ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
[映評概要]
「ハートロッカー」とかを観て思ったのは、善悪とかそんな単純な思想の戦争映画を作れなくなったがそれが時代というものなんだろう・・ということだったが、我らがシルベスターはそんな時代の空気を読み取る器用な奴じゃない。80年代に逆戻りしたかのような時代錯誤も甚だしい企画でもって、00年代以降の本流である残虐描写をも単なるギャグに転化してしまうこの作品。スタローンの変わらぬ戦争バカで映画バカな姿勢に私は魂を熱く焦がされたのだった。
[超完全ネタバレストーリー紹介]
恐るべき、そして感動の嵐の映画を観てしまった。
シルベスターことスタさんの撮った「エクスペンダブルズ」だ。
まずはその感動的なストーリーを紹介しよう。
映画が始まると夜の街が写りハーレーみたいなバイクに乗ったヤバそうな男たちがヤバそうな店に入っていく。が、このファーストシーンは続くエピソードと全く関係なく「それはさておきソマリア沖では・・・」てな感じで物語は勝手に進んでいく。
そのソマリア沖では悪そうな海賊さんたちが人質をとって悪そうなことをしていた。人質が殺される・・・と映画の観客全員が固唾をのんでいると我らがスタさんとその燃える仲間たちが海賊軍団にマシンガンを突きつける。普通のアクション映画ならスタさんやその仲間たちが海賊の占拠する船にスーパーアイテムを使って乗り込んだり、見事な殺しのテクニックで見張りを倒したり、ハイテクアイテムでロックを解除したりしながらさりげなくキャラクター紹介もしたりするわけだが、我らがスタさんはそんな面倒くさいことなどばっさりカット。さっさと敵との戦闘シーンに突入してしまう。
潜入とかハイテクとか駆け引きとかサスペンスとかそんな難しいことできないし・・・という自分の身の丈をよくわかったストーリー展開だ。
そして戦闘の始まりは敵兵の上半身を吹き飛ばすという壮絶さでスタート。
我らがスタさんは人質の命の安全など気にかけるような器の小さい男ではない。派手に撃ちまくって気がつけば敵は皆殺し、仲間も人質も当然のように全員無事で戦いは終わる・・・かと思いきやスタさんチームの一人金髪で背の高い男(かつては人間核弾頭と呼ばれ、空手の達人の怒流布乱紅蓮)が敵の死体に残虐行為をしようとしたため、スタさんチームの一員ちびの東洋人ジェット・リーと格闘戦になる。スタさんチームの戦いは敵を皆殺しにしても終わらないというのか・・・
ヤクでラリッていたらしい怒流布を強制的に落ち着かせ平和なアメリカに帰ったスタさんはファーストシーンで写った怪しげな店に行く。そこは元本物のボクサーなのに今や元レスラーと間違って認識されているミッキーの店だった。今日もミッキーにタトゥーを入れてもらうスタさん。そんなスタさんはああ見えてもチームのリーダーであり、仲間たちの生活のために営業活動も行わなくてはならない。そこで新しい仕事の話を聞きにいくのだった。
スタさんに仕事の話を持ちかけた男は厳かに語る。「私は事情があって本名を言えないのだが、この神聖な場所にちなんでチャーチと呼んでくれたまえ・・・」
だがそう語るその男は誰がどうみてもダイ・ハード野郎のブルース・ウィリス以外にありえないのだが、そこはスタさん、わかってねー奴だなと思いながらも大人の対応で気づかないふりをしてあげるのだった。
だが続けてもっとわかってない男が現れるとはさすがのスタさんも予想だにしていなかった。
ブルースのきっかけ台詞を待っていたかのように威勢よく教会の扉を開けて入ってきた男がいた。
スタさんはそいつを見るなり「昔同じ釜の飯を食っていた」と言う。ブルースが言うには今回の仕事をスタさんに頼むか、もう1人の薄らでかい男に頼むか決めかねているらしい。
