【交響曲第6番】
雰囲気的に1番と3番の中間くらいの印象。
3から始まるドラマチックエリアを一旦5番で大団円的にまとめて、さてこれからどこへ向かおうかと考えて、まずは初心に戻ったような。
だからこの6番も力みのない軽めの曲なのだが、こういう曲こそむしろシベリウスの真骨頂な感じもあって、だからこの人はある意味難しい。
癒しナンバーでありながら3番ほど何も考えてない感はなく、どこかしら切迫感があって、その折衷感が魅力だ。
アルバムはまたもパーボ・ベルグルンド×ヘルシンキフィル。
1番とのカップリング収録だからだけど。
最初に買ったのが、1番と6番のセットだったのは良かった。もっともシベリウスらしい初心者向けナンバーのセットという感じ。
ベルグルンドの心の赴くままな感じの演奏がとても染みる。
【交響曲第7番】
シベリウス最後の交響曲。
これを書いて亡くなったわけではない。発表が1924年で、シベリウスの没年が1957年。
シベリウスは7番発表後急速に作曲家としての意欲を失う。
それくらい7番に自分の全てを注ぎ込んだことがうかがえる。
しかも、彼が作曲をパタッとやめた期間というのは第二次大戦の始まるころからだ。
フィンランドはソ連に侵略され、米英や隣国スウェーデンから知らん顔され、成り行き上仕方なくドイツと同盟して枢軸側国家としてソ連と戦った。
スターリンのソ連はフィンランドごとき瞬殺してくれると思っていたであろうが、フィンランドは大国ソ連を相手に勇猛果敢に戦い本国を守り抜き、ついにソ連を事実上撤退に追い込む。
この国家存亡の事態の最中に、シベリウスはなぜ沈黙していたのだろうか。かつては愛国曲「フィンランディア」で国民を勇気付けたシベリウスが。それを知る術はないがあるいは凄惨な戦争に心を痛めたのかもしれないし、成り行き上仕方なくとはいえナチスと手を組みソ連と戦っていたお国の状況が彼を政治的に微妙な立場に立たせたのかもしれない。
それはさておき、この7番は単一楽章というユニークな構成で、演奏時間は20分前後とクラシック界的には小品といってもいい作品だが、その20分に1番から6番までの全ての要素が詰め込まれているような濃密さがある。
7番をシベリウスのベストに上げるファンも多いし、その気持ちはわかる。
単一楽章とはいえ、その中でスケルツォもアダージョもアレグロもあって、交響曲のエッセンスが何もかも含まれているし、人の様々な感情も、自然描写も感じられる。男性的な面も女性的な面もあるし、たしかに手っ取り早くシベリウス を知るには一番いい曲かもしれない。
マーラーやショスタコーヴィッチの馬鹿みたいに長い曲に慣れた自分的にはさすがにちょっと短めで食い足りない感はあるのだけど、腹八分目な丁度良さともいえる。
アルバムはオスモ・ヴァンスカ×ミネソタ響。3番、6番とのカップリングアルバム。
それとカラヤン×ベルリンフィルの5番とのカップリング。これもフィンランド風とドイツ風の演奏の聴き比べができる。
7番は短いので単体でアルバムになることはなく、必ず何かと一緒に収録されている。
ヴァンスカはベルグルンド以上にせっかちというか、乗った時のテンポが早い。
対して冷静沈着なカラヤンはテンポが一定している。
----
【聴き比べ編】
「交響詩フィンランディア」
カラヤン×ベルリンフィル VS ベルグルンド×ヘルシンキフィル
「フィンランディア」はシベリウスの最も有名な曲である。映画「ダイハード2」のクライマックスで使われている。レニー・ハーリン監督がフィンランド人なので作曲担当のマイケル・ケーメンがヨイショのため使ったのだと思われる。
もともとは同名の愛国劇のための音楽であった。フィンランドがロシア帝国に支配されていたころの劇の曲である。しかしロシア帝国はこの曲がフィンランドの分離独立運動を助長することを恐れ演奏を禁止した。
優しく悲しく儚げなシベリウスの交響曲を聴いていると同じ人によるものかと耳を疑うくらい、ドッカンドッカン盛り上がるアゲアゲな曲である。
冒頭は悪い国ロシアに支配された暗黒の時代を描写する重々しくドス黒い悪の国の軍隊的なテーマで始まる。
やがて戦争の始まりでも注げるようにトランペットが鳴り響くと、曲は転調して勇壮な調べへと変わる。やがて、平和な世界を描写するような穏やかな優しい調べへと移り(この部分はシベリウスらしさがある)、でもすぐにまた景気良く鳴るトランペットを伴った英雄的な戦いの調べに戻って、勝利を想起させる爽快なファンファーレで幕を閉じる。
カラヤンの演奏は9分半くらい
ベルグルンドは7分半くらい
ベルグルンドが「速い」というのはここでもわかる。
