ドイツ情報機関が警鐘
中国公認ソフトで窃取か
中国当局が指定する税務ソフトウェアを導入したら、いつの間にか情報を抜き取る裏口(バックドア)ができていた-。
中国に進出する企業が、巧妙化するサイバー攻撃の脅威にさらされている。
リスクを承知で成長市場の果実を取りにいくべきか、それとも戦略を見直すべきか、中国と蜜月といわれるドイツも揺れ始めた。
税務管理狙う
「中国に進出したドイツ企業はゴールデンスパイにょってひそかに探られている可能性がある」。
ドイツの情報機関、連邦憲法擁護庁は8月21日、こんな警告を発した。
ゴールデンスパイとは、米国の情報セキュリティー会社、トラストウェーブ社が発見したスパイウェアだ。中国で活動する企業に導入が義務づけられている税務ソフトをインストールすると、このスパイウェアが知らぬ間に入り込み、第三者にシステムを操られてしまう恐れがある。
トラストウェーブ社によると、スパイウェアは税務ソフトを導入して2時間たってから通知もなくインストールされるため、発見するのが難しい。
スパイウェアは2つのプ’ログラムに分かれていて、どちらかを消しても自動的に復活してしまう。
税務ソフトを削除しても、スパイウェアは残るという巧妙さだ。
中国当局公認の税務ソフトを提供するのは、航天信息(アイシノ)と百望雲(バイウァング)という2つの中国企業。
そのいずれのソフトからも同様のスパイウェアが見つかったところに問題の深刻さがある。
独当局が警告したように、中国で活動するすべての企業がゴールデンスパイによる情報窃取リスクにさらされている。
中国政府がどこまで関与しているかは藪の中だ。
ただ、米連邦捜査局(FBI)は今回の問題に関して7月、医療産業や金融機関などに「中国政府からの潜在的な標的活動」に警戒するよう呼びかけた。
在独の米大使館はSNSで「独米はともに中国のサイバースパイ活動に立ち向かう」と踏み込んでいる。
税務ソフトの航天信息が国有の軍系企業、中国航天科工集団(CASIC)傘下であることも不信感を増幅させている。
浮かび上がるのが、成長市場である中国で高まるリスクだ。
これまでドイツや日本などの多くの企業は多少の危うさには目をつむって、巨大市場を奪い合ってきた。
だが、競争と技術の争奪戦が激しくなるなか、リスクが本当に見合ったものなのか、問い直すべき時に差し掛かりつつある。
買収案件を拒否
ドイツ政府は2日い次世代通信規格5Gや衛星、レーダーの技術を持つ独IMSTへの買収案件に拒否権を発動すると決めた。
買収を仕掛けたのは中国の航天工業発展(アドシノ)。
ゴールデンスパイの問題にも登場した軍系企業、CASICの別の子会社だ。
ドイツは2016年に独産業用ロボット大手、クーカが中国企業に買収されたのをきっかけに、優れた技術を持つ企業の買収阻止に本腰を入れ始めた。
相次ぐスパイ活動や一方的な企業買収、中国進出企業への技術移転の強要などが重なり、中国側とは微妙な距離感が生まれつつある。
今後の独中関係の試金石になるのが、中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の5G市場への参入問題だ。
安全性を確保するため、技術的な検査だけでなく、製造業者の信頼性についての政治的な評価を組み合わせる方向で関連法案の議論が進んでいるが、細部が詰まりきっていない。
ファーウェイ排除に慎重とされるメルケル首相らと強硬な外務杳などとの間で、落としどころを探しあぐねている。
*バイデン父子をお金で誑し込んだ習近平がメルケルに何もしていないとは考えにくい*
米政府はファーウェイ製品には情報を抜き取るバックドアが仕組まれていると主張し、同社製品を採用すれば機密情報の共有を制限すると警告してきた。
ほかでもない中国当局公認のソフトからバックドアが見つかったことは、疑惑を否定してきたファーウェイ側にとって逆風となり得る。
(ベルリン=石川潤)