ガンプラHGで、ついに発売!
【HG 1/144 ジム (ショルダー・キャノン装備/ミサイルポッド装備)】
このジムは「劇場版 機動戦士ガンダム ククルスドアンの島」に登場したモビルスーツ。
本商品は同作に登場しプレバンで発売済みの「ジム(モロッコ戦線仕様)」のカラバリとなりますが、ミサイルポッドが新規パーツとなり、専用デカールが付属します。
劇中では序盤、ドアンザクに無双されるヤラレ役として、また中盤にジム(モロッコ戦線仕様)との混成機としてサザンクロス隊のヤラレ役として大活躍。
序盤の当ジムは正にショルダーキャノンやミサイルポッドを装備していたので、そのシーンのジムを作りたい方にはもってこいなキットです。
ところで、ガンプラHGといえば「ガンダム(ククルスドアンの島)」や「ドアン専用ザク」は当初「HGUC」ブランドでリリース予定と告知されてました。
この事実は当時、私としては衝撃的で、「『劇場版 機動戦士ガンダム ククルスドアンの島』はHGUC=宇宙世紀のガンプラとして、バンナムはファーストガンダム正史に認定した。」と歓喜したものでした。
しかし、現時点でHPを見ると「ガンダム(ククルスドアンの島)」や「ドアン専用ザク」、その後に発売された「高機動型ザク地上用」各種、「ジム(モロッコ戦線仕様)」等すべて「HG ククルスドアンの島」ブランドとなっております。
つまり、分類上「劇場版 機動戦士ガンダム ククルスドアンの島」のガンプラは、当初の告知が修正され「HGUC=宇宙世紀(のハイグレード)」ではなく「HG ククルスドアンの島」と、独自の分類ということになっているということです。
うーん、ショック。
それを踏まえて本品を見てみます。
本品は「劇場版 機動戦士ガンダム ククルスドアンの島(以下、「ドアン島」とする。)」のガンプラ「HG ククルスドアンの島」ではなく、なんと「THE ORIGIN」のガンプラである「HG THE ORIGIN」となってました。
さらに「THE ORIGIN」劇中MSではなく、そのバリエーション機として展開する「MSD」ブランド表記。
これは何故なのか。以下の理由が考えられます。
①「ドアン島」登場のジムだけでなく、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」のジムとしての商品化も含まれるため、「HG ククルスドアンの島」ではなく「HG THE ORIGIN」ブランドとした。
②劇場版やTV版、OVA版のいわゆる「アニメ版・機動戦士ガンダム THE ORIGIN」には登場しないジムであるため「MSD」表記とした。
さて、ここまで読まれた方は、
「じゃあ、なんで『アニメ版・機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に登場しないジムを、劇場版に登場した『HG ククルスドアンの島』ではなく『HG THE ORIGIN』ブランドにしたの?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
それは本品が
③『ドアン島』だけではなく、『コミック版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN(以下、「コミック版ORIGIN」とする。)』のジムを多数再現するため、『HG THE ORIGIN』ブランドとした。
からといえます。
そもそも商品パッケージが「ドアン島」の主要戦場である地上ではなく、宇宙空間としているところが、「HG THE ORIGIN」として明確に主張してますよね。
では、どのあたりが「コミック版ORIGIN」を再現しているのか。
同じカラバリのベースとなった「ジム(モロッコ戦線仕様)」が「HG ククルスドアンの島」ブランドなのに、どこが違うのか。
それはズバリ「新規付属のデカール」です。
それでは、本品デカールが再現している主な内容を以下に説明します。
「101」・・・「ドアン島」冒頭、アレクランサ島でドアンザクに撃破される「ミサイルポッド装備のジム機体番号」
「102」・・・「ドアン島」冒頭、アレクランサ島でドアンザクに撃破される「ショルダーキャノン装備のジム機体番号」
