「美しいダイヤは隠せば隠すほど奪いたくなる」
恋に夢中だったゲバラの台詞。こんな殺し文句がするりと出てくるところにゲバラのカリスマ性をかいま見る??
この映画を観るまで私のチェ・ゲバラについての知識は、何年か前に読んだチェ・ゲバラの伝記小説と、SNKのビデオゲーム「ゲバラ」(中学のころだ。よくわかんないがランボーみたいな男だったのか・・・と間違ったイメージを持っていた)だけだ。伝記小説のお陰でゲバラ知識はばっちり備わったが、反米思想が過剰に漂う本だったので(どうしようもない悪の国家のように書かれ過ぎていて笑えるくらいだった)、ゲバラ知識はだいぶ偏っているかもしれません。
ところでこの映画、ロバート・レッドフォードがExecutive Producerを務め、ポスターではアメリカ-イギリス作品となっている。監督はブラジルのウォルター・サレスだが舞台となるのはポルトガル語圏のブラジルではなく、スペイン語圏のアルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア・・・
国籍のよくわからん映画だ。
やっぱ制作形態で面白さを感じるのは、アメリカの毛嫌いする国トップ3に軽く入るであろうキューバの、革命の英雄を題材にしていながら、アメリカが制作に絡んでおり、アカデミー賞でも歌曲賞を受賞した他、脚本賞でも候補になっているところ。
圧政に苦しむ人々を救いたい一心で故国ではなくキューバの革命に参加したゲバラ。当時の南米の圧政者といえば例外なくアメリカやアメリカ企業を後ろ盾にしており、革命闘争とは反米戦争に他ならない。反米の旗印ともいえるゲバラを描く上では、反米プロパガンダ映画とするのは容易だしゲバラという題材自体にそのような響きがある。(そういえば昔オリバー・ストーンがゲバラの伝記映画を企画していたような記憶がある。うろ覚えだが。もし彼が撮ったら間違いなく反米映画にしただろう)もちろんそんな映画ならアメリカの会社が出資するはずもない。そこで政治臭を極限まで押さえ込んだ青春ロードムービーの体裁を保たせ、青春映画としてもロードムービーとしても出色のできとした。
レッドフォードが持ち込んだ企画ということで、彼の出世作「明日に向かって撃て」などアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせもするが、レッドフォードも実は結構「社会派」なやつで「大統領の陰謀」や「候補者ビル・マッケイ」(←結構好きな映画)といった社会派映画に出演もし、「クイズ・ショウ」(←これも大好きな映画さ)を監督していたりもする。そんなリベラル野郎にとってキューバ革命の英雄を題材にした映画を作ることはブッシュ政権へのあてつけのような意味もあったのかもしれない。
ま、そんな政治的な話とは概ね無関係に気ままなラテン男二人を乗せたオンボロバイク「ポデローサ号」は南米大陸を疾走していくのたが、それでも生活のため鉱山労働を余儀なくされる夫婦を始め、貧しい人々のスナップ写真のようなショットの挿入は、無言の演説ともいえる強いメッセージに満ちている。
極めてオーソドックスなロード・ムービーの体裁。二人の男が旅をしていく話。旅の果てに一人は社会の不平等さを知り、自分の成すべきことに気付き始める。国よりも己の恋の方が重要だった男が、国や社会のことを強く意識し始める。ブルジョワな婚約者へのプレゼントのためとっておいた金を、貧しい労働者に渡してしまったことを告げるシーンが印象的だ。旅は確実に彼に影響を与えている。仲良く旅を続けた二人の進むべき道がはっきりと別れるラスト。世渡り上手のアルベルトはきっと無難な人生を送ったのだろう。ラストに登場するアルベルト老人。無名のまま人生を終えようとしている彼の目は何を見ているのか?壮絶な人生を送ったゲバラの伝説の契機ともなった旅。アルベルトなしでは現代南米史は大きく変わっていたかもしれない。歴史に取り残された男に刻まれた深い皺・・・歴史スペクタクル大作ではないけれど、歴史の重みを感じさせる映画だった。でもそんなことより、男二人の若さゆえの、気ままで無謀な冒険旅行の楽しさが一番の魅力だ
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
恋に夢中だったゲバラの台詞。こんな殺し文句がするりと出てくるところにゲバラのカリスマ性をかいま見る??
