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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

ショスタコーヴィチ 交響曲第10番

2017-11-22 21:01:43 | クラシック音楽
かなりしびれるのである。

4章構成で
第1楽章20分
第2楽章 4分
第3楽章13分
第4楽章12分
...第2楽章なんでそんなに短くしたんだろう?いるんだろうか?と思いつつ、その短い第2楽章があんまりにもかっこよくてつい何度も聞いてしまう

しかしこの殺伐感
ショスタコ節全開ではないか
この前の第9番は、ソビエトの戦勝を記念する記念碑的大作に違いないと、ソ連のお偉方の期待パンパンにさせておきながら、ピッポコピッポコならす「おもちやのへいたいしゅつどうだ〜」感満載のズッコケ脱力曲で、聞くところによるとスターリンは激怒したとかしないとか
それから10年間交響曲を書かなかったショスタコーヴィッチが、スターリンの死後に発表したのがこの10番。
なんてことない、8番までのころのショスタコーヴィッチな音楽だ。なぜこれを9番でやらなかった、、、(あ、個人的には9番も大好き)

ショスタコーヴィッチによるとこの曲はスターリンの肖像なのだという。
意味がわからん。
でも、ショスタコーヴィッチの音楽やその生き様を考えたら彼が、単純な共産主義万歳、ソ連万歳、スターリン万歳な奴ではなかったことは間違いない。
色々めんどくせえこと言ってくるソ連政府などむしろ嫌いだったはずだが、一方で祖国愛(もちろん彼にとっての祖国とはロシアでなく、ソ連であろう)も強く感じるのだ。
この10番もべつに偉大な指導者への尊敬や、偉大な指導者を失った悲しみのようなものは微塵も感じず、ひたすら戦争や破壊や混乱や歴史の動乱を感じさせる荒々しく恐ろしい曲が続く

ウィキペディア情報だが、このショスタコーヴィッチ第10番通称タコ10は、彼の全楽曲中ソ連国内で最も論争を呼んだものなのだという。そこにはもちろんスターリンの肖像発言が大きく絡んでいるのだろう。
でも俺はそんな論争に興味はない。この第10番が、5番7番8番と並ぶかっこよくも美しくそして激しい楽曲であることだけが重要だ

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タコ10といえば外せないトピックが、ヘルベルト・フォン・カラヤンが演奏した唯一のショスタコーヴィッチであるということだ。
ショスタコーヴィッチの何がそんなに気に入らなかったのか?同時代のソビエトの作曲家のプロコフィエフはよく演奏してるからソ連嫌いってんでもなかろうし。
ショスタコーヴィッチの音楽についてまわる政治性がいやなのか?戦争や革命をテーマにしていることが嫌なのか?
それでいて、5番7番8番がダメで、10番はいいというカラヤンのツボもよくわからない

それでもカラヤンはタコ10は別格で愛した。
何度か録音している。
カラヤンにとってのタコ10初演はベルリンフィルのソビエトツアーだった。ショスタコーヴィッチ本人も招き、ショスタコーヴィッチからはべた褒めされたらしい。
ベルリンフィルの元団員のインタビューを収めた「証言・フルトヴェングラーかカラヤンか」(川口マーン惠美著)でも、団員たちがカラヤンとの印象深い演奏の一つとして、このタコ10を上げている。
というわけで俺もタコ10に関してはムラビンスキーやバーンスタインでなく迷わずカラヤン版を購入。
やっぱりベルリンフィルの演奏はズシリと心にくるぜ

そしてまた、どんな曲でもカラヤン風にするカラヤンの圧倒的なオーラと、誰がタクト振ってもショスタコーヴィッチの音楽であり続けるショスタコーヴィッチのクセの強さのぶつかり合いは、それだけでスリリングだ
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