デアゴスティーニの東宝特撮コレクションの第二段
「モスラ対ゴジラ」(昭和39年 監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二)
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「ゴジラに殺される人の中にはいい人もいます。悪い人にだって・・・生きる権利はあるはずです」
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過去に何度も観た作品であり、隅々まで覚えているつもりだったが、数年ぶりに見直すといろいろと記憶の中で美化していたことがわかった。けれどやはり傑作である。
この作品にはノベライズ小説があり、25年位前に読んだことがある。物語的にはそちらの方がデキが良い。多分、自分の本作に対する印象や感動はノベライズで後から刷り込まれた部分が大きかったのではないかと思う。
ノベライズでは核実験により全滅したインファント島に関する詳しい説明があり、映画では何も説明の無い、「赤い実を煎じてつくった薬湯」が、実は放射能に対する耐性を人々に作ったこと、そのためにインファント島の原住民は肌が赤いことが説明される。文明から隔てられモスラとともに平和に暮らす赤い肌の人々こそが核戦争後の地球を担うのかもしれない・・・と物語は結ぶ。だが映画版にはそうしたインファント島の住民と核との因縁の説明はなく、ただの赤い肌をした未開の地の人々である。
ただし記憶は定かではないが、前作にあたる「モスラ」でそうした説明はされていたと思う。怪獣プロレスに重きを置いた本作ではスペクタクル重視で、メッセージ性を薄めたのだろう。
ついでにインファント島のもろ書き割りな背景とか、安手のセットとかがちょっと笑える。
本作のクライマックスは双子の幼虫モスラによる仇討ちとなり、生まれたばかりの子供怪獣が無謀にもゴジラに立ち向かう。
それと同時並行でゴジラの上陸した島に取り残された子供達の救出作戦がクロスカッティングで描かれるのだが、子供の救出劇は蛇足以外の何物でもない印象を受ける。
ノベライズではこの子供救出劇をばっさりカットしていたと記憶している。替わってゴジラの上陸した島に原子力発電所があり、このままでは中部・東海方面が核汚染で全滅してしまう・・・というエピソードが並行で描かれる。知事だか首相だかがいまから何百万人も非難させるなんて無理だ、と諦めかけるが、幼虫モスラが無謀としか思えない仇討ち戦に赴くのを知って感動し、無駄だ無理だと諦めたら終わりだ、1人でも多くを助けるんだ、と非難作戦を開始するのである。
原発危機は、インファント島とゴジラが抱える核の脅威という裏テーマをさらに高めるのに一躍買い、幼虫モスラの悲壮感あふれる戦いを盛り上げもする。ノベライズでは主人公や博士たちが、島に向かうモスラを見届けながら、「無理だ・・・勝てるわけがない・・・」、と心でつぶやかせ、負け確定を印象付けることで、大逆転のラストをさらに爽快感あるものとしていた。
対して映画では誰もモスラの心配はせず、戦い前の悲壮感が薄い。
昔の記憶では、ゴジラが派手に名古屋市街を破壊していた印象があるが、改めて観てみるとテレビ塔の倒壊と名古屋城の破壊くらいで、大都市破壊のスペクタクルは割りと地味。
「ゴジラの逆襲」では大阪城をぶっ壊しながらアンギラスと取っ組み合い、「キングコング対ゴジラ」では熱海城をぶっ壊しながらコングと大格闘したゴジラだが本作では、成虫モスラとの第一次バトルも、幼虫モスラとの第二次バトルもひと気の無い荒野での戦いであり、見た目の地味さは否めない。
だが極彩色の成虫モスラと真っ黒なゴジラの戦いはそれだけで見た目に強い印象を残す。
また、本作のゴジラの着ぐるみはシリーズで最も人気のあるもので、凶悪な面構えや、贅肉をそいでスマートになったフォルムなどが素晴らしい。「キングコング対ゴジラ」までのゴジラの面構えはトカゲのイメージが強かったが、「モスゴジ」の面構えには、どこかパンサーとかジャガーのようなネコ科肉食哺乳類を思わせるものがある。精悍な顔つきでシリーズ中一番のイケメンゴジラと言えよう。