この映画を観るまで私のチェ・ゲバラについての知識は、何年か前に読んだチェ・ゲバラの伝記小説と、SNKのビデオゲーム「ゲバラ」(中学のころだ。よくわかんないがランボーみたいな男だったのか・・・と間違ったイメージを持っていた)だけだ。伝記小説のお陰でゲバラ知識はばっちり備わったが、反米思想が過剰に漂う本だったので(どうしようもない悪の国家のように書かれ過ぎていて笑えるくらいだった)、ゲバラ知識はだいぶ偏っているかもしれません。
ところでこの映画、ロバート・レッドフォードがExecutive Producerを務め、ポスターではアメリカ-イギリス作品となっている。監督はブラジルのウォルター・サレスだが舞台となるのはポルトガル語圏のブラジルではなく、スペイン語圏のアルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア・・・
国籍のよくわからん映画だ。
やっぱ制作形態で面白さを感じるのは、アメリカの毛嫌いする国トップ3に軽く入るであろうキューバの、革命の英雄を題材にしていながら、アメリカが制作に絡んでおり、アカデミー賞でも歌曲賞を受賞した他、脚本賞でも候補になっているところ。
圧政に苦しむ人々を救いたい一心で故国ではなくキューバの革命に参加したゲバラ。当時の南米の圧政者といえば例外なくアメリカやアメリカ企業を後ろ盾にしており、革命闘争とは反米戦争に他ならない。反米の旗印ともいえるゲバラを描く上では、反米プロパガンダ映画とするのは容易だしゲバラという題材自体にそのような響きがある。(そういえば昔オリバー・ストーンがゲバラの伝記映画を企画していたような記憶がある。うろ覚えだが。もし彼が撮ったら間違いなく反米映画にしただろう)もちろんそんな映画ならアメリカの会社が出資するはずもない。そこで政治臭を極限まで押さえ込んだ青春ロードムービーの体裁を保たせ、青春映画としてもロードムービーとしても出色のできとした。
レッドフォードが持ち込んだ企画ということで、彼の出世作「明日に向かって撃て」などアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせもするが、レッドフォードも実は結構「社会派」なやつで「大統領の陰謀」や「候補者ビル・マッケイ」(←結構好きな映画)といった社会派映画に出演もし、「クイズ・ショウ」(←これも大好きな映画さ)を監督していたりもする。そんなリベラル野郎にとってキューバ革命の英雄を題材にした映画を作ることはブッシュ政権へのあてつけのような意味もあったのかもしれない。
ま、そんな政治的な話とは概ね無関係に気ままなラテン男二人を乗せたオンボロバイク「ポデローサ号」は南米大陸を疾走していくのたが、それでも生活のため鉱山労働を余儀なくされる夫婦を始め、貧しい人々のスナップ写真のようなショットの挿入は、無言の演説ともいえる強いメッセージに満ちている。
極めてオーソドックスなロード・ムービーの体裁。二人の男が旅をしていく話。旅の果てに一人は社会の不平等さを知り、自分の成すべきことに気付き始める。国よりも己の恋の方が重要だった男が、国や社会のことを強く意識し始める。ブルジョワな婚約者へのプレゼントのためとっておいた金を、貧しい労働者に渡してしまったことを告げるシーンが印象的だ。旅は確実に彼に影響を与えている。仲良く旅を続けた二人の進むべき道がはっきりと別れるラスト。世渡り上手のアルベルトはきっと無難な人生を送ったのだろう。ラストに登場するアルベルト老人。無名のまま人生を終えようとしている彼の目は何を見ているのか?壮絶な人生を送ったゲバラの伝説の契機ともなった旅。アルベルトなしでは現代南米史は大きく変わっていたかもしれない。歴史に取り残された男に刻まれた深い皺・・・歴史スペクタクル大作ではないけれど、歴史の重みを感じさせる映画だった。でもそんなことより、男二人の若さゆえの、気ままで無謀な冒険旅行の楽しさが一番の魅力だ
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TBありがとうございます。
レッドフォードの最近のインタビューを見てみても
今の政府に対して、批判と危機感をあからさまにしていますね。
モーターサイクル・・は政治的意図にバランスを崩されることなく、
素直に楽しめる映画とし成立していたのは、さすがだと思いました。
Chieee様のブログも拝見しまして、はたと気付いたのですが
>国籍のよくわからん映画だ
とは書いたけど、ゲバラ自身国籍に関係なく革命に身を投じた人だし、既成概念としての「国籍」なんてぶっこわして、ラテンアメリカは一つと捉えることが目的だったのだ・・・と
だとすると、ほんと、上手いことやりおったわい・・・という映画だなぁ
自分でテーマを読み替えてみたら、しっくり落ち着きました。
>上手いことやりおったわい・・・
ほんとそんな感じです。
レッドフォード製作の映画って、ソツなくまとめてきたように思えて
・裏読みもさせるけど
・観客が考えすぎてるだけで、実は裏がなかったりして・・
というスリル?が味わえて、なかなか好きです。
また遊びにきますね~。