個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]
すげー駄作を予想していたら、それほどでもなかったのでなんとなく好印象。
へなちょこスパイのネクラ路線の前2作を全く評価していない自分としては、ミスターネクラなサム・メンデスが監督ときいて、またかよとがっくりしたのであった。
ただし私はメンデスの「レボリューショナリー・ロード」は大好きなので監督嫌いだから期待しなかったわけではございません。ま、でもメンデスの「ロード・トゥ・パーディション」と「ジャーヘッド」はつまんなかったけど。
ハビエル・バルデムの怪演は観てて楽しい。初登場のすごーく広いセットの端から現れて喋りながら近づいてきてとうとうドアップになるまでの長回し。役者と遊ぶ監督の楽しさが感じられていい。
けれども終盤。なぜ悪党はもう少しで目的達成というときに長い演説をぶちたがるのだろう。そのせいでヒーローに負けた悪党がどれほどいることか。
アクションシーンは全般地味な印象あれど、これまでのボンドに比べ格闘スキルが高そうなダニエル・クレイグのキレのよさは渋い男のアクションファンには評価されるだろう。
また、ここのところ(ピアース以降)大ピンチになるたびに通りすがりの誰かに助けてもらう傾向の強かったボンドだが、今回は基本的に自分のピンチは自分の気転とスキルで切り抜けており、前2作とうってかわってボンドが頼もしい(なぜかピンチになるたびドラゴン・タトゥーの女が助けにきてくれないかなぁ・・・と変な妄想してしまうが)。序盤の南国での酒に溺れた自堕落生活ぶりは笑ったが。
以下相当ネタバレゆえ、未見の方は読まないことをお勧めします。
そういえば「カジノ・ロワイヤル」がジェームズ・ボンド・ビギンズ的な物語だったが、今回ようやっとジェームズ・ボンドがあの強い007への成長を遂げた物語という趣。
前2作で出番の無かったQとマネーペニーも登場し、ジュディ・デンチからレイフ・ファインズへのM交代も果たし(エドワード・フォックスなんかが演じてきた旧シリーズのMと似た雰囲気だし)、これで「ドクター・ノー」に話が戻った印象。
おばちゃんイメージのマネーペニーがあんなグラマラスで美人でアクティブな女になっちゃったらもうボンドガールいらねーじゃねーかと不安も抱く。(ちなみに私は旧シリーズでボンドがマネーペニーに気を持たすような言動してからかうお決まり場面が大好きでした)
しかし不思議な007ワールド。
Qが若造だから不安だというボンドの発言はQは老人という前提があるから成立する。つまり旧シリーズでデズモンド・リュウェリンが演じていたQの記憶がダニエル・クレイグボンドにあるってことだ。
その割りにマネーペニーとは初対面。(もっともマネーペニーってのは多分Mの秘書のコードネームなんだろうが)
ところがアストンマーチンの助手席射出の脅しをかけるってことは「ゴールドフィンガー」事件はダニエル・クレイグ・ボンドにもある。
ティモシー・ダルトン時代はボンドとマネーペニーが交代
ピアース・ブロスナン時代はボンドとMとマネーペニーが交代したがQは残留
ダニエル・クレイグ時代はMが残留
という感じでボンド交代時にはかろうじてレギュラーの誰かが残りシリーズの統一性が生まれている007シリーズの、過去作品ありきと新設定がカオスのようにごちゃ混ぜになった世界がなんとなく楽しい。
----
スタッフについて
監督がサム・メンデスだからかシリーズらしからぬ大物スタッフが多い
撮影ロジャー・ディーキンスはコーエン兄弟の映画を撮ってた撮影監督で、クライマックスのスコットランドの荒涼とした画はやっぱりコーエン兄弟の映画っぽかった。
音楽のトーマス・ニューマンは「アメリカン・ビューティ」「ロード・トゥ・パティション」などなどメンデスの相棒みたいな人だからその流れでの起用。「セント・オブ・ウーマン」「ファインディング・ニモ」「ショーシャンクの空に」もやってるのにまだオスカーなしの不運な作曲家。
例によって線の細い曲だが、やっぱりうまい。デビッド・アーノルドとは違った繊細な表現が本作のような心理戦にはあっていた。
********
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
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すげー駄作を予想していたら、それほどでもなかったのでなんとなく好印象。
