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ペイン・アンド・グローリー 【監督:ペドロ・アルモドバル】

2020-07-18 12:18:35 | 映評 2013~
映画館復帰一作目(先週観たのは安倍官邸にならって都合悪いものは記録抹消)は、ストーリーマイライフに引かれつつ世界名作劇場な感じより世界変態図鑑的な磁力に負けてアルモドバルの「#ペイン・アンド・グローリー」へ。そしたら、アルモドバル映画で涙ぐむというすごい体験付きで面白さにやられた

愛と人生の物語にあっと驚く仕掛けも施したストーリー、現実と回想と虚構が入れ混じる構成の妙、抜けの良い画もトリッキーなカメラも不要な色使いだけで見せるビジュアルセンス
アルモドバルの人生総括に相応しく彼のテクニカルな要素が全て堪能できる最高としか良いようのない映画でした。
そしてなんつってもアントニオバンデラス史上最高の演技。こないだまでエクスペンダブルズだったのに。この幅。もしかして世界最高の俳優ではないか


映画の中で端折られた神学校時代は「バッド・エデュケーション」で埋めればいいのかしらん

それにしても今年の映画は傑作ぞろいだ
パラサイト、ミッドサマー 、フォードvフェラーリ、ペインアンドグローリー

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ここより若干ネタバレ

アルモドバル映画の良さは、物語の異常さと、ファッション雑誌の写真ようなセンスいい映像のミスマッチもさることながら、やはり脚本の構成のうまさに尽きる。
普通に時系列に並べたらそこまで驚かない物語を、巧みな構成で驚愕のストーリーにする。「バッド・エデュケーション」も「私が、生きる肌」も「抱擁のかけら」もその構成のうまさにやられた。

本作も、母との生活の回想という過去の物語と、現在の物語を同時並行で描いていると見せかけて、実は・・・というところ、してやられた。「プロジェクト・グーテンベルク」などよりはるかにうまい騙しだった。

過去は美化しがち。ペネロペ演じる母をアルモドバルはスターのオーラをはぎとって田舎の普通の女性になってもらった・・などと言ってるが、そうは言っても隠し切れないスターのオーラ。ま・・まあいいんだよ、映画なんだからさ、そこはと思っていた。
そして中盤で年老いた母を介護する主人公のエピソードで、急にあのペネロペが年老いたとはいえこれほど華がなくなるのか・・・と。いや当たり前だよ。役者変わってんだからさ・・・と一人突っ込みしながら見ていたら
ラストですっきり。母への愛、自分という命を生んでくれたことへの深い感謝がこの構成、キャスティングにあったのか・・・と、これは劇映画であることを変に意識する映画通たちへの、見事なだましだった!!

母への愛は冒頭のプールの中のバンデラスで示唆されている。
あれは羊水につかる胎児のメタファ
すべての命は、ジェンダーとか性的指向とかに限らず平等に尊く、それらを産み出す母もまた尊いのだ。
映画のファーストシーンは、その映画のすべてを象徴した場面から始まるべき、と思っている自分にとって、また忘れえぬファーストシーンの素晴らしい映画と出会えてうれしい!


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「ペイン・アンド・グローリー」
2020年6月27日 Bunkamura ル・シネマ にて鑑賞
監督・脚本 ペドロ・アルモドバル
撮影 ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽 アルベルト・イグレシアス
出演 アントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、アシエル・エチュアンディア、レオナルド・スバラーリャ、ノラ・ナバス

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