無駄に目立つうすらでかい奴はやたらとアップで撮られ、にやっと笑うと前歯の隙間がなんかアホっぽいが、どこかしら愛嬌が感じられる奴だった。ただし傭兵というよりは政治家っぽい雰囲気が漂っていた。そいつはスタさんに「ジャングルならお前の方が得意だろ」、とまるでスタさんの乱暴だった前歴を知っているかのような発言をして去っていった。何しに現れたのかさっぱりわからんが、去っていくそいつにスタさんは「あいつは大統領の椅子を狙っている」という説明的な捨て台詞をはいた。
いったいこの場面はなんなんだ?何の意味も無いじゃないか?!ネタの為だけに撮られたみたいじゃないか!!などなどとスタさん映画初心者どもはともすれば怒りを感じるかもしれない。しかし我らスタ郎映画上級者にしてみれば「あんなのロッキー3でロッキーとハルク・ホーガンが闘うどーでもいいが最高に楽しかったあの場面に比べれば可愛いもんだぜ」というところだろう。
ところで映画のことを全く知らない私はあのうすらでかくて無駄に目立つ奴が何という俳優なのか全く知らない。
出番は少ししかなかったしクレジットでも名前が紹介されないし、きっと無名の俳優でしょーもない映画にばっかり出てた奴なんだろう。
しょーもない映画ってのはたとえば、宇宙から来たカニ怪人を倒す映画とか、ソビエト連邦から派遣された赤いデカがダーティハリーが使ってたのと同じ銃でワルに全弾撃ちこむ映画とか、未来の殺人ショーに出場して刺客たちを返り討ちにした上その未来社会で革命まで起こす映画とか、火星で顔面破裂寸前になりつつ火星でもまた革命起こしちゃう映画とか、映画のスクリーンから飛び出したアクションヒーローが自分を演じる俳優に悪態をつく映画とか・・・もしほんとにそんな映画があったら笑っちゃうね
そうした無駄なシーンはおいといて、スタさんはブルースの依頼をうける。ブルースの依頼とは要約すれば、南米あたりに悪い国があるからそこの悪い奴をやっつけてくれという複雑なもの。スタさんは自分と比べて動きの機敏なジェットとジェイソンを連れて行こうとするが、ジェットはギャラあげてくれよーとせこい駄々をこねるので、ワンチャイシリーズのころに比べたら破格のギャラ払ってんだろうがという内輪の事情はまあいいとして、ジェットは連れて行かないことにした。
さて南米のなんていうか忘れたが悪い国についたスタさんとジェイソンは案内人との待ち合わせ場所に行く。
するとフラメンコギターかなんかで奏でられるエキゾチックな音楽にのってスローモーションでラテン美女が現れた。どんなバカでもこの美女は主要登場人物の1人なんだろうとわかる演出だが、何しろ演出はあのスタさんだからもしかするとただの顔見せ出演なだけかもしれないという不安を抱きつつスタさんとジェイソンはその美女の案内で悪い国の悪い奴らの基地のそばに行くのだった。途中でなんか知らんけどジェイソンは車を降りて1人でその辺をほっつき歩きに行ったがスタさんは一向に気にしない。アフガンでソ連軍50万と戦った(ポスターのキャッチコピーより)スタさんにしてみれば、こんな小国で1人きりになったって心細いことなどある筈ないのだった。
そうしているとやっぱり例のごとく身の程を知らない悪の国の軍隊20人くらいにスタさんと案内の女性は包囲されてしまう。なんてかわいそうな敵さんたち・・・とハラハラしていたら案の定スタさんと、いいタイミングで帰ってきたジェイソンの2人によって敵兵20人くらいはたやすく殺害されてしまうのだった。
偵察もそこそこにさっさと逃げようと思ったスタさんとジェイソンは車で水上飛行機を停泊させている港に向かうが、バカな敵たちの増援部隊が車で追いかけてくるのだった。スタさんは案内の女性に一緒にアメリカに逃げようと暑苦しく迫るのだがなぜか女は拒否。女を残してスタさんとジェイソンは敵でひしめく埠頭から脱出するのだった。滑走をはじめた飛行機に還暦のスタさんが走って飛び乗ろうとして間に合うか間に合わないか的よくあるくだりもちゃんと用意して・・・。
女はなぜ俺たちについて来なかったのか・・・教えてくれエイドリアン、もしくはトラウトマン大佐・・・と余韻を残して次のシーンへ・・・というのが出木杉君的優等生な映画作家たちの常套手段だが、我らがスタさんがそんなつまらなくくだらない作り方をするはずがなかった。
