転生の宴

アヴァロンの鍵対戦会「一番槍選手権」を主催するNishiのブログ。最近はDIVAとDBACのプレイが多めです。

COJショートショート:リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(その1)

2015-01-03 00:35:12 | 創作物(M・o・Aちゃん他)
昨日は夕方から外出。
近所の神社にお参りに行った後は、
そのまま新宿へ向かいました。

COJは新デッキの試運転とカードブーストEX掘りの同時進行でやっていたのですが、
結局PRは無し。
やはり朝得を使わないとまともに引けない感じです。

――

そんな訳でショートショートの投稿です。
今回から新エピソードとなる訳ですが、
一部の読者にとって衝撃的な展開になっていることを予めお詫びしておきます。
どうかご了承下さい。

尚、本作に出てくる設定は筆者独自の考案によるもので、
公式設定とは異なります。
それを踏まえた上でご一読下さい。

◎過去作品

○連載もの

・クエスト・フォー・ザ・ムーン(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7(エピローグ)

・ロボトミー・ソルジャー(全4話)
その1
その2
その3
その4

・メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(全2話)
その1
その2

○その他エピソード

・バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード(連載再開未定)
その1
その2

切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話

エージェント・イン・スイムスーツ
イーリスの物語

<<<リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド その1>>>

作:Nissa(;-;)IKU

新四ツ谷、15時。

丁度小学校の下校時間である。そんな中、愛美はランドセルを背負って駅に向かって歩いていた。

愛美は青いキャスケットにセーラー襟のジャンパー姿で、両脚は濃紺色のタイツに包まれている。その姿は有名な児童文学の主人公、「天鳥 烏兎(あまどり うと)」を思わせた。

彼女は烏兎の大ファンの一人であり、今日も図書室で新刊を借りてきたところである。しかし彼女の心の中では不穏な感情が高まりつつあった。

原因は遠くから聞こえる音声である。駅前で何か演説かデモをやっているのだろうことはすぐに想像できた。しかしそこから感じられるのは不気味な違和感である。

「…を発禁に…」「…さんが犯罪者に…」「…実と空想の区別…」駅に近づく程に声は次第にはっきりと聞き取れるようになった。そして曲がり角を抜けて駅が見えたところで、デモの正体が明らかになった。

「子どもたちを性犯罪から守る会」――威圧的な極太ゴシック体で書かれた横断幕を、主婦と思われる女達が手に持って横並びになって掲げている。彼女らの足元には大型のスピーカーが置かれており、それが「演説」の正体であった。どうやら事前に収録したものを流している様である。

彼女らは「あなたの子どもが性犯罪者に」「天鳥烏兎を発禁に」「天鳥烏兎ギルドは直ちに解散せよ」など、刺激的な文言が書かれた「のぼり」を背負って立っており、その手前では同じ会所属と思われる女がビラを配っている。その冒涜的な光景は、愛美に心臓を貫かれた様な衝撃を与えた。

愛美は逃げる様に駅舎へと向かった。幸いにも女達は彼女の姿――槍玉に挙げられている「烏兎」そっくりなのだ――を特に咎めることなく、デモ行為を続けていた。ふと振り返ると、何人かの若い女達が、配られたビラに目を通している様子だった。

改札を通る前に、愛美は公衆電話の受話器を取った。カードをかざし、番号を入力すると、不在着信の音声案内が流れた。

「もしもし、お兄ちゃん?メグだよ!これから帰るね!夕ごはんもちゃんと作っておくからね!」短いメッセージを入れると、愛美は一息ついた。駅の外ではまだ演説の音声が鳴り響いていた。

――

その頃光平は、廃墟の中で一人の女と対峙していた。

(おい…マジかよ…)光平は女の姿に動揺を隠せずにいた。コルセット風の上着に、腰から下は深いスリットの入ったロングスカート。死神の鎌を思わせる杖は彼女の身長よりも長く、目の部分を覆う仮面は鼻の部分が鈎状に伸びている。その姿は中世ヨーロッパの「魔女」を思わせた。

