自主映画制作工房Stud!o Yunfat 改め ALIQOUI film 映評のページ

映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

映像作品とクラシック音楽 第75回 エンニオ・モリコーネ オフィシャル・コンサート・セレブレーション

2022-11-06 23:51:00 | 映像作品とクラシック音楽
11/5東京国際フォーラムにて行われた「エンニオ・モリコーネ オフィシャル・コンサート・セレブレーション」に行って参りました。
その圧巻・感動のコンサートの鑑賞記録であります。

エンニオ・モリコーネは言わずと知れたイタリアの作曲家で、主に映画音楽で活躍した方です。2020年に亡くなりました。このコンサートはエンニオの息子のアンドレア・モリコーネが指揮し、モリコーネ音楽を支えたミュージシャンやスタッフと、東京フィルハーモニー交響楽団が、エンニオ・モリコーネの代表曲の数々を演奏します。
アンドレア・モリコーネですが、単にエンニオの息子だからというだけでの登場ではなく、長年父を支えてきた方でもあります。
エンニオ・モリコーネの代表作のひとつ映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のサントラの、その中でも特に人気の高い曲に「愛のテーマ」があります。こちら、エンニオ・モリコーネが亡くなった際にヨーヨーマがTwitterに愛のテーマを弾く動画を投稿したり、ジョン・ウィリアムズか歴代映画音楽メドレーを演奏する際にモリコーネの曲で唯一取り上げていたりと、エンニオの代表曲扱いですが、実を言えば愛のテーマに関しては作曲は息子のアンドレアなのです。
エンニオが今我々が知るあの形に編曲したと思われ、父子の共作というのが正しいのかもしれませんが、ともかくアンドレアも80年代から父とともに作曲家として活躍してきたというわけです。

エンニオが亡くなり早2年。しかしエンニオの人気は衰えることなく、巨大な東京国際フォーラムAホールは満席でした。
コンサートは、曲の合間合間にスクリーンに映像が映され、エンニオ自身の生前のインタビュー映像や、エンニオに関わった映画人(ジュセッペ・トルナトーレ、クエンティン・タランティーノ、ローランド・ジョフィ、ジッロ・ポンテコルヴォ、ジェレミー・アイアンズなど)たちのインタビュー映像が流れます(もちろん日本語字幕付き)
また、いくつかの作品の演奏時には、スクリーンにその映画のダイジェストが流されたり、ダイジェストがない場合はステージ上のカメラの映像に切り替わり、演者たちの姿がアップで写されたりします。

マカロニウェスタンからタランティーノ作品まで、エンニオが駆け抜けた映画音楽人生が凝縮されたようなコンサートでした。

-------
プログラム
『アンタッチャブル』より「正義の力」
『アンタッチャブル』より「勝利の誇り」

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』より「デボラのテーマ」
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』より「ポバティ」
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』より「メインタイトル」

『海の上のピアニスト』より「ザ・レジェンド・オブ・1900」

『シシリアン』より「メインタイトル」
『ある夕食のテーブル』より「メインタイトル」

セルジオ・レオーネ作品メドレー
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』より「ハーモニカの男」
『続・夕陽のガンマン』より「メインタイトル」
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』より「ジルのテーマ」
『夕陽のギャングたち』より「Titoli」
『続・夕陽のガンマン』より「エクスタシー・オブ・ゴールド」

エンニオのテーマ(作曲:アンドレア・モリコーネ、演奏:HAUSER from 2CELLOS)

『ヘイトフルエイト』より「レッドロックへの最後の駅馬車」

『プロフェッショナル』より「私だけを」

『ニュー・シネマ・パラダイス』より「メインテーマ」
『ニュー・シネマ・パラダイス』より「愛のテーマ」

『アルジェの戦い』より「アルジェの戦い」
『殺人操作』より「殺人操作」
『供述によるとペレイラは…』より「供述によるとペレイラは…」
『労働者階級は天国に入る』より「労働者階級は天国に入る」
『ケマダの戦い』より「ケマダのテーマ」