だったらもう一つのお約束として敵が空軍を繰り出してきて空中戦をするということもあるだろうが、ハラハラドキドキはカーチェイスで充分だ。逃げるばっかりじゃスタ郎の名が泣く。
なんとスタさんはわざわざ飛行機をUターンさせて敵のひしめく港に舞い戻り、機銃掃射と燃料噴出による即席ナパーム弾で敵兵の大殺戮を行うのだった。ランボー3でソ連軍の戦闘ヘリに攻撃されたアフガンゲリラが「これが戦争か?!これは殺戮だ!!」と激昂する場面をふと思い出したが、ソ連兵がやるのとスタさんがやるのとじゃそりゃあ意味が違うに決まっている。とにかく余韻もへったくれもなく、悪い国の奴らの攻撃には100倍返しをして観客を熱狂させるスタさんだった。
ところで案内役のラテン美女はなんとこの国の独裁者の娘だったことが判る。さらにその独裁者は元CIAのアメリカ人が影で糸を引いていたことも判る。さらにとんでもないことにその黒幕野郎のオフィスにスタさんからチームをくびにされたドルフがやってきた。
痴話げんかを理由にスタさんを裏切ったドルフ。やっぱりお前はアポロを殴り殺したドラゴのままだったのか!?筋肉バカ僧たちのマッチョ祭だというのになんだってまたこんな汚れ役をやるんだ。ロッキーを立てて、ヴァン・ダムまで立てたお前じゃないか、もういいんだよ!!というドルフファンの悲痛な叫びを浴びながらドルフは絶対に負けるに決まっている悪役特有の不敵な笑いを浮かべているのだった。もちろんドルフを愛する我らとしては変に紳士的だったりすがすがしかったりするドルフより狂ったドルフの方が安心はできるのだが。
さて裏にCIAの陰謀を嗅ぎ取ったスタさんは仕事をキャンセルしようと決めるのだが、どうにも女が気になる。
そこでついこないだアカデミー候補になって名優気分をもうしばらくは味わいたいミッキーに相談すると、彼はアカデミー候補経験者らしく神妙な表情で長ゼリをこなし、早い話が女を助けてこいと諭すのだった。
それはともかくスタさんは何の理由だったか忘れたがジェットを連れてドライブしていると、ドルフ率いる暗殺者軍団に攻撃されるのだった。拳銃とかマシンガンとかが飛び交うアメリカの路上。これが奴らの喧嘩だというのか。だがスタさんはドルフカーチームを全滅させそのまま廃工場みたいなとこに逃げ込み、ドルフ一派との格闘戦になだれ込むのだった。
そこで我らが目にしたものは元中国の至宝ジェットvs元極真空手スウェーデン代表ドルフとの壮絶な格闘戦だった。あるいはワンチャイシリーズのウォン・フェイフォンvs赤いボクサーにして人間核弾頭そしてビデオスルーの帝王ドルフのアクション大戦である。しかししかし、かつてスタ郎どころかヴァン・ダムにも負けてあげた心優しいドルフは今回もジェット・リーに花を持たせてやるのだった。そしてスタさんの銃弾を浴びてとても悲しそうな目をして「俺は死ぬのか」と語り、スタさんに「ああ」と言われるドルフの演技は完璧に美しかった。そのはかない散り方に侍の姿がだぶって見えたのは何も彼がかつて傑作「リトル・トーキョー殺人課」に出演していたからでもない。「バニシング・レッド」「ピースキーパー」「スウィーパーズ」「ジルリップス」「ブラックジャック(監督ジョン・ウー)」数々の名作が走馬灯のように浮かび上がり、ユニバーサルソルジャーでヴァンダムのとどめのキックを喰らって死ぬような無様さとは明らかに違う、アクションバカとして駆け抜けた男の死に様に深く感動したのだった・・・
本筋とぶっちゃけ関係なかったドルフ襲撃を切り抜けたスタさんたちは、正直仕事云々でも正義云々でもなく、頭きたから悪い国をやっつけに行くことにした。スタさんとジェイソンだけでも100人くらいやっつけたのに今度はジェットも含めてエクスペンダブルズ全員で乗り込むのだ。悪い国の命は風前の灯だった。
本気になったエクスペンダブルズは恐ろしかった。いつの間に調べたのか悪い国の独裁者官邸の構造を熟知している彼らは、邸宅内の要所要所に次々と爆弾をしかけていった。もちろん邪魔する奴は瞬殺しながら。