「301」・・・「ドアン島」中盤、モロッコで「ジム(モロッコ戦線仕様)」部隊に混成され、サザンクロス隊に撃破されたノーマルカラーのジム機体番号。
同機体番号で、「コミック版ORIGIN」16巻の冒頭、ジブラルタルでシャア専用ザクに撃破された第3小隊・隊長機の機体番号。
「☆(塗りつぶしなし)」・・・上記、第3小隊・隊長機301番機のパーソナルマーク。
「307」・・・「コミック版ORIGIN」16巻の冒頭、ジブラルタルでシャア専用ザクに撃破された第3小隊の機体番号。
「23」・・・「コミック版ORIGIN」8巻、ジャブロー基地内部でシャア専用ズゴックに腹部を貫かれるジムの機体番号。
「47」・・・「コミック版ORIGIN」8巻、ジャブロー基地内部でアムロが搭乗しシャア専用ズゴックと対決したジムの機体番号。
「1048」・・・「コミック版ORIGIN」16巻の後半、オデッサでスレッガーに補充されたジムの機体番号(推定)。
「1049」・・・「コミック版ORIGIN」16巻の後半、オデッサでスレッガー小隊の生き残りエトゥルに補充されたジムの機体番号。
「S」・・・上記、スレッガー小隊の生き残りに補充されたジムに手書きされた部隊マーク。
「⭐(白で塗りつぶし)」・・・「コミック版ORIGIN」16巻の後半、オデッサでホワイトベース隊に話しかけるジムのマーク。
こうしてみると、本品はデカール貼付によって、「コミック版ORIGIN」「ドアン島」の両方のジムを再現できる幅広いファンに向けた商品ということがわかります。
デカールにある機体番号のジムは全て地上で活躍したMSですが、商品パッケージは宇宙空間であり、エンドユーザーに「宇宙空間のジムとしても作って下さい」と、更に再現の幅を広げる提案をメーカー側でしてくれています。
「ガンプラは自由」ですが、「憧れの作中MSをミニチュア再現する」ユーザーにも様々な可能性を提示してくれていると言えますね。
ところで、本品が「HG THE ORIGIN」であった上記の説明からも判るように、「ジム・ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備」「ジム(モロッコ戦線仕様)」「ジム(スレッガー搭乗機)」はそもそも「コミック版ORIGIN」に端を発しております。
これら所謂「ORIGIN系ジム」は、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック (3)」で以下のようにに分類されております。
【機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック (3)】
①「最初期型」
②「第一次正式生産型」
③「第二次以降正式生産型」
上記の他、「コミック版ORIGIN」後半には「中距離支援タイプ」「遠距離支援タイプ」「近距離戦闘タイプ」等のバリエーションも展開された・・・となっております。
それでは、「コミック版ORIGIN」設定とガンプラを比較説明していきます。
①最初期型
「最初期型」ジムはガルマ戦死後の「コミック版ORIGIN」5巻に突如登場します。
ジオン側も登場には驚いており、劇中でも「正体不明のMS」とした演出で戦果を挙げます。
「コミック版ORIGIN」初登場のジムであり、名前のとおり「ORIGIN系ジム」として最初期に開発された量産されたMSとういことになります。
デザインは大河原先生。
「コミック版ORIGIN」の「ORIGIN系ジム」は全て大河原先生のこのジムベースですが、安彦先生が時期によりアレンジされています。
その中でも「最初期型」は、大河原先生がデザインしたジムのデザインを安彦先生があまりアレンジせず描いたジムで、胸のフィンに特徴があります。コクピット装甲はファーストガンダムのジムに近く、胸フィン以外は本品ガンプラに最も近い形状をしています。
コクピット外装はファーストガンダムのジムに近い形状をしています。
②「第一次正式生産型」
「第一次正式生産型」は「最初期型」以降に生産・配備されたジムで「コミック版ORIGIN」8巻「ジャブロー編」から登場します。
量産型として大量生産された印象で「ジャブロー」内に潜入したジオンMSを次々と撃破していきます。
初登場した「ジム(スレッガー搭乗機)」もこの時期に登場しており、「第一次正式生産型」となります。
