文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

記者会見では意味不明な発言を繰り返し、支持していたのは静岡新聞のみだった。 

2024年10月10日 04時07分06秒 | 全般
以下は、9/26に発売された月刊誌WiLLに、p328から3段組で掲載されている小倉健一イトモス研究所所長の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。

地震・台風に強いリニア中央新幹線
リニアの早期着工が日本を守ることにつながる

お盆休みを直撃 
地上と地下のどちらが安全かー。
議論は昔から続いている。
地下施設が古く、支柱が弱ければ、地下にいるほうが危険なケースもある。
地下では換気や照明、災害時の地上への避難など、特別な注意が必要である。これらは地上施設に比べての短所だ。
しかし、地下には天気の影響を受けにくいことや、地震の揺れが地上より小さいといった長所がある。
電力供給などの災害対策が整っていれば、地下は格段に安全であることがわかっている。
特に地震などの自然災害では、地下施設が避難場所として有効である。 
JR東海が建設を進めているリニア中央新幹線は、ほとんどの区間で地下を走っている。
開業以来、重大な事故を起こしたことのない東海道新幹線であるが、リニアはさらに台風などの災害にも強いことがわかっている。 
気象庁が発表した「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」により、夏休みの一番忙しいお盆期間中、東海道新幹線が減速運転をすることになった。
この情報は、南海トラフ地宸が起きる可能性が高まったときに発表されるもので、今回は8月8日に宮崎県の日向灘沖で地震が起きたことを受けて発表された。
また、今年は台風の影響で大きな被害が出ると予測されたことから、東海道新幹線は8月に計4日の計画運休を行った。
JR東海は「気象予測が刻々と変わり、台風10号の進路から離れた場所で大雨が降る中、計画運休の実施判断は極めて難しかった」(NHK、9月2日)と述べている。 
このような自然災害によって、重要な交通網が長期間止まるリスクが明らかになった。
南海トラフ地震や台風が日本の交通に与える影響が大きく、さらなる対策が必要だと示された。
今回の南海トラフ地震情報や台風による運休をめぐって、多くの人はリニア中央新幹線が必要だと感じたのではないだろうか。
リニアは、沿岸を通る東海道新幹線とは違い、山梨県、長野県、一部の静岡県など、ほとんどの区間で山間部を走ることになる。
リニアが開業すれば、仮に南海トラフ地震が起きて、静岡県で東海道新幹線が止まるような事態になっても、東京、名古屋、大阪を遠回りすることもなく、移動することが可能だ。

地震対策は盤石 
一部のSNSや専門家のなかには、リニアが地中深くを走ることから「地霓に弱い」という誤解がまだ残っているようだ。
この誤解は原発の揺れに関する議論にも似ている。
少し話が逸れるが、今年1月1日に起きた能登半島地震の際、能登にある志賀原発の安全性について議論があったことを思い出してほしい。 
経済産業省の元官僚で反原発を主張する古賀茂明氏は、「原発の耐震基準が一般のハウスメーカーよりも低い」と批判している。
具体的には、志賀原発が地震に脆弱だと指摘している。
しかし、志賀原発は設計上、600ガルの揺れに耐えられるようにつくられており、今回の地震では399ガルを観測した。
さらに、新しい基準では1000ガルに耐えられるように設計されていて、国が現在その基準を審査している最中だ。 
「ガル」といラ単位は地震の強さを表すもので、1ガルは地面が1秒問に1センチメートル動くことを意味する。
ハウスメーカーのなかには、5000ガル以上に耐えた実験を行ったとアピールするところもある。
しかし、このような数値をそのまま比較するのは適切ではない。
古賀氏はこれを知りながら主張しているのだろう。 
わかりやすく説明するために、まず「地面」の話をしよう。
地面には「表層地盤」と「岩盤」がある。
表層地盤は私たちが生活している揺れやすい地面で、岩盤はその下にある固い地層だ。
日本にある原発はすべて岩盤の上に建設されており、これにより地震の揺れが大幅に小さくなる。
例えば、熊本地震(2016年)では、表層地盤で1580ガルが観測されたが、岩盤では237ガルだった。
つまり、表層地盤と岩盤の揺れでは全く揺れの程度が異なり、これらを比べることに意味はないのである。
他にも、地盤の揺れと設備の揺れを混同している人も見受けられた。
地盤の揺れより、その上に建つ設備の揺れの方が大きい「ガル」になるのは自明だ。
そのため、今回、設備の揺れとして計測されたガル数(志賀1号1957ガル、志賀2号、871ガル)を、志賀原発が設計上想定した地盤の揺れのガル数(600ガル)に当てはめても無意味だ。 
こうした原発の地盤の議論を正しく理解できれば、ほとんどの区間で地中を走行するリニア中央新幹線が格段に安全な乗り物だということがわかる。
それだけでなく、そもそもリニアは磁力によりU字型のガイドウェイの中央に常に安定して保持されるため、地震発生時も脱線することはない。
また、構造物も地震に対する十分な対策を織り込んでいる。
加えて、東海道新幹線で使用している早期地震警報システム「テラス」も導入されることから、地震については万全の対策といえよう。