そのころ独裁者の娘は黒幕元CIAの計らいで拷問されようとしていた。敵の屈強で頭の悪そうな拷問担当員さんが娘になんか忘れたけどろくでもない機器を押し当てようとして、もちろん恐怖を味合わせるためにゆっくりとしていると、言うまでもなくスタさんが現れて拷問担当員さんの腕をスパッと切断した。そして不幸にもその場に居合わせた兵士たちも一瞬でぶち殺すのだった。なんとも原哲夫チックな演出だ。
独裁者と黒幕は娘の扱いで対立しており、娘に必要以上に入れ込んだスタさんとしては殺し難いけどとても悪い独裁者は黒幕が都合よく殺してくれるのだった。
そんでスタさんたちは敵の兵士と格闘戦を展開。ジェイソンは軽やかに舞って敵兵をナイフでスパスパ、ジェットもウォン・フェイフォンの勘が戻ってきたのか素早い動きで敵を圧倒しつつ殲滅。我らがスタさんはもちろん動きは遅いので(スタさん曰く「光より遅い程度」とのことだが)、格闘戦は重量級のプロレスバトルの様相を呈した。格闘についてはよく知らないがぶん投げて叩きつけてから即座に関節を極めにいく闘いっぷりは素人目にもすごいと判る。しかも壁とか家具とか色んなものぶち壊しながらの乱闘でそれでも痛いとか疲れたとかもう歳だなどと弱音をはかないスタさんにはただただ圧倒されるのだった。(恐らく、今回ジェットとかジェイソンとかドルフとか担ぎ出してきたのはさすがに2時間1人で暴れ続けるのがしんどくなったからだろう。それでいて自分より目立つ恐れがある奴は客寄せの顔見せ出演だけに使い、あくまで自分の映画であることを主張し続けるスタさんのなんと抜け目無いことか)
そんでもってあれやこれやと数人のスタさんチームによって悪い国の軍隊も薄汚い黒幕野郎もことごとく殲滅。スタさんチームは死亡0どころか全員ほとんど無傷。
恐ろしい。スタさんが生きている限りアメリカ相手に悪いことはできないと思い知らされたのだった。
そして女との別れ。女を置いてアメリカに帰ろうとするスタさんにジェイソンが「本音を言えよ。タイプじゃなかったんだろ」とスタさん脚本でトップ級のいい台詞を吐いて馬鹿な男どもの友情を高らかにうたいあげるのだった。
しかしそれ以上に高らかにバカな男の友情を感じる衝撃のどんでん返しが最後に待っていた。
恐らく映画史上最も意外なラストシーンだ。
例によってミッキーの店に集まったマッチョなアクションバカたちだが・・・
え? まさか? どういうこと? ・・・といまだに頭の整理がつかないのだが、見事な死に様で私の涙を誘ったドルフが普通に生きている。
そして本気の殺し合いをした連中に混じって快心のニコニコ笑顔で友達の輪の中に完璧に溶け込んでいる。
ロッキー4でドルフをぶちのめした後にスタさんがぶった大演説「人は変われる!!」(それを聞いたゴルバチョフが思わず立ち上がって拍手するほどの感動の演説)を思い出す。敵に魂を売り命を狙った相手も変われるしそんな奴ともわかり合えるんだ!! というかスタさんとドルフの映画のセオリーを軽く超えた絆に感動するしかないのだった。
しかし、もしシリーズ化されたら毎回毎回、今度は誰が裏切るのかが楽しみなシリーズになりそうだ。
[追記]
観に行った映画館は完全座席指定制でそのくせ指定時に席の利用状況がわからないこまったシステムを取り入れている。
私の席の隣には初老の夫婦が座っておられた。
私がブルースやうすらでかい奴がドアップになったり、敵が体半分吹き飛ばして絶命したりするたびに、こらえきれずに笑うと、隣の老婦人が怪訝そうな顔で私を覗き込むのだ。そうするとなんだか悪いことをしている気分になってしまい、本調子で鑑賞できなかったのが残念だ。
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↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
[映評概要]