「最初期型」とは肩・コクピットの形状が相違していて、肩にはフック、コクピットには陸戦型ジムのような追加装甲が施されたデザイン。
フィンの形状も独特な斜めの形状からORIGIN版ガンダムっぽい長方形的な形状に安彦氏がアレンジしました。
全般的に「最初期型」から比べ強化された印象です。
ガンプラ本品・説明書で「スレッガー機」は「初期生産型の1機」としていて、「第一次正式生産型」=「初期生産型」と定義していることが判ります。
③第二次以降正式生産型
「第二次以降正式生産型」は「第一次正式生産型」以降に生産・配備されたジムで、主にオデッサ編「コミック版ORIGIN」16巻から登場します。((注)ORIGIN世界の時系列では「ジャブロー編」→「オデッサ編」)
見た目は「第一次正式生産型」の肩フックを外しただけで、外見上の差異はないです。
ガンプラでは本品「ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)」や「モロッコ戦線仕様」を「一般的なジム(以後、「一般型」という。)」として、「ジム(スレッガー搭乗機)」と区別しており、「コミック版ORIGIN」の「第二次以降正式生産型」に当たることが判ります。
ガンプラ版「一般型(本品やモロッコ戦線仕様)」は造形上、「初期生産型=ジム(スレッガー搭乗機)」とは頭部・肩・コクピットが異なります。
特に肩はフックが無くなり、コクピットは「初期生産型」の陸戦型ジムのようなデザインではなく「最初期型」ひいては「大河原先生が当初デザインしたORIGIN系ジム」のようなファーストガンダムよりのデザインとなっています。
「最初期型」の胸フィンの形状を「初期生産型」にしたようなハイブリット形状。
ご存知のように、本品他ORIGIN系ジムのガンプラは、「ドアン島」制作時にカトキハジメ氏がリデザインしたものです。
本機『ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)』や『ジム(モロッコ戦線仕様)』を含めた『一般型』のジムは『ジム(スレッガー搭乗機)』と比べて、「大河原先生のデザインしたORIGIN系ジム」に寄せるような意匠が、カトキハジメ氏のアレンジ方針にあるように感じます。
おそらくカトキハジメ氏は、
①「ジム(スレッガー搭乗機)」は安彦先生オリジナルMSであり、大河原先生デザインのORIGIN版ジムを安彦氏がアレンジした「コミック版ORIGINジム」を採用。それをKATOKI風にリデザイン。
②それ以外のORIGIN版の一般的なジムは全て、大河原先生が「コミック版ORIGIN」のためにデザインした「ORIGIN版用ジム」の原点を採用。それをKATOKI風にリデザイン。
としたのだと思います。
ガンプラ本品「ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)」や「ジム(モロッコ戦線仕様)」を「ORIGIN版の一般的なジム」としたのも、カトキ氏が元デザインであり同氏の考えが反映していることは想像に難くありません。
ひいては、本品「HG ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)」に「301」「307」「23」「47」「1047」「1048」機体番号のデカールが付属するということは、ガンプラ製品化時点で、「コミック版ORIGIN」のこれら機体は全て「一般型」と解釈したといえます。
ただし、「コミック版ORIGIN」は安彦氏が描いているため、ジャブロー攻略戦のジムは全て「初期生産型(=ガンプラのスレッガージムと同形状)」として描かれており、その後の(コミック版ORIGINの時系列ではジャブローの後となる)オデッサ作戦のジムもコクピット装甲の形状は「初期生産型」と同一となっています。
そのため、ガンプラ製品化時点で、「301」「307」「23」「47」「1047」「1048」機体番号のジムを全て「一般型」と定義すると、「コミック版ORIGIN」劇中のジム形状と矛盾が出てしまいます。
まあ、ガンプラ製品化時点でジム設定を上書きしたと考えれば良いのですが、「コミック版ORIGIN」16巻の後半オデッサでスレッガー小隊の生き残りに補充されたジムに書かれた「S」マークの位置が再現出来なくなるジレンマも感じます。
