個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]
原作のイメージほぼそのままの仕上がりで原作ファン的には十分楽しめました。
もっとも原作イメージまんまっていっても、もともとは和田竜さんが脚本のコンテストに応募して賞とって、でもスケールでかすぎて映画化できないから小説に仕立て直してみたらベストセラーになっちゃって(私も小説の方から入ったくち)、それで映画会社もやる気出して…って紆余曲折の企画でした。
今回の映画の脚本も和田竜さんなのですがこの場合和田竜の仕事は「オリジナル脚本」になるのか「脚色」になるのか?
どう考えても勝てそうにない弱い軍団が、あまりにも頼りなさげな総大将のもと、圧倒的な数と強さを誇る大軍に立ち向かい、そして機転と仁徳をいかして勝ってしまう。強きに媚びず弱きものたちが絆で勝利する、これこそエンターテインメント。
脚色なのか単にカットしたのか、小さなことで小説版で好きだったシーンがなくてがっかりしたのは、ぐっさんが演じた豪気な荒武者の和泉守が、エピローグで実は恐妻家で奥さんに頭が上がらないことが明かされるくだりがないこと。
オープニングの備中高松城攻めのシーン。すっごいモブシーンを期待していたのですが、割とカメラが武将たちに近いというか画が奥行きに乏しい感じがしました。
その後ののぼう様の前で百姓たちが麦踏みしているシーンも原作を読んでいる時はもっと広ーい画を勝手にイメージしていたのですが、スクリーンに映される画の狭さにちょっとかっくり。百姓たちの野良仕事のシーンとかもっと広々とした画で見せてほしい気がしました(後の豊臣軍が田畑を踏み潰しながら攻めてくる場面で百姓たちに感情移入できるように)。
また、のぼう様たちの城にいよいよ豊臣軍が迫ってきたあの場面。やけ酒気味の一同が軍勢の音に気づき外に飛び出すわけですが、スピルバーグだったら音だけでなく視覚化したと思います。ジュラシック・パークでますコップの水にピチョーンと波紋が広がってからティラノの足音が大きくなるやつとか、プライベート・ライアンでドイツ軍を待ち構えていると塹壕の盛り土がぶるぶる震えて崩れ出してから戦車が姿を現すあれとか。
そうしたもろもろに映画として弱い印象は持ちましたが、一方で狙撃用のロングライフル形状の種子島のセッティングを丹念にカット割りながら見せるオタクっぽさは素晴らしいです(多分そういうメカニック描写は犬童さんでなく樋口さんが演出したんでしょうね)。
なんつっても水責めのスペクタクルです。これにつきます。CGだけじゃなくてミニチュアも組み合わせてますよね。円谷特撮の記憶が頭をよぎります。
配役について、小説版を読む限りのぼう様は、ぐずでトロそうなデブの印象。むしろぐっさんあたりがやる方がイメージに近い気がします。野村萬斎はやっぱりどこか雅なオーラをまとっていて何か頼もしい。イメージと違うと思っていたのですが、物語の最重要ポイントとなる、水上田楽のシーンを観た時に、野村萬斎で良かったと思いました。田楽で敵も味方も魅了してしまうあの場面は、彼だからこそ成立するシーンに思えました。
その他成田家の面々はみな非常に良かったです。浩市さん、ぐっさん、成宮くん、奈々ちゃんなどなど。
最後に個人的にイマイチ感強いのは音楽でしょうか。ねらいは判らんでもないですが軽いです。
ストリングスとパーカッション主体で不安感は煽るけれども燃えないです。また映像の変化にあわせて曲がうねることもなく、テレビサイズの音楽という気がしました。
ハンス・ジマーでも雇えれば最高だったんですが、そこは無理でも大島ミチルさんとか岩代太郎さんとかならもっと戦国のヒーローたちの戦いっぷりを燃える音楽で彩ってくれたんではないでしょうか。
********
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
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原作のイメージほぼそのままの仕上がりで原作ファン的には十分楽しめました。
もっとも原作イメージまんまっていっても、もともとは和田竜さんが脚本のコンテストに応募して賞とって、でもスケールでかすぎて映画化できないから小説に仕立て直してみたらベストセラーになっちゃって(私も小説の方から入ったくち)、それで映画会社もやる気出して…って紆余曲折の企画でした。
今回の映画の脚本も和田竜さんなのですがこの場合和田竜の仕事は「オリジナル脚本」になるのか「脚色」になるのか?
