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【映評】ジャージー・ボーイズ [イーストウッド映画はいつも面白くていつも新しい]

2014-12-06 07:27:00 | 映評 2013~
89点(100点満点)
2014年10月11日、渋谷ヒューマントラストシネマにて鑑賞

83歳の健さんが亡くなり、81歳の文太が亡くなった2014年に、84歳のクリントはまだまだ元気に監督していて、しかも面白くてしかも新しいことに挑んだ作品で、しかもさらにまだ一作公開待機中だという。どういう80代なんだろう。永遠に生き続けるんじゃなかろうか?と思ってしまう。

本作は、若い頃チームを組んでいた4人がバラバラになって、そして老年になって再開しまたチームを組む物語…とすると『スペース・カウボーイ』のようだ。
いつものイーストウッド節も随所に見られる一方、そこかしこに加えられた新しいスパイスが、イーストウッド慣れした僕らをまた楽しませてくれる。クリント・イーストウッド映画はいつも面白くていつも新しい。クリントはガキどもを見てはイラッとした顔でペッとツバをはくくせに、彼自身がいつまでも若い。

ポップグループのザ・フォーシーズンズの名曲誕生秘話を追いながら、その裏の仲間たちの反目、崩壊を描く。しかし切ない物語でも痛い物語でもなく、バカな若者をやれやれと見つめる老人の目線のおかげで物語は全体にユーモアがまぶされている。がっつり笑えるからこそラストが泣ける。脚本が見事だ。脚本のマーシャル・ブリックマンは、ウディ・アレンの『アニー・ホール』なんかを手がけた人じゃないか。どうりで
そしてカメラ目線でスクリーンから観客に問いかけるようなナレーションなど、映画の文法にとらわれない自由な作風が楽しい。

イーストウッド映画はいつもキャスティングがいい。この人でなくっちゃって思うような、その人のハマり役を、しかも絶妙なタイミングで持ってくる。
今回で言えばクリストファー・ウォーケンがまさにそうだろう。ガキどもを諭す老人というイーストウッド映画必須のキャラを今回はウォーケンが引き受けている。
80年代、ハリウッド映画の悪いやつといえばこいつ的な存在だったウォーケン。90年代にゲイリー・オールドマンにナンバー1の座を奪われた感はあるものの、オールドマンがイカれた悪や激情的な悪だったのに対して、ウォーケンはインテリでクールで上品な悪で存在感を出し続けた。
そういえば最近あまり見なかったのだけど、久々登場したウォーケンがマフィアのボスでお金持ちな役というだけで、ウォーケン映画の色々な場面を想像して感慨深いのだ。このあたり、過去のアクションスターとしての観客の記憶に訴えかけて存在感を出すイーストウッドが自分自身を演出する方法と似ているかもしれない。
ウォーケンが昔の凄みをかもしながらも、人情家の優しいおじいちゃんとなって、バカな若造たちを見る表情が素晴らしい。
善人にも悪人にも平等に愛を注ぐイーストウッド節だ。
そんなやさしいウォーケンだが、チンピラを脅すシーンはやはり怖い。20年前ならガキどもみんな殺されてるぞ、と思う。
そしてこの映画でウォーケンの最大の見せ場はエンドクレジットにあった。
ウォーケンが若い奴らと一緒にダンスするミュージカルシーン!
かつてハリウッドで善人を殺しまくってきたウォーケンがあんなにノリノリで踊る姿を見ることができて、ウォーケン大好きだった俺は生きててよかったと思ったよ。


『ジャージー・ボーイズ』
監督:クリント・イーストウッド
脚本:マーシャル・ブリックマン、リック・エリス
撮影:トム・スターン
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、クリストファー・ウォーケン

---以下、鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評---

@shinpen: 「ジャージーボーイズ」ド感動。ラストの四人…やばい。クリントさん、いつまですごい映画人なんですか!?まだ84ですか。それでもほぼ毎年最高の映画を作ってくれるあなたと同時代を生きれる幸運

@shinpen: 「ジャージーボーイズ」クリストファー・ウォーケンのマフィアボス、かっこよすぎる。ネタバレですがエンディングではウォーケンも踊ります。必見

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