ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【映評概要】
終盤の怒濤の反復攻勢に映画における物語の語り口の理想型(のひな形)を見たような気がした。ベタかもしれないがトラウマ克服と信頼形成のドラマはやはり熱い感動を呼ぶ。
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【映評詳細・・・ネタバレ】
監督が元「髭男爵」のメンバーで名付け親だからという俗な理由でなく、なんといっても「ぴあ」のグランプリ作品だからということで鑑賞。
ちゃんと劇場鑑賞できたことがうれしい。
物語としては、王道というかベタな感じはする。トラウマを乗り越えて車を運転するところは熱い感動を呼ぶ。「ダイハード」でレジナルド・ベルジョンソンがついに拳銃を抜くラストを思い出す。
[序盤の展開]
序盤はロケーションの美しさと、先輩女工が新入り女工に仕事を教えるという何気ないシーンで二人に信頼が芽生えていき、暗い顔をしていた先輩女工が笑顔を取り戻していく過程のプラス方向の展開が見ていて和む。
笑い転げる妊婦の新入り女工と、つられて笑う先輩女工。お互いに刺激し合い、影響し合っていく姿を見るのは楽しい。
[中盤の展開]
ただし中盤の展開は、伏線を配置しているだけで特に面白さを感じなかったが、怒濤の反復攻勢を見せる終盤の面白さで帳消し。
例えば二度目の恐竜公園でフリスビーを拾うシーンは、ただフリスビーを拾うだけでやってることは何も面白くない。
しかしその後の農道のシーンにおける、まさかのフリスビーが熱い感動を呼ぶわけだ。
総じて中盤は、感情をマイナス方向に運ぶ暗鬱としたエピソードがつづき、展開も読めるし物語の説明に終止していて、のれない。
工場内でヒロインが妊娠している同僚を殺そうとしているかのように見せるシーンのサスペンス。そこはとても良かった。そういう場面をもっと中盤に盛り込むべきだったのでは・・・と思う。
それでも、子づくりを拒否されたヒロインが、下着のままビール片手に煙草をすう姿に、どこかしら男らしさというか、かっこよさを感じて面白かった。
[終盤の展開]
そして終盤の怒濤の反復攻勢。
同じ風景を別のシチュエーションで反復させて、異なる印象を持たせるところ。とても映画的だと思う。
ともかく反復。それこそ映画を面白くする伝家の宝刀。イーストウッドご老公がやたらふりまわすアレ。それをちゃんと脚本に練り込んでくる。
農道の真ん中で陣痛の始まる場面において、東西南北からの引きの4カット。これぞ映画だ。
クレーンを使って俯瞰で一発撮るとか、カメラを二人を中心にぐるんぐるん回すとかすれば1カットで目的は果たせる(広い田圃に二人しかいない・・・という状況の提示)。けれども東西南北4方向からの4カットで表現。カメラのセッティングとか正直めんどくさいだろうに、それをやることで、映画がテンポアップする。
それまでの鬱々とした物語がハイテンポのクライマックスに一気に転がっていくことを示す狼煙のようなものと言えばいいか。
総じて右肩上がりの展開は、脚本としてバランスがいいとは言えない。だがラストの出産シーンは色んな意味での感動のごった煮。 トラウマを乗り越えたヒロインを祝福する命の花火・・・と私は解釈した。
あの子、10数年後、自分が出てくる場面を見て感動してほしい。生まれた瞬間から芸術創作の一員となったことを誇るべきだ。
・・・という次第で結論としては面白かったが、丁寧な脚本を丁寧に映像化している面白さであって(それは一番大事なことなんだけど)、映画作家としての強い個性を感じたかというと、ちょっと・・・
次作、ぴあのグランプリということはスカラシップ権を得て、もっと大予算の映画にチャレンジするだろうから、それを楽しみに待ちたい。
[追記1]
ヒロイン二人があり得ない雨量の夕立の中を歩くショットが印象的だった。いかにも降らせてます感のある雨だが、女優二人の滝のように髪から水を滴らせながら、それでも歩き続ける姿が、現場の壮絶さを思わせて感動できる。
続く雨の上がった踏切のシーンで、カメラをローアングルにしてアスファルトの写り込む面積をぎりぎり少なくしておいて、それでも結構な面積の路面をしっかりと水で濡らしているところにナイスなスタッフ働きを感じた。
[追記2]
助監督としてクレジットされている平波亘さんは塩尻市の出身で、一度彼のある映画に間接的に関わったことがあり、その縁で一度だが一緒に飲んだことがあります。その後もmixiの方でマイミク付き合いさせていただいており、時々とても面白くて鋭い映画批評を書いてくる。
ちなみにこの「無防備」と同年に「Scherzo」という作品で「ぴあ」入選。その後も精力的に映画製作を続けており、いくつかの映画祭で上映されている。期待の新鋭監督だ。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【映評概要】
