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病院で死ぬということ (7日間映画チャレンジバトンの4日目)

2020-05-06 13:52:32 | 過去に観た映画
うえだ城下町映画祭の尾崎さんから頂いた7日間映画チャレンジの4日目は、1990年代映画から、私の一番好きな監督の市川準監督の一番好きな映画で・・・

「病院で死ぬということ」
1993年
市川準監督

一番好きな監督は?と聞かれると、黒澤小津チャップリンヒッチコックベルイマン、あるいはスピルバーグイーストウッドといったレジェンド級の方々が頭をよぎりつつ、結局ある人物に行き着く
それはジョン・ウーじゃなかった、市川準監督だ。

いつだったかフジテレビ特ダネで小倉智昭さんが市川準監督CMのDVDボックスを紹介されていて、その中で市川準監督は劇場映画も監督されていますがやはり市川準監督といえばCMです・・・と言っていた。
それは違うだろうと思った。
小倉さんは好きだし、市川準監督のCMの面白さや功績を否定する気はないけれど、市川準監督の世界はやはり長編映画でこそ真価を発揮するのだと思う。
彼のまったりとした描写は15秒とかせいぜい60秒のCMで味わうことなどできない。

小津映画の影響がよく言われるけど、「東京夜曲」とか「大阪物語」といったタイトルは間違いなく小津を意識しているが、小津の構図命の映像とはまったく質が違うし小津ほど家族へのこだわりもないし、小津よりは俳優を信頼している。
とはいえ、漂う喪失感とか、家族の分解とか小津らしい要素もある。

市川準監督の代表作は「東京夜曲」ではないかと思う。市川映画の集大成的な印象がある。
でも個人的に市川準監督作品で一番好きなのは「病院で死ぬということ」だ。
といってもこの映画、1993年の公開時に劇場で一度観ただけで、以来27年間一度も観ていない。
初見での感動があまりに大きかったのでその思いを大切にしたいと思って、あえて観ないできた。
だけど四半世紀ぶりに再見してもよいかなと思ったのは、長らくソフト化されていなかった「大阪物語」のDVDを勝って再見したら面白かったからで
ところが・・・「病院で死ねということ」は、いまだにブルーレイはおろかDVD化もされていないことが分かった。
中古やレンタル落ちのVHSなら買えないこともない。今時VHSって・・・
念のためアマプラで検索してみたがやはり見つからなかった(「氷点下で生きるということ」みたいな作品が検索に引っかかる)

念のため言うと「病院で死ぬということ」はキネマ旬報ベストテンでは第三位に選出された、市川準映画では高評価された作品だ。

ちなみに
「BU・SU」7位
「つぐみ」9位
「東京兄妹」2位
「東京夜曲」4位
「トキワ荘の青春」7位
「大阪物語」8位

「会社物語」「東京マリーゴールド」「トニー滝谷」「あしたの私のつくり方」はベストテン圏外
何でだよ


なので紹介した割に誰も観れない映画なのである。
本作のみならず市川準作品はソフト化についてはあまり恵まれていない。

市川準映画はカメラは決して近づかず、いつもどこか物陰から盗み見でもしているような雰囲気。
実際はアップショットもまあまああるんだけど、決してモンタージュでエモーション強調するようなつくりにはしない。モンタージュ至上主義の私が言うのもなんだけど。それでも学生時代に市川準ぽい映画を撮ってみたこともあるし、大人になってからもたとえば2013年の「チクタクレス」なんかはだいぶ市川準よりの映画にしたつもりなんだけど(笑
映画の人物たちはそれが映画であることを少しも意識していないかのように、映画という空気を読まずに好き勝手に行動しているように見える。もちろんそんなわけなくて、脚本があって演技をしているわけだけど、要は演出のすばらしさというか、映画というものを空気を切り取るものだと考えているように思える。
だから三谷幸喜が脚本を書いた「竜馬の妻とその夫と愛人」でさえ、あの三谷節が無効化されるような、演出の世界観が脚本より強くなっていた。

「病院で死ぬということ」は、劇映画でありながら観察映画のようにつづられていくことが、市川準映画のなかで一番徹底されていたように思える。
27年前の記憶でしか語れないのがもどかしい
ステイホームに関係なく観れないこのつらさ。
いつか良い画質で観れる日が来ることを願って

※写真は遺作となった「buy a suit スーツを買う」のパンフレットより

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