干拓地から出現するシーンは、砂地の表面がもぞもぞうねったかと思うと、突然尻尾がバーン!!と跳ね上がり、ついでに伊福部昭作曲のゴジラ出現のショートモチーフがピアノの衝撃音とともに鳴り響く。そんなサプライズにつづいて、ゆっくりと体を起こし、ブルルっと体を震わせて黄色い砂をふるい落とす動物的な仕草。その一連の様子を見ていた主人公や付近住民たちのパニックとのモンタージュ。シリーズ白眉の名シーンに仕上がっている。
特撮的な見せ場で言うと妖精・小美人のかなり違和感ない実景との合成も驚きだし、インファント島の聖なる泉の美しさも忘れがたい。
ファンタジーと古代恐竜が核の脅威を背景に戦う、組み合わせの異様さこそが、本作の高い人気を支えているのではなかろうか
また自衛隊とゴジラの戦いも手に汗握った。不覚にも忘れていたのだが、本作で自衛隊のとった人工雷発生装置によるゴジラ迎撃作戦は、あと一歩でゴジラを倒せるところまで行っていたのである。自衛隊が自力でゴジラを撃退一歩前まで追い詰めたのは初期シリーズではこれだけだろう。
しかもこのシーン、成虫モスラを倒した後に描かれるので、何も知らずに観たら、ひょっとしてこのシーンで終わりか、とも思ってしまう。
成虫との激闘とそれに続く激しい放電攻撃でゴジラは相当ダメージを受けていたので、幼虫にあっさり負けたのも、疲れがたまっていたせいだっのかもしれない・・・と思った。
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「先生、双子です」
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次回の東宝特撮コレクションは「三大怪獣 地球最大の決戦」
宇宙からキングギドラが襲来だ!迎え撃てゴジラ、モスラ、ラドン!!楽しみ~
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「モスラ対ゴジラ」(昭和39年 監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二)
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「ゴジラに殺される人の中にはいい人もいます。悪い人にだって・・・生きる権利はあるはずです」
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過去に何度も観た作品であり、隅々まで覚えているつもりだったが、数年ぶりに見直すといろいろと記憶の中で美化していたことがわかった。けれどやはり傑作である。
この作品にはノベライズ小説があり、25年位前に読んだことがある。物語的にはそちらの方がデキが良い。多分、自分の本作に対する印象や感動はノベライズで後から刷り込まれた部分が大きかったのではないかと思う。
ノベライズでは核実験により全滅したインファント島に関する詳しい説明があり、映画では何も説明の無い、「赤い実を煎じてつくった薬湯」が、実は放射能に対する耐性を人々に作ったこと、そのためにインファント島の原住民は肌が赤いことが説明される。文明から隔てられモスラとともに平和に暮らす赤い肌の人々こそが核戦争後の地球を担うのかもしれない・・・と物語は結ぶ。だが映画版にはそうしたインファント島の住民と核との因縁の説明はなく、ただの赤い肌をした未開の地の人々である。
ただし記憶は定かではないが、前作にあたる「モスラ」でそうした説明はされていたと思う。怪獣プロレスに重きを置いた本作ではスペクタクル重視で、メッセージ性を薄めたのだろう。
ついでにインファント島のもろ書き割りな背景とか、安手のセットとかがちょっと笑える。
