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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

2022年の映画ベスト

2023-01-04 15:30:00 | 私の映画年間ベスト
毎年恒例私の年間ベスト
ベストテンなどと言えるほど鑑賞したわけではないのですが、配信鑑賞も含めてなんとか10本あげてみました。
といってもこの時点でノーウェイホームもベルファストもシンウルトラマンもクライマッチョもベイビーブローカーもアバターも観てません。そんなんだからベスト映画を選ぶ権利なんてないのかもしれません
なお鑑賞タイミングの問題で2021年の作品も混ざってますが、まあご容赦ください

1. コーダ あいのうた
2. ケイコ 目を澄ませて
3. パラレル・マザーズ
4. トップガン マーヴェリック
5. 私たちの家族
6. ドライブ・マイ・カー
7. 機動戦士ガンダム ククルスドアンの島
8. ウェストサイド・ストーリー
9. パワー・オブ・ザ・ドッグ
10. ベイビーわるきゅーれ

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10位 ベイビーわるきゅーれ(監督: 阪元祐吾)

女の子にガチアクションさせたいというバカっぽい欲求に、200%応えた伊澤 彩織が涙が出るほど素晴らしい。小柄な身体を駆使といか酷使して何回りもでかい男の殺し屋と格闘して勝つ、その姿は本当に感動できる。

9位 パワー・オブ・ザ・ドッグ (監督: ジェーン・カンピオン)

そういえば『ピアノ・レッスン』を観たのは学生時代で、あの当時は音楽以外はあまり評価しなかった。しかし、ジェーン・カンピオンという監督はなんかすごい人だと記憶したが、以来あまり目立った活躍はしなかった。
ピアノ・レッスンはアカデミー賞で作品、監督、脚本で候補になったが、作品と監督はスピルバーグの『シンドラーのリスト』に敗れた。そしてあれから30年くらいたって今またスピルバーグとともに作品、監督でノミネートされ、今度は監督賞を獲得した。素晴らしいストーリーだ…と思いつつ、まさか監督賞のみしか取れない結果に終わるとは思わなかった。
それはさておき、もやし君みたいなコディ・スミット=マクフィーが、男の中の男っぽいベネディクト・カンバーバッチを、ある意味ハニートラップにかけてやっつける、アンチマッチョイズムな物語。推理小説風と言えばそうだし、見返して物語に、カット割りに仕掛けられた監督の罠に気づく、そんな面白さにあふれた傑作だった。

8位 ウェストサイド・ストーリー (監督: スティーブン・スピルバーグ)

カンピオンとあえて並べる因縁対決相手のスピルバーグ作品。といってもどちらもアカデミー賞の主役とはなれず、話題はコーダとウィル・スミスがさらってしまったのだけど
もちろん、ロビンス&ワイズの61年版の素晴らしさは全く揺るがないのだけど、2022年なりのアップデートが施された作りは非常に興味深い。
「アメリカ」のシーンの素晴らしさと、グスターボ・ドゥダメルとNYフィルによるサントラも名盤だ
アホみたいに高いパンフレットも、読み応えたっぷりで、結構満足

7位 機動戦士ガンダム ククルスドアンの島(監督: 安彦良和)

古谷徹さんの声のアムロが主人公のガンダムの新作映画を観れるだけで、生きててよかったです。安彦監督ありがとう。
オリジナルにあった「政治性」をきれいにはぎ取った作りに寂しさもあるが…
サザンクロス隊のザクのプラモが欲しいのだけど、プラモ発売した先から転売ヤーに買い占められる悲しい時代。転売ヤーからは絶対に買わないと誓ってはいるが、そのため手に入らない。転売ヤーこそアムロのガンダムが踏み潰せばいいのに

6位 ドライブ・マイ・カー (監督: 濱口竜介)

3時間の長尺でしかも会話劇。しかも感情を排したような演技でそれでもどっぷりと作品世界に浸からせる。これが演出というのですな。
自家発電的に感情を絞り出させるのではなく、俳優のあらゆる経験をリセットさせて純粋にテキストのみからの反応を引き出す…濱口監督の演出法のハウツー作品になっていますが、ここまでオープンにされるとかえって誰も真似できなくなりました。

5位 私たちの家族(監督: 雨夜)

レインボーマリッジ映画祭で鑑賞した、短編ドキュメンタリーですが、すごい内容の映画でした。
雨夜監督(インド籍のアメヤさんという女性で作品撮影当時は21歳の学生でした)によると制作費は2〜3万円。ビデオカメラ持って面白教授の家族にインタビューしただけと言えばそうです。
しかし、そこに映されたのは、日本の結婚制度の歴史の転換点になるかもしれないものでした。
ビギナーズラック的な映画…ではないでしょう。歴史の転換点になりそうな場所に映像志望の人がカメラ持って立っていたら、撮るんです。そして雑でもなんでも作品にして発表するのです。その機会をモノにできるのは監督の実力なんだと思います。
忘れ難い作品でした。エリンさんと緑さんの裁判は結局どうなったのだろう?
ちなみに映画で描かれた事件はこちらの記事でも読めます
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/elin-midori-mccready

4位 トップガン マーヴェリック(監督:ジョセフ・コシンスキー)

2022年の映画の顔と言って否定する者はいないのではないか
映画館で映画を作ることにこだわり続けた監督でなく俳優の熱い想いが結実した作品。
そして80年代のアイコンだった、『トップガン』に誇りを持ち、トップガン大好きだったバカと言われていた奴らに、お前たちは何も間違っていない!あのトップガンの続編、待たせてすまなかった、思う存分楽しんでくれ!と言っているかのような作品にした、その最大の功労者はあれ以来一貫してトップスターであり続けたトムだ!