『ミッション』より「ガブリエルのオーボエ」
『ミッション』より「フォールズ」
『ミッション』より「オン・アース・アズ・イット・イズ・イン・ヘブン」

あとアンコール三曲ありましたが、うち1曲は「エクスタシー・オブ・ゴールド」ですがあとの2曲は曲名分かりません





--------
いくつか、解説やら私の雑感やら…

『アンタッチャブル』
演奏中、アンタッチャブルの名シーンの数々がスクリーンに映されます。デ・ニーロのアル・カポネが部下をバットで殴り殺すところとか、ショーン・コネリーがマシンガン浴びるところとか、ケビン・コスナーが殺し屋を屋根から放り投げるところとかなかなかバイオレントな映像の数々で、1曲目からこんなんで、クラシックコンサート感覚で来られた上品なおじさまおばさま達がドン引きしないかと勝手に心配になりますが、演奏は素晴らしいものでした。
「勝利の誇り」は中盤のカナダ国境での銃撃戦のシーンにかかる、アンタッチャブルズのテーマともいえる爽快なファンファーレでして、映像とともに見ていると心が沸き立ってきました。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の3曲
レオーネの本格的アメリカ映画ですか。デ・ニーロ主演ですがそういえばデ・ニーロ映画ってモリコーネ音楽が多いですね。こちらも映画のダイジェスト映像付きで、まだ少女だったころのジェニファー・コネリーちゃんに胸キュンキュンですよ。
デボラのテーマですが、演奏前のモリコーネのインタビュー映像によると、もともとはフランコ・ゼッフィレリ監督の映画のために作った曲でしたがゼッフィレリにボツにされ、そのことをレオーネに話すと、いたずら好きなレオーネはだったらこの映画に使ってやれ、と言って採用されたとか

『海の上のピアニスト』
オープニングシーンの、アメリカへの移民を乗せた船がニューヨークに到着する場面、霧の中から自由の女神が姿を現し客の一人が「アメリカ!」と叫ぶシーンの曲ですね。サントラ中もっとも壮大で美しい曲でしたが、アンドレアによる演奏も父に負けず迫力あります。

『続・夕陽のガンマン』
レオーネメドレーも映像付きで楽しめます。クリント・イーストウッド若いなあ
さて、アンドレアによる名曲の演奏ですが父と比べるとテンポが速い速い。『続・夕陽のガンマン』の有名なメインテーマの疾走感たるや、これまでのイメージを一新するような名演だったと思います。
そしてモリコーネのベストオブザベストな名曲「エクスタシー・オブ・ゴールド」はゲストミュージシャンのソプラノ担当ヴィットリアーナ・デ・アミーチスさんのスキャットが美しく、また演奏も緩急のメリハリのついたこれまた父の演奏とはだいぶ印象の違う、しかし素晴らしいものでした。待ってましたな曲で会場のテンション上がったのを感じました。アンコールでももう一度演奏されましたが、何度聞いてもテンション上がります。

「エンニオのテーマ」
こちらはこのコンサートのためにアンドレアが書き下ろした新曲です。
チェロの演奏は、イケメンチェロコンビの2チェロズの一人ハウザーさんが担当。ただし東京に来たわけではなく、ビデオ撮りしていたハウザーさんの映像に、現地でビアノを合わせるという特殊なスタイルでした。なんだよ、ジャパンに来いよ。
曲はエンニオの作品といわれても信じてしまうくらい、エンニオっぽい曲ですが、そこは偉大な父を偲んだアンドレアの想いがそうさせたのでしょう。

『ヘイトフル・エイト』
演奏前にタランティーノの映像が映り、モリコーネの音楽を例のテンション高めの喋り方で語っておりました。そこでの証言によると基本的にモリコーネに自由に作曲させて、あまり意見は出さなかったそうです。
2015年のこの作品で、エンニオ・モリコーネは念願のアカデミー賞作曲賞を受賞しました。それより前に長年の功績をたたえてアカデミー名誉賞を受賞していますが、作曲賞はこの最晩年と言えるこの作品が最初のことでした。
個人的にはタランティーノ映画ってどうにも好きになれなくて、とくにこの『ヘイトフル・エイト』は彼の作品の中でも一番つまらないくらいの作品ではないかと思っています。ただし音楽は素晴らしかったですし、証言にあるようにモリコーネに自由に作らせており、オープニングシーンなどかなり長く、モリコーネの音楽を聴かせるためにあえて長めにしているのではないかと思います。クレジットもわざわざ「オリジナルスコア作曲:エンニオ・モリコーネ」などと、オリジナルであることを強調し(またキルビルみたいに昔の曲持ってきたんだろと思われないようにか?)、しかも文字がでかい!
なんなら彼にアカデミー賞をとらせることがこの映画の目的だったのでは?と思います。であろうとなかろうと、タランティーノは、モリコーネにアカデミー賞をとらせたその一点において評価に値する映画人だと思います。
さてアンドレアの演奏ですが、これもまた素晴らしく、不穏なメロディと、畳みかけるパーカッション、時にマカロニウェスタン風のコーラスも入って、壮絶・圧巻・怒涛の演奏でありました。