へなちょこスパイのネクラ路線の前2作を全く評価していない自分としては、ミスターネクラなサム・メンデスが監督ときいて、またかよとがっくりしたのであった。
ただし私はメンデスの「レボリューショナリー・ロード」は大好きなので監督嫌いだから期待しなかったわけではございません。ま、でもメンデスの「ロード・トゥ・パーディション」と「ジャーヘッド」はつまんなかったけど。
ハビエル・バルデムの怪演は観てて楽しい。初登場のすごーく広いセットの端から現れて喋りながら近づいてきてとうとうドアップになるまでの長回し。役者と遊ぶ監督の楽しさが感じられていい。
けれども終盤。なぜ悪党はもう少しで目的達成というときに長い演説をぶちたがるのだろう。そのせいでヒーローに負けた悪党がどれほどいることか。
アクションシーンは全般地味な印象あれど、これまでのボンドに比べ格闘スキルが高そうなダニエル・クレイグのキレのよさは渋い男のアクションファンには評価されるだろう。
また、ここのところ(ピアース以降)大ピンチになるたびに通りすがりの誰かに助けてもらう傾向の強かったボンドだが、今回は基本的に自分のピンチは自分の気転とスキルで切り抜けており、前2作とうってかわってボンドが頼もしい(なぜかピンチになるたびドラゴン・タトゥーの女が助けにきてくれないかなぁ・・・と変な妄想してしまうが)。序盤の南国での酒に溺れた自堕落生活ぶりは笑ったが。
以下相当ネタバレゆえ、未見の方は読まないことをお勧めします。
そういえば「カジノ・ロワイヤル」がジェームズ・ボンド・ビギンズ的な物語だったが、今回ようやっとジェームズ・ボンドがあの強い007への成長を遂げた物語という趣。
前2作で出番の無かったQとマネーペニーも登場し、ジュディ・デンチからレイフ・ファインズへのM交代も果たし(エドワード・フォックスなんかが演じてきた旧シリーズのMと似た雰囲気だし)、これで「ドクター・ノー」に話が戻った印象。
おばちゃんイメージのマネーペニーがあんなグラマラスで美人でアクティブな女になっちゃったらもうボンドガールいらねーじゃねーかと不安も抱く。(ちなみに私は旧シリーズでボンドがマネーペニーに気を持たすような言動してからかうお決まり場面が大好きでした)
しかし不思議な007ワールド。
Qが若造だから不安だというボンドの発言はQは老人という前提があるから成立する。つまり旧シリーズでデズモンド・リュウェリンが演じていたQの記憶がダニエル・クレイグボンドにあるってことだ。
その割りにマネーペニーとは初対面。(もっともマネーペニーってのは多分Mの秘書のコードネームなんだろうが)
ところがアストンマーチンの助手席射出の脅しをかけるってことは「ゴールドフィンガー」事件はダニエル・クレイグ・ボンドにもある。
ティモシー・ダルトン時代はボンドとマネーペニーが交代
ピアース・ブロスナン時代はボンドとMとマネーペニーが交代したがQは残留
ダニエル・クレイグ時代はMが残留
という感じでボンド交代時にはかろうじてレギュラーの誰かが残りシリーズの統一性が生まれている007シリーズの、過去作品ありきと新設定がカオスのようにごちゃ混ぜになった世界がなんとなく楽しい。
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スタッフについて
監督がサム・メンデスだからかシリーズらしからぬ大物スタッフが多い
撮影ロジャー・ディーキンスはコーエン兄弟の映画を撮ってた撮影監督で、クライマックスのスコットランドの荒涼とした画はやっぱりコーエン兄弟の映画っぽかった。
音楽のトーマス・ニューマンは「アメリカン・ビューティ」「ロード・トゥ・パティション」などなどメンデスの相棒みたいな人だからその流れでの起用。「セント・オブ・ウーマン」「ファインディング・ニモ」「ショーシャンクの空に」もやってるのにまだオスカーなしの不運な作曲家。
例によって線の細い曲だが、やっぱりうまい。デビッド・アーノルドとは違った繊細な表現が本作のような心理戦にはあっていた。
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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
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