ただしベルグルンドは全体的に速くしているというより、気持ちのあがるような部分を猛烈に速くするのだ。気持ちに相当左右された演奏をしている。
対してカラヤンは、感情など持ち合わせていないので、一貫してドッシリとした重厚な演奏を貫く。
冒頭部分はカラヤンの方が良い。あの重々しさはベルリンフィルの面目躍如だ。
ただ英雄的に盛り上がるところは、好みの問題はあるのだけど、私はベルグルンドのノリまくった感のある演奏が好きだ。トランペット以上に自己主張の激しいシンバルの破壊的な響きも良い。
客観的に考えるとカラヤンの演奏の方が「フィンランディア」に関しては良いように思うのだけど、ベルグルンドのジェットコースターのような子供心くすぐる演奏の方が楽しい気分になれる。
「交響曲第6番」
パーボ・ベルグルンド×ヘルシンキフィル VS オスモ・ヴァンスカ×ミネソタ響
フィンランド人同士の聴き比べ
のってくると速くなるのはフィンランド人の特長なのか、演奏スタイルは似ている。
演奏時間比較
ベルグルンド×ヘルシンキフィル
第1楽章 8:13
第2楽章 5:32
第3楽章 3:56
第4楽章 11:12
ヴァンスカ×ミネソタ響
第1楽章 9:12
第2楽章 7:00
第3楽章 3:48
第4楽章 9:17
1楽章、2楽章はヴァンスカの方がズッシリとしているが、4楽章になるとヴァンスカはずっと速い。ティンパニの叩きつけるような感じも印象深い。でもベルグルンドの演奏の方が恋愛ドラマの劇伴のようなうっとり感があって好きだ。
「交響曲第7番」
ヴァンスカ×ミネソタ響 VS カラヤン×ベルリンフィル
ヴァンスカ 22:34
カラヤン 23:32
さすがベルリンフィルという重厚感のあるカラヤン節の演奏をとるか、軽やかながら感情のタメがあるヴァンスカをとるか。
好みは分かれると思いますが、私は7番はヴァンスカの方が好みです
この7番はいろんな人のを聞いてみたいです
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そんなこんなのシベリウス交響曲は、クラシック初心者でも入りやすいあっさり目で聴きやすい曲が多く、是非是非シベリウス にチャレンジしてみてください
おススメは
パーボ・ベルグルンドとヘルシンキフィル
カラヤンも結局いいです
最初に買うなら1番がいいんじゃないかと思います
ではまた、クラシック音楽でお会いしましょう
雰囲気的に1番と3番の中間くらいの印象。
3から始まるドラマチックエリアを一旦5番で大団円的にまとめて、さてこれからどこへ向かおうかと考えて、まずは初心に戻ったような。
だからこの6番も力みのない軽めの曲なのだが、こういう曲こそむしろシベリウスの真骨頂な感じもあって、だからこの人はある意味難しい。
癒しナンバーでありながら3番ほど何も考えてない感はなく、どこかしら切迫感があって、その折衷感が魅力だ。
アルバムはまたもパーボ・ベルグルンド×ヘルシンキフィル。
1番とのカップリング収録だからだけど。
最初に買ったのが、1番と6番のセットだったのは良かった。もっともシベリウスらしい初心者向けナンバーのセットという感じ。
ベルグルンドの心の赴くままな感じの演奏がとても染みる。
【交響曲第7番】
シベリウス最後の交響曲。
これを書いて亡くなったわけではない。発表が1924年で、シベリウスの没年が1957年。
シベリウスは7番発表後急速に作曲家としての意欲を失う。
それくらい7番に自分の全てを注ぎ込んだことがうかがえる。
しかも、彼が作曲をパタッとやめた期間というのは第二次大戦の始まるころからだ。
フィンランドはソ連に侵略され、米英や隣国スウェーデンから知らん顔され、成り行き上仕方なくドイツと同盟して枢軸側国家としてソ連と戦った。
スターリンのソ連はフィンランドごとき瞬殺してくれると思っていたであろうが、フィンランドは大国ソ連を相手に勇猛果敢に戦い本国を守り抜き、ついにソ連を事実上撤退に追い込む。
この国家存亡の事態の最中に、シベリウスはなぜ沈黙していたのだろうか。かつては愛国曲「フィンランディア」で国民を勇気付けたシベリウスが。それを知る術はないがあるいは凄惨な戦争に心を痛めたのかもしれないし、成り行き上仕方なくとはいえナチスと手を組みソ連と戦っていたお国の状況が彼を政治的に微妙な立場に立たせたのかもしれない。
それはさておき、この7番は単一楽章というユニークな構成で、演奏時間は20分前後とクラシック界的には小品といってもいい作品だが、その20分に1番から6番までの全ての要素が詰め込まれているような濃密さがある。
7番をシベリウスのベストに上げるファンも多いし、その気持ちはわかる。