『ニュー・シネマ・パラダイス』
あのテーマを聴きながら、映画のダイジェストを見ていると、なんだか勝手に目頭が熱くなってきます
父の作ったメインテーマと、そして息子の作った愛のテーマのメドレー、タクトを振るのがその息子…って状況もまたなんだか涙を誘うのです。愛のテーマは、さすがに自分の代表曲らしく、情感たっぷりの演奏でした。

『アルジェの戦い』
ジッロ・ポンテコルヴォ監督による1966年のアルジェリア独立戦争を描いた作品で、ヴェネチア映画祭金獅子賞に輝く名作なのですが、実はわたくしは未見です。しかしスクリーンに映されるダイジェスト映像を見ると、めちゃくちゃ面白そうでした。エンニオの音楽も激しく打ち鳴らされる軍隊風のスネアドラムが印象深く、映画も観たいなと思いました。

『ケマダの戦い』
これもまたジッロ・ポンテコルヴォ監督の作品で、モリコーネのコンサートだと定番曲で、私も大好きな曲ですが、実を言えばこれも映画は未見です。
演奏前のポンテコルヴォ監督の証言が面白く、この曲を使うシーンではもうモリコーネの曲ではなく既成曲を使うことを決めていて、でもモリコーネはここに自分の曲をつけたいと言ったが、いや要らんと監督は断ったそうです。そしたらモリコーネは私費で演奏と録音を行い聴いてくれと言ったそうですが、そこまで言うならと思って監督は聴いたのですが、やっぱりこの曲は要らないよと、ちょっとイメージ違うよと突っぱねたそうなのです。するとモリコーネは、映像と一緒に聴いてくれ、そうしたら僕の言ってることが分かるはずだ、なんて言うから試写室で映像付きで聴いてみたら…すばらしいこの曲でいこう!となったそうです。
モリコーネが映画音楽の巨匠であることをうかがい知れる素晴らしいエピソードじゃないですか。って言っても自分はその映画を観てないのですが(笑
ポンテコルヴォ監督と違って、映像なしでもこの曲の素晴らしさがわかる私です。男性女性のコーラス、ドンドコドンドコなるパーカッション、負けじと吹き鳴らされるトランペットと、会場全体がクライマックスになるような曲でした。

『ミッション』
ケマダのテーマで熱く盛り上がった会場を優しくクールダウンするように、『ミッション』の癒しの曲がプログラムの最後に用意されています。有名な「ガブリエルのオーボエ」ですが、当初モリコーネは映画を観た時には、あまりに素晴らしいシーンですでにイメージとしてつけられた既成曲も素晴らしく、ここには私の曲なんか要らないと言ったそうですが、それから一晩経ってやっぱりこんなのはどうだろう・・・とローランド・ジョフィ監督に電話してきたそうです。

要らないと言った監督に食い下がったり、自分から要らないと言っておきながらやっぱりと言ってきたり、いずれにせよエンニオ・モリコーネという人が常に音楽のことを考え続け、真剣に映画に取り組んできたことを示していると言えます。

#映像作品とクラシック音楽
#モリコーネ #エンニオモリコーネ

----------
ネットで呼んだアンドレアの発言によると、このコンサートは単なるエンニオ・モリコーネ名曲コンサートではなく、父モリコーネの生きた軌跡を追うことがテーマだったそうです。
アンコールの3曲目ではスクリーンにエンニオの子供時代から晩年までの写真のスライドショーが流され、アンドレアにとってかなり私的な、それゆえに愛の伝わる感動的なイベントになっていたと思います。

改めてエンニオ・モリコーネの楽曲の素晴らしさを知ることができましたし、とても充実した内容のコンサートでした。

それでは今回はこんなところで
また素晴らしい音楽と映画でお会いしましょう

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映像作品とクラシック音楽 ... | トップ | 映像作品とクラシック音楽 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映像作品とクラシック音楽」カテゴリの最新記事