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アカデミー賞特集・作品賞の行方~監督賞と脚本部門から分析

2022-03-24 08:56:00 | 映画賞
アカデミー賞の時期がきたので、作品賞受賞を過去のデータから予想してみたいと思います。
といっても近年は「例年にないこと」がしょっちゅう起こるので、データをもとになんてあまり意味はないかもしれませんが…

さてとりあえず、作品賞ノミネート作を見てみましょう

|作品賞候補作____|監督|脚本|演技|編集|
|ベルファスト____|〇_|〇_|〇_|X_|
|コーダ_______|X_|〇_|〇_|X_|
|ドントルックアップ_|X_|〇_|X_|〇_|
|ドライブマイカー__|〇_|〇_|X_|X_|
|デューン______|X_|〇_|X_|〇_|
|ドリームプラン___|X_|〇_|〇_|〇_|
|リコリスピザ____|〇_|〇_|X_|X_|
|ナイトメアアリー__|X_|X_|X_|X_|
|パワーオブザドッグ_|〇_|〇_|〇_|〇_|
|ウェストサイドストーリー____|〇_|X_|〇_|X_|

上記は作品賞候補作が、「監督賞」「脚本部門」「演技部門」「編集賞」のそれぞれでノミネートされているかどうかの一覧になります。
なお「脚本部門」とは「オリジナル脚本賞」か「脚色賞」のどちらかのこと
「演技部門」とは男女の主演と助演の4部門のどれかということです。

こう見ると一目瞭然で「パワーオブザドッグ」が最有力と言えます。
作品賞と上記の各賞の連動性について、データをもとに考察してみます。

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【作品賞と監督賞】
一昔前は、作品賞と監督賞はセットで受賞するものと言われていました。たしかに90年代くらいまでは、作品賞と監督賞はほぼ一致していました。しかし2000年代くらいから作品賞と監督賞が一致しない「ねじれ受賞」ケースが多くなりました。
2000年以降で調べると、22回中8回でねじれ受賞が起こっており、しかもここ最近は監督賞にノミネートされずに作品賞を受賞したケースが2回もあります。「アルゴ」と「グリーンブック」です。
もはや、監督賞でノミネートされるかどうかだけをもって作品賞受賞を予想しても信憑性がありません。後述しますが脚本部門と作品賞の場合は、ねじれは6回しかなく、脚本部門の方がバロメーターとして強いくらいです。
とはいえ、作品賞を占う上での非常に重要な部門であることに変わりはありません。
ちなみに、監督賞でノミネートされずに作品賞をとる場合、その原因は演出力とかでなく、その監督が業界から嫌われているからだと、聞いたことがありますが、裏はとれていません。w


ちなみに、どうして作品と監督のねじれが起こるようになったのか…というと、一つは投票権をもつアカデミー会員が増えて多様性が広がったこと、そしてもう一つは2010年代くらいからの作品賞の選定方法の変更があげられます。

過去の作品賞選定方法は、単純に一人一票をもつ会員が一番お気に入りのの作品に票を投じて決めたわけです。で、だいたい一番好きな作品の監督に監督賞では投票するので作品と監督のセット受賞が多かったのです。
現在は監督賞は従来通りの一人一票の単純投票で決めていますが、作品賞は選定方法がちょいと複雑です。
まずノミネート枠が2010年ごろから、5作品から8~10作品に増えました。
会員は候補作に対して、1位から10位までランキングをつけて投票します。
第一回集計では、単純に1位投票の一番多い作品を数えます。それが規定の得票率に達していたらその時点で作品賞が決定します。
ここで規定の得票率に届かない場合…まず全員のランキングリストから、一番不人気な作品を除外します。それによって生じたランキングリストの空欄部分に対して繰り上げを行います。
すると人によっては一番不人気だった作品を1位にしている人もいるわけで、その人の2位作品が1位に浮上してきます。そうして変動の起こった1位獲得数を数えて、ここでも既定の得票率に達しなければ改めて不人気作品(全体では9番目人気だった作品)をリストから除外して繰り上げして…を繰り返します。
なので、恐らく第一回集計で1位の作品が監督賞では票を集めやすく、第二回以降の集計で順位があがるような作品、1位推しは多くなくても、満遍なく2位や3位人気の位置につけている作品が作品賞はとりやすい、ということが起こりうるのです。