本作のクライマックスは双子の幼虫モスラによる仇討ちとなり、生まれたばかりの子供怪獣が無謀にもゴジラに立ち向かう。
それと同時並行でゴジラの上陸した島に取り残された子供達の救出作戦がクロスカッティングで描かれるのだが、子供の救出劇は蛇足以外の何物でもない印象を受ける。
ノベライズではこの子供救出劇をばっさりカットしていたと記憶している。替わってゴジラの上陸した島に原子力発電所があり、このままでは中部・東海方面が核汚染で全滅してしまう・・・というエピソードが並行で描かれる。知事だか首相だかがいまから何百万人も非難させるなんて無理だ、と諦めかけるが、幼虫モスラが無謀としか思えない仇討ち戦に赴くのを知って感動し、無駄だ無理だと諦めたら終わりだ、1人でも多くを助けるんだ、と非難作戦を開始するのである。
原発危機は、インファント島とゴジラが抱える核の脅威という裏テーマをさらに高めるのに一躍買い、幼虫モスラの悲壮感あふれる戦いを盛り上げもする。ノベライズでは主人公や博士たちが、島に向かうモスラを見届けながら、「無理だ・・・勝てるわけがない・・・」、と心でつぶやかせ、負け確定を印象付けることで、大逆転のラストをさらに爽快感あるものとしていた。
対して映画では誰もモスラの心配はせず、戦い前の悲壮感が薄い。
昔の記憶では、ゴジラが派手に名古屋市街を破壊していた印象があるが、改めて観てみるとテレビ塔の倒壊と名古屋城の破壊くらいで、大都市破壊のスペクタクルは割りと地味。
「ゴジラの逆襲」では大阪城をぶっ壊しながらアンギラスと取っ組み合い、「キングコング対ゴジラ」では熱海城をぶっ壊しながらコングと大格闘したゴジラだが本作では、成虫モスラとの第一次バトルも、幼虫モスラとの第二次バトルもひと気の無い荒野での戦いであり、見た目の地味さは否めない。
だが極彩色の成虫モスラと真っ黒なゴジラの戦いはそれだけで見た目に強い印象を残す。
また、本作のゴジラの着ぐるみはシリーズで最も人気のあるもので、凶悪な面構えや、贅肉をそいでスマートになったフォルムなどが素晴らしい。「キングコング対ゴジラ」までのゴジラの面構えはトカゲのイメージが強かったが、「モスゴジ」の面構えには、どこかパンサーとかジャガーのようなネコ科肉食哺乳類を思わせるものがある。精悍な顔つきでシリーズ中一番のイケメンゴジラと言えよう。
干拓地から出現するシーンは、砂地の表面がもぞもぞうねったかと思うと、突然尻尾がバーン!!と跳ね上がり、ついでに伊福部昭作曲のゴジラ出現のショートモチーフがピアノの衝撃音とともに鳴り響く。そんなサプライズにつづいて、ゆっくりと体を起こし、ブルルっと体を震わせて黄色い砂をふるい落とす動物的な仕草。その一連の様子を見ていた主人公や付近住民たちのパニックとのモンタージュ。シリーズ白眉の名シーンに仕上がっている。
特撮的な見せ場で言うと妖精・小美人のかなり違和感ない実景との合成も驚きだし、インファント島の聖なる泉の美しさも忘れがたい。
ファンタジーと古代恐竜が核の脅威を背景に戦う、組み合わせの異様さこそが、本作の高い人気を支えているのではなかろうか
また自衛隊とゴジラの戦いも手に汗握った。不覚にも忘れていたのだが、本作で自衛隊のとった人工雷発生装置によるゴジラ迎撃作戦は、あと一歩でゴジラを倒せるところまで行っていたのである。自衛隊が自力でゴジラを撃退一歩前まで追い詰めたのは初期シリーズではこれだけだろう。
しかもこのシーン、成虫モスラを倒した後に描かれるので、何も知らずに観たら、ひょっとしてこのシーンで終わりか、とも思ってしまう。
成虫との激闘とそれに続く激しい放電攻撃でゴジラは相当ダメージを受けていたので、幼虫にあっさり負けたのも、疲れがたまっていたせいだっのかもしれない・・・と思った。
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「先生、双子です」
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