「ハートロッカー」とかを観て思ったのは、善悪とかそんな単純な思想の戦争映画を作れなくなったがそれが時代というものなんだろう・・ということだったが、我らがシルベスターはそんな時代の空気を読み取る器用な奴じゃない。80年代に逆戻りしたかのような時代錯誤も甚だしい企画でもって、00年代以降の本流である残虐描写をも単なるギャグに転化してしまうこの作品。スタローンの変わらぬ戦争バカで映画バカな姿勢に私は魂を熱く焦がされたのだった。
[超完全ネタバレストーリー紹介]
恐るべき、そして感動の嵐の映画を観てしまった。
シルベスターことスタさんの撮った「エクスペンダブルズ」だ。
まずはその感動的なストーリーを紹介しよう。
映画が始まると夜の街が写りハーレーみたいなバイクに乗ったヤバそうな男たちがヤバそうな店に入っていく。が、このファーストシーンは続くエピソードと全く関係なく「それはさておきソマリア沖では・・・」てな感じで物語は勝手に進んでいく。
そのソマリア沖では悪そうな海賊さんたちが人質をとって悪そうなことをしていた。人質が殺される・・・と映画の観客全員が固唾をのんでいると我らがスタさんとその燃える仲間たちが海賊軍団にマシンガンを突きつける。普通のアクション映画ならスタさんやその仲間たちが海賊の占拠する船にスーパーアイテムを使って乗り込んだり、見事な殺しのテクニックで見張りを倒したり、ハイテクアイテムでロックを解除したりしながらさりげなくキャラクター紹介もしたりするわけだが、我らがスタさんはそんな面倒くさいことなどばっさりカット。さっさと敵との戦闘シーンに突入してしまう。
潜入とかハイテクとか駆け引きとかサスペンスとかそんな難しいことできないし・・・という自分の身の丈をよくわかったストーリー展開だ。
そして戦闘の始まりは敵兵の上半身を吹き飛ばすという壮絶さでスタート。
我らがスタさんは人質の命の安全など気にかけるような器の小さい男ではない。派手に撃ちまくって気がつけば敵は皆殺し、仲間も人質も当然のように全員無事で戦いは終わる・・・かと思いきやスタさんチームの一人金髪で背の高い男(かつては人間核弾頭と呼ばれ、空手の達人の怒流布乱紅蓮)が敵の死体に残虐行為をしようとしたため、スタさんチームの一員ちびの東洋人ジェット・リーと格闘戦になる。スタさんチームの戦いは敵を皆殺しにしても終わらないというのか・・・
ヤクでラリッていたらしい怒流布を強制的に落ち着かせ平和なアメリカに帰ったスタさんはファーストシーンで写った怪しげな店に行く。そこは元本物のボクサーなのに今や元レスラーと間違って認識されているミッキーの店だった。今日もミッキーにタトゥーを入れてもらうスタさん。そんなスタさんはああ見えてもチームのリーダーであり、仲間たちの生活のために営業活動も行わなくてはならない。そこで新しい仕事の話を聞きにいくのだった。
スタさんに仕事の話を持ちかけた男は厳かに語る。「私は事情があって本名を言えないのだが、この神聖な場所にちなんでチャーチと呼んでくれたまえ・・・」
だがそう語るその男は誰がどうみてもダイ・ハード野郎のブルース・ウィリス以外にありえないのだが、そこはスタさん、わかってねー奴だなと思いながらも大人の対応で気づかないふりをしてあげるのだった。
だが続けてもっとわかってない男が現れるとはさすがのスタさんも予想だにしていなかった。
ブルースのきっかけ台詞を待っていたかのように威勢よく教会の扉を開けて入ってきた男がいた。
スタさんはそいつを見るなり「昔同じ釜の飯を食っていた」と言う。ブルースが言うには今回の仕事をスタさんに頼むか、もう1人の薄らでかい男に頼むか決めかねているらしい。
無駄に目立つうすらでかい奴はやたらとアップで撮られ、にやっと笑うと前歯の隙間がなんかアホっぽいが、どこかしら愛嬌が感じられる奴だった。ただし傭兵というよりは政治家っぽい雰囲気が漂っていた。そいつはスタさんに「ジャングルならお前の方が得意だろ」、とまるでスタさんの乱暴だった前歴を知っているかのような発言をして去っていった。何しに現れたのかさっぱりわからんが、去っていくそいつにスタさんは「あいつは大統領の椅子を狙っている」という説明的な捨て台詞をはいた。