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【作品賞と脚本部門】
作品賞と脚本部門は近年非常に連動性が高く、注目しています。
その前にアメリカのアカデミー賞の素晴らしいところは、脚本を、「オリジナル脚本」と「脚色」それぞれで表彰するところですね。言うまでもなく「脚色」とは原作のある脚本のことです。
日本でも脚本と脚色で分けて評価すればいいのに(三谷幸喜さんもよくそんなことを言っています)…と思うのですが、日本の場合メジャー作品だと圧倒的に「脚色」が多いからやりにくいのでしょうね。

さておき、脚本部門と作品賞の相性ですが非常にいいです。
もちろん、話がつまんないのに作品が評価されるはずもないので、この相性の良さは当然っちゃ当然です。

1980年以降で調べると、脚本部門にノミネートされずに作品賞をとったケースはたったの1回しかありません。ちなみにその1回は「タイタニック」です。
2000年以降で調べると作品賞とのねじれ受賞は6回しかなく、ノミネートもされずに受賞したことは1回も無いわけです。

だから、今回の作品賞候補作の内、脚本部門で候補になっていない「ウェストサイドストーリー」と「ナイトメアアリー」の作品賞受賞は無いと見ています。
もっとも、「ウェストサイドストーリー」に関しては、もはや古典と言ってもいい舞台の再映画化なのでいまさら脚色として評価されるものでもないという事情は分かります。

ところで我らが「ドライブマイカー」が脚色賞で候補になっています。作品賞監督賞は難しいにしても脚色賞の目はあるように思います。原作をあんなに膨らませた手腕は評価されてほしいなぁ…と思いますが、脚色賞には「パワーオブザドッグ」も「コーダあいのうた」もあって強敵ぞろいなので簡単にはとれないでしょうね。
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てなところで、今回はここまでとし、次の投稿で作品賞と演技部門、および編集賞との連動性について考察してみたいと思います

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【参考データ】1980年以降の作品賞と監督賞・脚本部門の連動性
◎⇒受賞
〇⇒ノミネート
×⇒ノミネートされず

年   監督 脚本 作品賞受賞作
2021 ◎_ 〇_ ノマドランド
2020 ◎_ ◎_ パラサイト
2019 ×_ ◎_ グリーンブック
2018 ◎_ 〇_ シェイプオブウォーター
2017 〇_ ◎_ ムーンライト
2016 〇_ ◎_ スポットライト
2015 ◎_ ◎_ バードマン
2014 〇_ ◎_ それでも夜は明ける
2013 ×_ ◎_ アルゴ
2012 ◎_ 〇_ アーティスト
2011 ◎_ ◎_ 英国王のスピーチ
2010 ◎_ ◎_ ハートロッカー
2009 ◎_ ◎_ スラムドッグミリオネア
2008 ◎_ ◎_ ノーカントリー
2007 ◎_ ◎_ ディパーテッド
2006 〇_ ◎_ クラッシュ
2005 ◎_ 〇_ ミリオンダラーベイビー
2004 ◎_ ◎_ ロードオブザリング
2003 〇_ 〇_ シカゴ
2002 ◎_ ◎_ ビューティフルマインド
2001 〇_ 〇_ グラディエーター
2000 ◎_ ◎_ アメリカンビューティー
1999 〇_ ◎_ 恋に落ちたシェイクスピア
1998 ◎_ ×_ タイタニック
1997 ◎_ 〇_ イングリッシュペイシェント
1996 ◎_ 〇_ ブレイブハート
1995 ◎_ ◎_ フォレストガンプ
1994 ◎_ ◎_ シンドラーのリスト
1993 ◎_ 〇_ 許されざる者
1992 ◎_ ◎_ 羊たちの沈黙
1991 ◎_ ◎_ ダンスウィズウルブズ
1990 ×_ ◎_ ドライビングミスデイジー
1989 ◎_ ◎_ レインマン
1988 ◎_ ◎_ ラストエンペラー
1987 ◎_ 〇_ プラトーン
1986 ◎_ ◎_ 愛と哀しみの果て
1985 ◎_ ◎_ アマデウス
1984 ◎_ ◎_ 愛と追憶の日々
1983 ◎_ ◎_ ガンジー
1982 ◎_ ◎_ 炎のランナー
1981 ◎_ ◎_ 普通の人々
1980 ◎_ ◎_ クレイマークレイマー


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