単一楽章とはいえ、その中でスケルツォもアダージョもアレグロもあって、交響曲のエッセンスが何もかも含まれているし、人の様々な感情も、自然描写も感じられる。男性的な面も女性的な面もあるし、たしかに手っ取り早くシベリウス を知るには一番いい曲かもしれない。
マーラーやショスタコーヴィッチの馬鹿みたいに長い曲に慣れた自分的にはさすがにちょっと短めで食い足りない感はあるのだけど、腹八分目な丁度良さともいえる。
アルバムはオスモ・ヴァンスカ×ミネソタ響。3番、6番とのカップリングアルバム。
それとカラヤン×ベルリンフィルの5番とのカップリング。これもフィンランド風とドイツ風の演奏の聴き比べができる。
7番は短いので単体でアルバムになることはなく、必ず何かと一緒に収録されている。
ヴァンスカはベルグルンド以上にせっかちというか、乗った時のテンポが早い。
対して冷静沈着なカラヤンはテンポが一定している。
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【聴き比べ編】
「交響詩フィンランディア」
カラヤン×ベルリンフィル VS ベルグルンド×ヘルシンキフィル
「フィンランディア」はシベリウスの最も有名な曲である。映画「ダイハード2」のクライマックスで使われている。レニー・ハーリン監督がフィンランド人なので作曲担当のマイケル・ケーメンがヨイショのため使ったのだと思われる。
もともとは同名の愛国劇のための音楽であった。フィンランドがロシア帝国に支配されていたころの劇の曲である。しかしロシア帝国はこの曲がフィンランドの分離独立運動を助長することを恐れ演奏を禁止した。
優しく悲しく儚げなシベリウスの交響曲を聴いていると同じ人によるものかと耳を疑うくらい、ドッカンドッカン盛り上がるアゲアゲな曲である。
冒頭は悪い国ロシアに支配された暗黒の時代を描写する重々しくドス黒い悪の国の軍隊的なテーマで始まる。
やがて戦争の始まりでも注げるようにトランペットが鳴り響くと、曲は転調して勇壮な調べへと変わる。やがて、平和な世界を描写するような穏やかな優しい調べへと移り(この部分はシベリウスらしさがある)、でもすぐにまた景気良く鳴るトランペットを伴った英雄的な戦いの調べに戻って、勝利を想起させる爽快なファンファーレで幕を閉じる。
カラヤンの演奏は9分半くらい
ベルグルンドは7分半くらい
ベルグルンドが「速い」というのはここでもわかる。
ただしベルグルンドは全体的に速くしているというより、気持ちのあがるような部分を猛烈に速くするのだ。気持ちに相当左右された演奏をしている。
対してカラヤンは、感情など持ち合わせていないので、一貫してドッシリとした重厚な演奏を貫く。
冒頭部分はカラヤンの方が良い。あの重々しさはベルリンフィルの面目躍如だ。
ただ英雄的に盛り上がるところは、好みの問題はあるのだけど、私はベルグルンドのノリまくった感のある演奏が好きだ。トランペット以上に自己主張の激しいシンバルの破壊的な響きも良い。
客観的に考えるとカラヤンの演奏の方が「フィンランディア」に関しては良いように思うのだけど、ベルグルンドのジェットコースターのような子供心くすぐる演奏の方が楽しい気分になれる。
「交響曲第6番」
パーボ・ベルグルンド×ヘルシンキフィル VS オスモ・ヴァンスカ×ミネソタ響
フィンランド人同士の聴き比べ
のってくると速くなるのはフィンランド人の特長なのか、演奏スタイルは似ている。
演奏時間比較
ベルグルンド×ヘルシンキフィル
第1楽章 8:13
第2楽章 5:32
第3楽章 3:56
第4楽章 11:12
ヴァンスカ×ミネソタ響
第1楽章 9:12
第2楽章 7:00
第3楽章 3:48
第4楽章 9:17
1楽章、2楽章はヴァンスカの方がズッシリとしているが、4楽章になるとヴァンスカはずっと速い。ティンパニの叩きつけるような感じも印象深い。でもベルグルンドの演奏の方が恋愛ドラマの劇伴のようなうっとり感があって好きだ。
「交響曲第7番」
ヴァンスカ×ミネソタ響 VS カラヤン×ベルリンフィル
ヴァンスカ 22:34
カラヤン 23:32
さすがベルリンフィルという重厚感のあるカラヤン節の演奏をとるか、軽やかながら感情のタメがあるヴァンスカをとるか。
好みは分かれると思いますが、私は7番はヴァンスカの方が好みです
この7番はいろんな人のを聞いてみたいです
----
そんなこんなのシベリウス交響曲は、クラシック初心者でも入りやすいあっさり目で聴きやすい曲が多く、是非是非シベリウス にチャレンジしてみてください
おススメは
パーボ・ベルグルンドとヘルシンキフィル
カラヤンも結局いいです
最初に買うなら1番がいいんじゃないかと思います
ではまた、クラシック音楽でお会いしましょう