モミジ:太陽が出てきたぞ。今日はいいお天気になりそうだ。
サクラ:モミジさん、オハヨ~。だんだん夜が長くなって、冷え込みも厳しいわね。
モミジ:うん、この寒さが僕を輝かせてくれるんだ。冬になる前のほんのひとときだけど
ね。
サクラ:そうね。ここのところ、あなたの葉っぱがどんどんきれいな色になっていくわ。
モミジ:きれいだろ。僕は秋の主役だからね。
サクラ:あら、私だって1年のうちで一番輝きを増すのは、この時期なのよ。
モミジ:そこが、どうも変なんだよな。サクラが花を咲かせるのは春だぞ。
それなのに、どうして君は今、咲いているんだい?
サクラ:私は「四季桜」。満開になるのは11月上旬から下旬で春には控えめに咲くのよ。
私以外にも「不断桜」「十月桜」「コブク桜」「冬桜」など、春だけではなくて、
秋から冬にかけても花を咲かせる仲間がいるの。
モミジ:へ~ェ、そうなのか。知らなかったな。僕たちがいるこの里山には君の仲間が随
分たくさんいるよね。
サクラ:ええ、1,200本ほどいるわ。村全体では10,000本なの。村人たちがとても大切
にしてくれているのよ。
モミジ:そんなに?だから、秋の主役は僕のはずなのに、ちょっと違うような気がしてた
んだよ。君たちに負けちゃってるのかな。何だか悔しいぞ。
観光客:キレイね~。紅葉と桜のコラボレーションって、他の紅葉名所では、そうそう見ら
れるものじゃないわよね。しかも、この山にはびっくりするくらいたくさんの桜
が咲いていて、雪山かしら?と思うほどよね。その中にある紅葉が、これまた
きれいだこと!お互いが引き立て合って素晴らしいわ~。なんだか夢の中にい
るみたいよ。
サクラ:ネェ、今の声、聞いた?
モミジ:聞いたよ。「お互いに引き立て合って、素晴らしい」って言ったね。
サクラ:私たちは、そういう関係らしいわ。それぞれが主役で、さらにお互いの相乗効果
で人間たちが「夢の中にいるみたい」なんて言ってくれるのよ。
嬉しいじゃないの。
モミジ:そういう事か。君たちと一緒にいられることに感謝すべきだったんだ。
負けちゃってるみたいで悔しいと言ったけど、撤回するよ。
サクラ:そうね、お互いに精一杯輝いて、観光客たちにモミジとサクラの競演を心ゆく
まで楽しんでもらいましょうよ。
(愛知県豊田市小原地区・川見四季桜の里にて)