
七色の虹

これも虹かな(?)
娘:今日、学校で白い虹っていうのがあると聞いたけど、本当なの?
父:「虹」というと紫から赤までの七色をした半円の輪を思い浮かべるけど、自然界には
色のつかない虹もあるんだよ。
「白虹」と呼ばれて、尾瀬などの高山湿原で見られるね。
娘:どうして虹は空だけに現れるの?
父:虹が見えるのは、人が太陽に背を向けたとき、その人の正面のほうに雨などの水滴
が空に浮遊していることが条件だよ。太陽光には様々な色が混ざり合っているの
に、通常それが白く見えるのは光の三原則。
ほら、全部の光が重なると白くなるって学んだよね。ところが、太陽の光が水滴に
あたると、構成しているいろいろな色の光が屈折率に応じて分散するのさ。
それで虹が見えるわけだ。
娘:わかった。水滴がプリズムの役割を果たして光を分散させるのね。
父:そうだ。白虹が見える条件も、自分と太陽と水滴の位置関係でいえば、七色の虹と
同じだよ。七色の虹ではなく、白い虹が見えるのは、その虹をつくりだす水滴が
太陽の光を七色の光に分散させないためなんだ。
娘:どうして分散されないの?
父:虹をつくり出す水滴が、七色の虹ができるときよりも小さくて、光の波長とほぼ同じ
である場合、光はその水滴に対して分散することなく、そのままの白い光で通り抜
けて散乱するんだ。ちなみに光をつくり出す可視光線の波長は、もっとも短い紫が
380ナノメートルから450ナノメートル。もっとも長い赤が620ナノメートルから
750ナノメートルだから、この大きさの水滴だと通り過ぎてしまうんだね。ちなみに、
ナノメートルとは10億分の1メートルのことだよ。
娘:ナノメートルなんて初耳だけど、具体的にはどんな時に白い虹は出やすいの?
父:七色の虹が見えるときの雨粒よりも、もっと小さい水滴が集まると霧になるよね。
つまり、水滴の小さい霧のときに、この白虹が出やすくなるわけだ。
娘:今、思いついたんだけど、白い虹と白い雲は関係あるの?
父:雲が白く見えるのも同じ原理だよ。これらの散乱現象は、ドイツの物理学者グスタフ・
ミー(1869-1957)が研究したことから「ミー散乱」と言われているんだ。
氷の結晶または水滴の大きさが、可視光線の波長と同程度だと、可視光全体が等
しく散乱されることによって白く見えるんだ。
だから、雲は霧の塊と考えれば理解できるかな。
娘:どうして虹はいつも大きな橋のような半円を描いているの?
父:虹は太陽のまわりに丸く作られているんだ。私たちが見ることのできる虹は円の半
分だね。それは、虹が朝や夕方近くにできるからなのさ。朝は太陽が出て、夕方
は太陽が沈んでいくので太陽光が斜めに射すから、僕たちの目には太陽の光が半
分しかとどいていないんだ。虹は太陽が出ている方向の反対側に見ることができ
ると言ったね。実は、虹は円になっていて、輪になっているんだけど地面がじゃ
まをしているんだ。すなわち、虹が半分しか見えないのは地平線があるからなん
だよ。
娘:だから虹はかならず半円でしか見られないのね。
父:いやいや、そうじゃないね。発生条件の難しさからなかなかお目にかかれないけど、
珍しい虹として上空に円形の虹が見られることがあるよ。だから必ず半円とは限
らないんだ。ブロッケン現象といって山の頂上などで見られる虹も丸い虹だね。
娘:丸い虹もあるんだ。もっと珍しい形の虹もあるのかな?
父:あるんだよ。1番目は「2重になっている虹」だ。主虹となる虹にもう一つの虹である副
虹がかかるという一度で二度美味しい虹がある。水滴の中で2回も屈折しているん
だ。副虹は色が薄く全体的に暗めで、主虹と色の順序が逆になっているよ。
二番目に「赤虹」といって、地球にかかる大気の層が、青い光をシャットアウトした
ときに現れる赤い虹だ。主に夕暮れに見られるんだ。
三番目に「幻日」と言って、ダイヤモンドダストに太陽光が反射してできる虹がある。
主に寒い土地のよく晴れた日に見られるね。
四番目に「環水平アーク」と言って、雲が高度約6000mに位置し、太陽の傾きが
58度から68度くらいの時に発生する炎のような虹がある。
五番目は「月虹」だ。月の光で生まれる幻想的な虹で、理想的な発生条件は、暴風
雨が過ぎたあと、満月で雲に遮られていない時にみられるそうだ。
最後は「過剰虹」だ。1つの虹なのに、七色プラスもう一度七色というように虹の繰り
返しができていることがあるんだ。
娘:随分いろいろな形の虹があるのね。知らなかったわ。
父:いずれにしても、虹に出会うとなぜか幸せな気分になるよね。これからもよく観察して
ごらん。
娘:は~い。