設定」「ガンダムのブランド力」「原作小説の人気」「先行15分配信の期待感」等、色々と要因あるでしょうが、これら要因は基本的に公開当初のスタートダッシュに影響するもの。
公開3週目のこの時点での興行成績をみれば、
「初動の期待感の要因に負けない内容が、映画にあったから」
と言えます。
では何故、氏が製作に参加しないのに「作品の内容」として成功したのか。
最後にそこにスポットを当て、本記事を締めたいと思います。

まず富野由悠季というと、作品の「世界観」が素晴らしい。
以前、テレビ(NHKだったか)で氏の特集番組があり「世界観」制作現場が取材されてましたが、
「そこまで世界観を作り込んでるのか」
と驚かれていました。
「世界観」なら「ハリウッドの超大作」にも引けをとらないんじゃないでしょうか。

しかし、氏は「新しい世界」を詳細まで作りこんでしまう弊害からか、設定先行の専門ワード多めで物語が難解になる傾向が強いんですよね。
台詞回しも独特で、取っつきにくさに拍車がかかる印象。
(昔は「そこが良い」と思ってました。)

ところが本作、台詞回しは富野御大まんまなのに、物語も「わかりやすい」!

これはもしかしたら、今までのガンダムを知らない人でも楽しめるんじゃないでしょうか。

本作を富野氏が制作していたら、「生みの親」だけに「拘りの大事な部分」をカットできず、短い時間に膨大な情報を詰め込み過ぎて、難解な作品になっていたかもしれません。
それでなくとも「天才・富野」の「わかりやすさ」と、一般視聴者の「わかりやすさ」にはズレがあり、難解な作品になりがちに感じます。

今回、別スタッフが制作したことでピックアップする視点が変わり「わかりやすく」、才能あるスタッフによって素晴らしい演出・映像美の作品が誕生しました。

「原作・富野ガンダムの素晴らしい世界観・アウトライン」を「才能ある別スタッフが昇華」した作品、それが「劇場版・閃光のハサウェイ」。

『「ガンダム」を見に行って、「別次元のハイセンスな映画」に出会えた。』
そんな喜びを感じに、劇場に足を運んではいかがでしょうか?