いったいこの場面はなんなんだ?何の意味も無いじゃないか?!ネタの為だけに撮られたみたいじゃないか!!などなどとスタさん映画初心者どもはともすれば怒りを感じるかもしれない。しかし我らスタ郎映画上級者にしてみれば「あんなのロッキー3でロッキーとハルク・ホーガンが闘うどーでもいいが最高に楽しかったあの場面に比べれば可愛いもんだぜ」というところだろう。
ところで映画のことを全く知らない私はあのうすらでかくて無駄に目立つ奴が何という俳優なのか全く知らない。
出番は少ししかなかったしクレジットでも名前が紹介されないし、きっと無名の俳優でしょーもない映画にばっかり出てた奴なんだろう。
しょーもない映画ってのはたとえば、宇宙から来たカニ怪人を倒す映画とか、ソビエト連邦から派遣された赤いデカがダーティハリーが使ってたのと同じ銃でワルに全弾撃ちこむ映画とか、未来の殺人ショーに出場して刺客たちを返り討ちにした上その未来社会で革命まで起こす映画とか、火星で顔面破裂寸前になりつつ火星でもまた革命起こしちゃう映画とか、映画のスクリーンから飛び出したアクションヒーローが自分を演じる俳優に悪態をつく映画とか・・・もしほんとにそんな映画があったら笑っちゃうね
そうした無駄なシーンはおいといて、スタさんはブルースの依頼をうける。ブルースの依頼とは要約すれば、南米あたりに悪い国があるからそこの悪い奴をやっつけてくれという複雑なもの。スタさんは自分と比べて動きの機敏なジェットとジェイソンを連れて行こうとするが、ジェットはギャラあげてくれよーとせこい駄々をこねるので、ワンチャイシリーズのころに比べたら破格のギャラ払ってんだろうがという内輪の事情はまあいいとして、ジェットは連れて行かないことにした。
さて南米のなんていうか忘れたが悪い国についたスタさんとジェイソンは案内人との待ち合わせ場所に行く。
するとフラメンコギターかなんかで奏でられるエキゾチックな音楽にのってスローモーションでラテン美女が現れた。どんなバカでもこの美女は主要登場人物の1人なんだろうとわかる演出だが、何しろ演出はあのスタさんだからもしかするとただの顔見せ出演なだけかもしれないという不安を抱きつつスタさんとジェイソンはその美女の案内で悪い国の悪い奴らの基地のそばに行くのだった。途中でなんか知らんけどジェイソンは車を降りて1人でその辺をほっつき歩きに行ったがスタさんは一向に気にしない。アフガンでソ連軍50万と戦った(ポスターのキャッチコピーより)スタさんにしてみれば、こんな小国で1人きりになったって心細いことなどある筈ないのだった。
そうしているとやっぱり例のごとく身の程を知らない悪の国の軍隊20人くらいにスタさんと案内の女性は包囲されてしまう。なんてかわいそうな敵さんたち・・・とハラハラしていたら案の定スタさんと、いいタイミングで帰ってきたジェイソンの2人によって敵兵20人くらいはたやすく殺害されてしまうのだった。
偵察もそこそこにさっさと逃げようと思ったスタさんとジェイソンは車で水上飛行機を停泊させている港に向かうが、バカな敵たちの増援部隊が車で追いかけてくるのだった。スタさんは案内の女性に一緒にアメリカに逃げようと暑苦しく迫るのだがなぜか女は拒否。女を残してスタさんとジェイソンは敵でひしめく埠頭から脱出するのだった。滑走をはじめた飛行機に還暦のスタさんが走って飛び乗ろうとして間に合うか間に合わないか的よくあるくだりもちゃんと用意して・・・。
女はなぜ俺たちについて来なかったのか・・・教えてくれエイドリアン、もしくはトラウトマン大佐・・・と余韻を残して次のシーンへ・・・というのが出木杉君的優等生な映画作家たちの常套手段だが、我らがスタさんがそんなつまらなくくだらない作り方をするはずがなかった。