以上の矛盾・ジレンマを解消すべく、以下のように解釈すると考えてみました。
①ガルマ戦死前後にORIGIN系ジム「最初期型」を生産・配備
②その後、本格量産機として「初期生産型(第一次正式生産型)」を生産・配備。
「初期生産型」は初期の量産機としてガンダムの量産とした目的を目指していたため、量産機にしては高性能な仕上がりになったが、コストパフォーマンスの点で量産機として問題があった。
③「初期生産型」の問題解消する機体として「一般型(第二次以降正式生産型)」を生産・配備。
「初期生産型」のコストパフォーマンス問題を解消した「一般型」は「ジオンによるジャブロー攻略戦(コミック版ORIGINのジャブロー編)」以前より広く生産・配備された。
しかし、スレッガー小隊のような期待される優秀なパイロット達には、比較的高性能な「初期生産型」が配備された。
また、彼らのような優秀な小隊には全壊・補充時も「一般型」に「初期生産型」のコクピット増加装甲を追加する等の対応が成された。
余談だが、「初期生産型」と「一般型」は、ジオンのブグとザクⅠのような関係にあったといえる。
・・・これならスレッガー小隊が「初期生産型」や全壊・補充後も「コクピット形状が初期生産型のパーツ」である矛盾も解消し、手書き「S」マークの表示箇所も再現できます。
ただ、一部の優秀なパイロットや初期生産型から搭乗し続ける古参パイロット以外の「全ORIGIN系ジムが『一般型』」となるため、「『コミック版ORIGIN』と形状違いで嫌だ」と考える方もいるかもしれません。
その場合、ガンプラ本品「ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)」に封入されたデカールの意図とは相違しますが、以下で線引きする方法もあります。
④「コミック版ORIGIN」設定として推測される「(ORIGIN時系列上の)ジオンによるジャブロー攻略戦『(コミック版ORIGIN)ジャブロー編』」時までは「初期生産型」が配備されていたとし、「(シャア専用ズゴックに腹部を貫かれた)23番機」「(アムロが搭乗した)47番機」は「初期生産型」=「『ジム(スレッガー搭乗機)』の一般機カラー」とする。(「一般型」はジャブロー編では未開発とする解釈)
⑤上記④に加え、「(ORIGIN時系列上の)オデッサ作戦『(コミック版ORIGIN)オデッサ編』」時までは「初期生産型の胸パーツを装備した一般型」=「『ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)』に『ジム(スレッガー搭乗機)』の胸パーツをミキシングし一般機にカラー塗装したジム」とする。
まあ、④や⑤にするに従ってガンプラで再現する場合、入手しずらいガンプラの必要数が飛躍的に増えちゃって、実現性が低くなってきますから、再現思考もほどほどで線引きした方が良さそうですね。
それに⑤に関しては、ORIGIN時系列としても「オデッサ作戦(コミック版ORIGIN『オデッサ編』)」以前のタイミングである「ドアン島」劇中で「一般型』ジムが多数登場してるので、その後の「オデッサ編」で「初期生産型の胸パーツを装備した一般型が標準仕様だった」とするのは、無理があるように感じます。
自然な解釈で、かつ「コミック版ORIGIN」との整合性をとるなら①~④の解釈ですかね。
一番わかりやすいのは、「一般型のデカール付属」から「301」「307」「23」「47」「1047」「1048」機体番号のジムは全て「一般型ジム」と、ガンプラ付属品に素直に解釈しちゃうとわかりやすいです。
「初期生産型」はジャブロー攻略戦以前に配備された機体とし、「コミック版ORIGIN」のジム形状との矛盾は気にしないとする①~③とする解釈です。
解釈を検討したり妥協したり整合性を調整したり・・・、こうやって色々考えていくのも楽しいですよね。
本品「HG ジム(ショルダーキャノン装備/ミサイルポッド装備)」は再現好きの私でも、色々な可能性を考えさせられる良キット。
皆さんも自分なりのジムを考えてみて下さいね。
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