だが光平を動揺させたのはその姿だけではなかった。ギター型の新型端末――彼専用の特殊装備だ――が映し出す、本部からのデータによると、彼女は3日前の「襲撃」で行方不明になった少女、「鈴森 まりね」であるというのだ。

「ASTのエージェント、『星 光平』だな?」先に口を開いたのは「まりね」であった。「『山城 軍司』は今どこにいる?教えれば…」彼女は威嚇する様に、鎌を光平に向けて突き出した。「今すぐ楽にしてやる」

「綾花さん、これ本当にまりねちゃんなの?」光平は横歩きで牽制しながら、端末を通して本部と通信を試みた。相手の余りにも攻撃的な態度が、彼の知る「まりね」とは全くかけ離れていたからである。

「認めたくないけれど…」彼のイヤホンに少女の声が飛び込んだ。緊急事態の為に臨時の本部オペレータとなった綾花である。「脳波データは完全に一致しているわ」「ということは『ロボット』じゃあ…」「そうね、恐らく何らかの『洗脳』が行われて、それで…」

彼のいう「ロボット」とは、ハッカー組織「リバースデビル」の生体兵器の1つ、「ロボット兵」である。脳を摘出され、遠隔操作で操られる「ロボット兵」は、3日前の「襲撃」でもその力を遺憾なく発揮していた。

もし「まりね」が「ロボット兵」であったならば、直ちに破壊命令が出ていたことだろう。だが本部が彼女の脳波を捉えたことが、判断をより困難なものにしていた

「もし生きて捕らえられれば、洗脳を解いて元のまりねちゃんに戻せるかもしれない。でも…」綾花の返信を待つ暇もなく、光平は駆け出した。「まりね」が仕掛けたからだった。

「ならば貴様を殺し、脳髄を引きずり出して調べ上げるまでだっ!」「まりね」が鎌を振り上げると、背後から次々と援軍が現れた。体高1メートル程度の、小動物や小人を思わせる奇妙な生物――かつて「珍獣」と呼ばれていたものである。

――

「珍獣」――それは旧世紀の政府が広めようとしていたキャラクターコンテンツで、当時の企業や自治体の多くが採用していた「萌えキャラ」からの移行を目的として制定されたものである。

当時流行していたアニメ的な美少女である「萌えキャラ」を、より「健全」で「安全」な「珍獣」キャラに置き換えることで、青少年の精神的成長を支援する――そんな名目で導入された「珍獣」は、国内のデザイナーの大量流出と、海外からの「萌えキャラ」の大量流入を引き起こした。

結局「珍獣」は政府の目的を何一つ達成できないばかりか、国内の文化・経済に大混乱を引き起こし、深い傷を与えただけに終わった。そんな「負の遺産」が反政府組織である「リバースデビル」の兵器として使われるとは、何たる皮肉だろうか。

ブロックパズルを思わせる不格好な兵士が光平に向かって突進して来る。光平はコサックダンサーの如く両足を開いて飛び越した。その跳躍はかつて工場であったと思われる建屋の3階程まで達した。

光平の高い「アルカナ適性」が、この高い跳躍を可能とした。彼らの戦場となっている「アルカナ」は旧世紀に発見された異次元空間で、適性の高い者ならば、その能力は現実世界に比べて数倍に強化されるのだ。

光平は一瞬、遠くに建つ朱色と白の縞模様の煙突を横目で見た。地上に向けて落下を始める中、彼は3日前の出来事を思い出していた――。

<<<その1おわり その2へつづく>>>

――

◎追記

少し遅れましたが、
以前紹介しましたArkitypeさんの新作SSが投稿されていました。

【SS】 月夜の如き少女 part4 ”珍獣の魅惑 前編” 【COJ】
【SS】 月夜の如き少女 part5 ”珍獣の魅惑 後編” 【COJ】
ArKitypeの儲話

こちらも合わせて楽しんでもらえればと思います。

――

◎宣伝

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コメント
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