だったらもう一つのお約束として敵が空軍を繰り出してきて空中戦をするということもあるだろうが、ハラハラドキドキはカーチェイスで充分だ。逃げるばっかりじゃスタ郎の名が泣く。
なんとスタさんはわざわざ飛行機をUターンさせて敵のひしめく港に舞い戻り、機銃掃射と燃料噴出による即席ナパーム弾で敵兵の大殺戮を行うのだった。ランボー3でソ連軍の戦闘ヘリに攻撃されたアフガンゲリラが「これが戦争か?!これは殺戮だ!!」と激昂する場面をふと思い出したが、ソ連兵がやるのとスタさんがやるのとじゃそりゃあ意味が違うに決まっている。とにかく余韻もへったくれもなく、悪い国の奴らの攻撃には100倍返しをして観客を熱狂させるスタさんだった。
ところで案内役のラテン美女はなんとこの国の独裁者の娘だったことが判る。さらにその独裁者は元CIAのアメリカ人が影で糸を引いていたことも判る。さらにとんでもないことにその黒幕野郎のオフィスにスタさんからチームをくびにされたドルフがやってきた。
痴話げんかを理由にスタさんを裏切ったドルフ。やっぱりお前はアポロを殴り殺したドラゴのままだったのか!?筋肉バカ僧たちのマッチョ祭だというのになんだってまたこんな汚れ役をやるんだ。ロッキーを立てて、ヴァン・ダムまで立てたお前じゃないか、もういいんだよ!!というドルフファンの悲痛な叫びを浴びながらドルフは絶対に負けるに決まっている悪役特有の不敵な笑いを浮かべているのだった。もちろんドルフを愛する我らとしては変に紳士的だったりすがすがしかったりするドルフより狂ったドルフの方が安心はできるのだが。
さて裏にCIAの陰謀を嗅ぎ取ったスタさんは仕事をキャンセルしようと決めるのだが、どうにも女が気になる。
そこでついこないだアカデミー候補になって名優気分をもうしばらくは味わいたいミッキーに相談すると、彼はアカデミー候補経験者らしく神妙な表情で長ゼリをこなし、早い話が女を助けてこいと諭すのだった。
それはともかくスタさんは何の理由だったか忘れたがジェットを連れてドライブしていると、ドルフ率いる暗殺者軍団に攻撃されるのだった。拳銃とかマシンガンとかが飛び交うアメリカの路上。これが奴らの喧嘩だというのか。だがスタさんはドルフカーチームを全滅させそのまま廃工場みたいなとこに逃げ込み、ドルフ一派との格闘戦になだれ込むのだった。
そこで我らが目にしたものは元中国の至宝ジェットvs元極真空手スウェーデン代表ドルフとの壮絶な格闘戦だった。あるいはワンチャイシリーズのウォン・フェイフォンvs赤いボクサーにして人間核弾頭そしてビデオスルーの帝王ドルフのアクション大戦である。しかししかし、かつてスタ郎どころかヴァン・ダムにも負けてあげた心優しいドルフは今回もジェット・リーに花を持たせてやるのだった。そしてスタさんの銃弾を浴びてとても悲しそうな目をして「俺は死ぬのか」と語り、スタさんに「ああ」と言われるドルフの演技は完璧に美しかった。そのはかない散り方に侍の姿がだぶって見えたのは何も彼がかつて傑作「リトル・トーキョー殺人課」に出演していたからでもない。「バニシング・レッド」「ピースキーパー」「スウィーパーズ」「ジルリップス」「ブラックジャック(監督ジョン・ウー)」数々の名作が走馬灯のように浮かび上がり、ユニバーサルソルジャーでヴァンダムのとどめのキックを喰らって死ぬような無様さとは明らかに違う、アクションバカとして駆け抜けた男の死に様に深く感動したのだった・・・
本筋とぶっちゃけ関係なかったドルフ襲撃を切り抜けたスタさんたちは、正直仕事云々でも正義云々でもなく、頭きたから悪い国をやっつけに行くことにした。スタさんとジェイソンだけでも100人くらいやっつけたのに今度はジェットも含めてエクスペンダブルズ全員で乗り込むのだ。悪い国の命は風前の灯だった。
本気になったエクスペンダブルズは恐ろしかった。いつの間に調べたのか悪い国の独裁者官邸の構造を熟知している彼らは、邸宅内の要所要所に次々と爆弾をしかけていった。もちろん邪魔する奴は瞬殺しながら。