3位 パラレル・マザーズ(監督:ペドロ・アルモドバル)

いつものように、母について、愛についての個人的な映画でありながら、社会に向けてアルモドバル流に怒りを放った骨太な社会派映画。圧巻の母の物語が、本来のテーマの前振りでしかない、豪快にして繊細な脚本の素晴らしさ

2位 ケイコ 目を澄ませて(監督: 三宅唱)

最高のボクシング映画であり、作品から受けた感銘度で言えば一番なのだが…
しかし、どうしても引っかかってしまう
これほど映画として完璧なのに、どうして主演に聴覚障碍の当事者の俳優を使わなかったのだろう。
もちろん、演じた岸井ゆきのに非は何もない。監督オファーされた時点ですでに主演は決まっていたというから三宅監督にも非はない
そして誰がどんな役を演じようが、誰がどんな役を演じる映画を撮ろうが基本的には自由であるべきだと思っている。
けれども、つい2年前に同じくらいの予算規模だったと思われる『37セカンズ』が、当事者起用の芸術的商業的優位性を示したというのに…という思いはある。
それに『コーダ あいのうた』がアカデミー賞を取った同じ年によりにもよって…という気もする。
いや、私だってつい6年前に、ストレートの女性にレズビアンの役を演じさせる映画を撮った。どの口が言うのだと思われるかもしれない。
しかし、映画の作り手も、見る側も意識をアップデートしていく必要はあると思うのだ。
いや、これらは映画の問題というよりは映画界の問題であり、映画を評価する上では場外戦の要素である。
でも映画と現実社会を完全に切り離して考えるのもまた、無理なのだ。
しかし、しかし、それでも小柄な岸井ゆきののスパーリングや試合の場面の迫力は本物だったし、本人にしか知り得ないことを説明しない、感情移入させない突き放した演出もまた、この種の映画を撮る上で真摯な姿勢として深く感銘を受ける。やはり忘れ難い傑作として自分のベストテンにはあげさせてもらう。

1位 コーダ あいのうた(監督: シアン・ヘダー)

そして結局自分のベストワンはこれだった。愛され要素のかたまりのような本作が、色々思い返して2022年に最も至福を感じることのできた作品だった。

リメイク元のフランス映画『エール』を観てないので、それを観たらまた印象は変わるかもしれない。

映画としてはシンプルというか、脚本なんかむしろテンプレ的で、新しさは無いと言ってよい。
また、似たようなストーリー展開の映画をいくつか挙げることもできる。
若い主人公が彼/彼女を必要とする家族や地域のことに悩みながらも夢を追って故郷を離れる話…例えば『リトルダンサー』が似ているだろう。『シングストリート』も似てる。
若い主人公が家族と夢の二者択一を迫られる、くらいざっくりした話とすれば『フラガール』『遠い空の向こうに』『ブラス!』とか色々出てくる
この種のヒットや高評価の実績があるストーリーテンプレートに、CODA(聞こえない両親を持つ子供)の要素をはめ込んだのである。
時制崩しのような気を衒った複雑な構成にはしない。主人公の決断も、主人公の家族の決断も、そうあって欲しいと皆が思うところに落ち着く。
想像を超える映画という意味では「ケイコ目を澄ませて」や「パラレルマザーズ」の方が上だろう。

全て望んだ通りのところに落ち着く、いわば「減点要素の何もない映画」である。その攻めなさを批判ないしは「批判しないが評価もしない」風潮もあるだろう。
かく言う自分もそうした思いはないでもない。けれども結局思い返してこんなにいい気分になれた映画も無いのである。
しかも制作過程やキャスティングにいたるまで全てに細心の注意を払い、マイノリティを含めた全ての観客を幸せ気分にする映画にした。製作陣の観るもの皆を幸せにしたいという強い信念を感じる。
そしてマーケティング戦略だけでそれをやってるようにも思えない。私たちはこの映画を通してCODAの存在を知ったし、聞こえない人たちにとって障害となっている社会の問題を知ったのだ。
色んな意味で愛せる映画というだけでなく、忘れえぬ映画であると思う

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最後に蛇足ながら勝手に個人賞
女優賞 ペネロペ・クルス
男優賞 トム・クルーズ
脚本賞 ペドロ・アルモドバル
監督賞 シアン・ヘダー

2022ベストサントラは、トップガンマーヴェリックかなぁ

おっといけない
あまりに身内びいきがすぎるのでテンから外しましたが、古本恭一監督『CODE-D』なんかCODAと間違えそうなタイトルですが、わざとではないです。多分。
バトルロワイヤル的なこのエリアを出たら死ぬ的状況に放り込まれた数人の女たちの物語、面白いですよ

そんなところで、また2023年も素晴らしい映画との出会いを楽しみたいと思います

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2 コメント

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こんにちは (ノラネコ)
2023-01-15 19:01:13
なかなか納得の10本じゃないでしょうか。
私もここ3年くらい配信と分けるのやめました。
とはいえ、配信はちょっとビジネスモデルが揺らいできてる感もあるので、今年あたりがターニングポイントになりそうな気がします。
本年もよろしくお願いします。
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Unknown (studioyunfat)
2023-01-19 14:24:36
ノラネコさんのベストはさすがと思うものでした
変わらぬ映画愛に頭が下がります

配信についてはおっしゃる通り、今後どうなるのかよくわからない感じです
それでも、映画スターとして映画館上映の素晴らしさを伝え切ったトムクルーズは2022年の顔でした
前作は80年代のアイコンでしたが、今作もコロナ禍の時代や配信が席巻する時代におけるアイコンではないかと思います

今年もよろしくお願いします
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