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オニオ:おいおい、どうして耳を隠しているんだい?寒いのか?
オニコ:それもあるけど、今日は耳を覆っていたいのよ。
「鬼は~ソト!」って声があちこちから聞こえるのが嫌なの。
オニオ:なんだ、そんなことを気にしてるのか。
オニコ:お兄ちゃんは気にならないの?あんなに私たちを目の敵にして、硬い豆を投げ
つけているのよ。どうして私たちは追い払われなきゃいけないのかな~
オニオ:ウ~ン、よくわかんないね。お父さんに聞いてみようか。
ねえ、お父さん、どうして人間達は今日、「鬼は~ソト~」って豆を投げるの?
オニ父:そうだな~、私達にとって今日は厄日だよな。説明するのが難しいけど、こう
いうことじゃないかと思ってるんだ。君達も何か嫌なことや、うまくいかない
ことがあると、誰かのせいにした覚えはないかい?
オニオ:そういえば、思い当たるよ。
オニ父:だろう?そいつがいるから、いけないんだ。そいつがいなくなれば嫌な事は起き
ないで、平穏に過ごせるのに・・・と思ったことがあるはずだ。
オニコ:あるある、私もそう思ったことがあるわ。
オニ父:人間だって、自分達の家に不幸や不運を入れたくないし、もしも、すでに家の中
にそういうものが入り込んでいるとしたら、追い出したいはずさ。苦の種を
「鬼」というものに仮託して、自分達の家から追い出そうとしてるんだよ。
オニコ:嫌なものを追い出そうとしたり、入ってこないように願うのはわかるけど、どう
して、それが「鬼」なんだろう?
オニ父:そこのところは謎だな。人間に聞いてみるしかないよ。まあ、人間には人間の考
え方があるし、鬼には鬼の考え方がある。価値観が違う者がすることを、完全
に理解するのは困難だということだな。今日のところは、人間が厄災と考えて
「鬼」と呼ぶものになりきって、硬い豆を受け止めてやろうよ。
この豆は厄災の芽が出ないように炒ってあるようだから、「美味しい食料を手
に入れてラッキー!」くらいに考えたら、気持ちが楽になるさ。
オニオ:そうだね。人間達が鬼をやっつけるつもりで投げた豆を粉々に噛み砕いて、飲み
込んじゃえばいいんだよね。
オニコ:うん、うん、それがいい。この豆、結構美味しいよ。どんどん投げて~。
オニオ:う~ん、ウマイ!!もっと投げていいよ~ ほら、こっちだよ~