どう考えても勝てそうにない弱い軍団が、あまりにも頼りなさげな総大将のもと、圧倒的な数と強さを誇る大軍に立ち向かい、そして機転と仁徳をいかして勝ってしまう。強きに媚びず弱きものたちが絆で勝利する、これこそエンターテインメント。
脚色なのか単にカットしたのか、小さなことで小説版で好きだったシーンがなくてがっかりしたのは、ぐっさんが演じた豪気な荒武者の和泉守が、エピローグで実は恐妻家で奥さんに頭が上がらないことが明かされるくだりがないこと。
オープニングの備中高松城攻めのシーン。すっごいモブシーンを期待していたのですが、割とカメラが武将たちに近いというか画が奥行きに乏しい感じがしました。
その後ののぼう様の前で百姓たちが麦踏みしているシーンも原作を読んでいる時はもっと広ーい画を勝手にイメージしていたのですが、スクリーンに映される画の狭さにちょっとかっくり。百姓たちの野良仕事のシーンとかもっと広々とした画で見せてほしい気がしました(後の豊臣軍が田畑を踏み潰しながら攻めてくる場面で百姓たちに感情移入できるように)。
また、のぼう様たちの城にいよいよ豊臣軍が迫ってきたあの場面。やけ酒気味の一同が軍勢の音に気づき外に飛び出すわけですが、スピルバーグだったら音だけでなく視覚化したと思います。ジュラシック・パークでますコップの水にピチョーンと波紋が広がってからティラノの足音が大きくなるやつとか、プライベート・ライアンでドイツ軍を待ち構えていると塹壕の盛り土がぶるぶる震えて崩れ出してから戦車が姿を現すあれとか。
そうしたもろもろに映画として弱い印象は持ちましたが、一方で狙撃用のロングライフル形状の種子島のセッティングを丹念にカット割りながら見せるオタクっぽさは素晴らしいです(多分そういうメカニック描写は犬童さんでなく樋口さんが演出したんでしょうね)。
なんつっても水責めのスペクタクルです。これにつきます。CGだけじゃなくてミニチュアも組み合わせてますよね。円谷特撮の記憶が頭をよぎります。
配役について、小説版を読む限りのぼう様は、ぐずでトロそうなデブの印象。むしろぐっさんあたりがやる方がイメージに近い気がします。野村萬斎はやっぱりどこか雅なオーラをまとっていて何か頼もしい。イメージと違うと思っていたのですが、物語の最重要ポイントとなる、水上田楽のシーンを観た時に、野村萬斎で良かったと思いました。田楽で敵も味方も魅了してしまうあの場面は、彼だからこそ成立するシーンに思えました。
その他成田家の面々はみな非常に良かったです。浩市さん、ぐっさん、成宮くん、奈々ちゃんなどなど。
最後に個人的にイマイチ感強いのは音楽でしょうか。ねらいは判らんでもないですが軽いです。
ストリングスとパーカッション主体で不安感は煽るけれども燃えないです。また映像の変化にあわせて曲がうねることもなく、テレビサイズの音楽という気がしました。
ハンス・ジマーでも雇えれば最高だったんですが、そこは無理でも大島ミチルさんとか岩代太郎さんとかならもっと戦国のヒーローたちの戦いっぷりを燃える音楽で彩ってくれたんではないでしょうか。
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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
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