終盤の怒濤の反復攻勢に映画における物語の語り口の理想型(のひな形)を見たような気がした。ベタかもしれないがトラウマ克服と信頼形成のドラマはやはり熱い感動を呼ぶ。
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【映評詳細・・・ネタバレ】
監督が元「髭男爵」のメンバーで名付け親だからという俗な理由でなく、なんといっても「ぴあ」のグランプリ作品だからということで鑑賞。
ちゃんと劇場鑑賞できたことがうれしい。
物語としては、王道というかベタな感じはする。トラウマを乗り越えて車を運転するところは熱い感動を呼ぶ。「ダイハード」でレジナルド・ベルジョンソンがついに拳銃を抜くラストを思い出す。
[序盤の展開]
序盤はロケーションの美しさと、先輩女工が新入り女工に仕事を教えるという何気ないシーンで二人に信頼が芽生えていき、暗い顔をしていた先輩女工が笑顔を取り戻していく過程のプラス方向の展開が見ていて和む。
笑い転げる妊婦の新入り女工と、つられて笑う先輩女工。お互いに刺激し合い、影響し合っていく姿を見るのは楽しい。
[中盤の展開]
ただし中盤の展開は、伏線を配置しているだけで特に面白さを感じなかったが、怒濤の反復攻勢を見せる終盤の面白さで帳消し。
例えば二度目の恐竜公園でフリスビーを拾うシーンは、ただフリスビーを拾うだけでやってることは何も面白くない。
しかしその後の農道のシーンにおける、まさかのフリスビーが熱い感動を呼ぶわけだ。
総じて中盤は、感情をマイナス方向に運ぶ暗鬱としたエピソードがつづき、展開も読めるし物語の説明に終止していて、のれない。
工場内でヒロインが妊娠している同僚を殺そうとしているかのように見せるシーンのサスペンス。そこはとても良かった。そういう場面をもっと中盤に盛り込むべきだったのでは・・・と思う。
それでも、子づくりを拒否されたヒロインが、下着のままビール片手に煙草をすう姿に、どこかしら男らしさというか、かっこよさを感じて面白かった。
[終盤の展開]
そして終盤の怒濤の反復攻勢。
同じ風景を別のシチュエーションで反復させて、異なる印象を持たせるところ。とても映画的だと思う。
ともかく反復。それこそ映画を面白くする伝家の宝刀。イーストウッドご老公がやたらふりまわすアレ。それをちゃんと脚本に練り込んでくる。
農道の真ん中で陣痛の始まる場面において、東西南北からの引きの4カット。これぞ映画だ。
クレーンを使って俯瞰で一発撮るとか、カメラを二人を中心にぐるんぐるん回すとかすれば1カットで目的は果たせる(広い田圃に二人しかいない・・・という状況の提示)。けれども東西南北4方向からの4カットで表現。カメラのセッティングとか正直めんどくさいだろうに、それをやることで、映画がテンポアップする。
それまでの鬱々とした物語がハイテンポのクライマックスに一気に転がっていくことを示す狼煙のようなものと言えばいいか。
総じて右肩上がりの展開は、脚本としてバランスがいいとは言えない。だがラストの出産シーンは色んな意味での感動のごった煮。 トラウマを乗り越えたヒロインを祝福する命の花火・・・と私は解釈した。
あの子、10数年後、自分が出てくる場面を見て感動してほしい。生まれた瞬間から芸術創作の一員となったことを誇るべきだ。
・・・という次第で結論としては面白かったが、丁寧な脚本を丁寧に映像化している面白さであって(それは一番大事なことなんだけど)、映画作家としての強い個性を感じたかというと、ちょっと・・・
次作、ぴあのグランプリということはスカラシップ権を得て、もっと大予算の映画にチャレンジするだろうから、それを楽しみに待ちたい。
[追記1]
ヒロイン二人があり得ない雨量の夕立の中を歩くショットが印象的だった。いかにも降らせてます感のある雨だが、女優二人の滝のように髪から水を滴らせながら、それでも歩き続ける姿が、現場の壮絶さを思わせて感動できる。
続く雨の上がった踏切のシーンで、カメラをローアングルにしてアスファルトの写り込む面積をぎりぎり少なくしておいて、それでも結構な面積の路面をしっかりと水で濡らしているところにナイスなスタッフ働きを感じた。
[追記2]
助監督としてクレジットされている平波亘さんは塩尻市の出身で、一度彼のある映画に間接的に関わったことがあり、その縁で一度だが一緒に飲んだことがあります。その後もmixiの方でマイミク付き合いさせていただいており、時々とても面白くて鋭い映画批評を書いてくる。
ちなみにこの「無防備」と同年に「Scherzo」という作品で「ぴあ」入選。その後も精力的に映画製作を続けており、いくつかの映画祭で上映されている。期待の新鋭監督だ。
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