ゼロリスクの呪縛 
地震以外ではどうか。
来年以降、この猛暑による豪雨被害がなくなるとは考えにくく、そのために日本の大動脈である東海道新幹線が止まる可能性を考えれば、さっさとリニアを開業させるべきなのである。
地中を走る限り、台風や豪雨の影響はほとんど受けない。

にもかかわらず、自然破壊だの、水量が減る可能性があるだの、日本の他の土木工事で一度たりとも求められたことのない「ゼロリスク」の実現を、リニアエ事だけは求められ続けてきた。
リニアエ事にゼロリスクを求め続けたのは、静岡県の前県知事、川勝平太氏である。
川勝氏は2021年の知事選挙で、4期目を目指して立候補した際、リニア中央新幹線の地下トンネルエ事によって南アルプスの水資源が失われると虚偽を訴え、「命の水を守る」というミスリードでしかないメッセージを掲げたのだ。 リニア中央新幹線の建設をめぐって、川勝氏は環境保全の問題や残土処分の問題など、議論の範囲を広げるだけ広げるという形で対応してきた。
何かが解決すると、違う論点を出し、それも解決するとまた違う論点へと移っていった。
「ゴールポストを動かす」という批判が巻き起こったのはいうまでもない。 その結果として、静岡工区の着工を認めることはなく、JR東海は2027年に予定していた東京・品川から名古屋までの開業を事実上断念せざるを得なくなった。 

川勝氏はリニアエ事に対して口では推進を唱えることもあったが、実際には一貫して妨害し続けた。
南海トラフ地震の危険が迫るなか、日本の重要な交通網をもう一つ増やすという国家的なプロジェクトを、明確な理由を示さずに妨害してきた。
記者会見では意味不明な発言を繰り返し、支持していたのは静岡新聞のみだった。 
川勝氏は「県庁はシンクタンクです。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノをつくったりということと違って、皆様は頭脳、知性の高い方です」という発言で非難を浴び、最終的には辞職に追い込まれた。
辞職前の記者会見では、「仙人になる」と言い、「私の住まいは信州信濃の山奥、浅間の山の森の中、小鳥とお話しして過ごす」と語ったが、その長野県を地震に強いリニア新幹線が通ることになるのは皮肉な話だ。 
新しく静岡県知事となった鈴木康友氏は、リニアエ事の着工許可に向けて積極的に動いているようだ。
南海トラフ地震のリスクを踏まえ、リニアの早期着工が日本を守ることにつながるという認識を深めてほしい。 
2017年から続いた川勝氏によるリニア妨害のせいで、無駄に7年が経過してしまった。
南海トラフ地震がその間に起きなかったことは幸いだった。

おぐら けんいち
1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。
国会議員秘書を経てプレジデント社に入社、プレジデント編集部配属。
経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長に就任(2020年1月)。
2021年7月に独立。現在に至る。


2024/10/6 in Umeda, Osaka

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