そのころ独裁者の娘は黒幕元CIAの計らいで拷問されようとしていた。敵の屈強で頭の悪そうな拷問担当員さんが娘になんか忘れたけどろくでもない機器を押し当てようとして、もちろん恐怖を味合わせるためにゆっくりとしていると、言うまでもなくスタさんが現れて拷問担当員さんの腕をスパッと切断した。そして不幸にもその場に居合わせた兵士たちも一瞬でぶち殺すのだった。なんとも原哲夫チックな演出だ。
独裁者と黒幕は娘の扱いで対立しており、娘に必要以上に入れ込んだスタさんとしては殺し難いけどとても悪い独裁者は黒幕が都合よく殺してくれるのだった。
そんでスタさんたちは敵の兵士と格闘戦を展開。ジェイソンは軽やかに舞って敵兵をナイフでスパスパ、ジェットもウォン・フェイフォンの勘が戻ってきたのか素早い動きで敵を圧倒しつつ殲滅。我らがスタさんはもちろん動きは遅いので(スタさん曰く「光より遅い程度」とのことだが)、格闘戦は重量級のプロレスバトルの様相を呈した。格闘についてはよく知らないがぶん投げて叩きつけてから即座に関節を極めにいく闘いっぷりは素人目にもすごいと判る。しかも壁とか家具とか色んなものぶち壊しながらの乱闘でそれでも痛いとか疲れたとかもう歳だなどと弱音をはかないスタさんにはただただ圧倒されるのだった。(恐らく、今回ジェットとかジェイソンとかドルフとか担ぎ出してきたのはさすがに2時間1人で暴れ続けるのがしんどくなったからだろう。それでいて自分より目立つ恐れがある奴は客寄せの顔見せ出演だけに使い、あくまで自分の映画であることを主張し続けるスタさんのなんと抜け目無いことか)
そんでもってあれやこれやと数人のスタさんチームによって悪い国の軍隊も薄汚い黒幕野郎もことごとく殲滅。スタさんチームは死亡0どころか全員ほとんど無傷。
恐ろしい。スタさんが生きている限りアメリカ相手に悪いことはできないと思い知らされたのだった。
そして女との別れ。女を置いてアメリカに帰ろうとするスタさんにジェイソンが「本音を言えよ。タイプじゃなかったんだろ」とスタさん脚本でトップ級のいい台詞を吐いて馬鹿な男どもの友情を高らかにうたいあげるのだった。
しかしそれ以上に高らかにバカな男の友情を感じる衝撃のどんでん返しが最後に待っていた。
恐らく映画史上最も意外なラストシーンだ。
例によってミッキーの店に集まったマッチョなアクションバカたちだが・・・
え? まさか? どういうこと? ・・・といまだに頭の整理がつかないのだが、見事な死に様で私の涙を誘ったドルフが普通に生きている。
そして本気の殺し合いをした連中に混じって快心のニコニコ笑顔で友達の輪の中に完璧に溶け込んでいる。
ロッキー4でドルフをぶちのめした後にスタさんがぶった大演説「人は変われる!!」(それを聞いたゴルバチョフが思わず立ち上がって拍手するほどの感動の演説)を思い出す。敵に魂を売り命を狙った相手も変われるしそんな奴ともわかり合えるんだ!! というかスタさんとドルフの映画のセオリーを軽く超えた絆に感動するしかないのだった。
しかし、もしシリーズ化されたら毎回毎回、今度は誰が裏切るのかが楽しみなシリーズになりそうだ。
[追記]
観に行った映画館は完全座席指定制でそのくせ指定時に席の利用状況がわからないこまったシステムを取り入れている。
私の席の隣には初老の夫婦が座っておられた。
私がブルースやうすらでかい奴がドアップになったり、敵が体半分吹き飛ばして絶命したりするたびに、こらえきれずに笑うと、隣の老婦人が怪訝そうな顔で私を覗き込むのだ。そうするとなんだか悪いことをしている気分になってしまい、本調子で鑑賞できなかったのが残念だ。
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80年代頃はこのテイストの映画って一杯あったけど、最近は全然ないなあ・・・というか一昨年ランボーがありましたけど(笑
既に続編は決まってるらしいので、次は誰が出てくるのか楽しみですね。
続編ですか!!
無理に決まってるけどシュワvsブルースvsスタの三つ巴バトルになってほしいです!!