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ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

魅了された「通称:モネの池」

2017-09-11 07:24:39 | 日記



岐阜県関市板取にある根道神社境内の池は、フランスの印象画家の巨匠、クロード・モネ
晩年の代表作「睡蓮」の連作に描かれている池と似ていると、3年ほど前からネットで評
判になり、今では観光バスが訪れるほどの名所になっています。こうした話題に敏感な老
夫婦が満を持してやってきました。天気に恵まれたので気合十分です。

妻: やっとここに来られて嬉しいな。ここが「名もなき池、通称:モネの池」として話題
   になっている池ね。見れば一目で納得だわ。きれいさが独特だし、ここで作品が書
   かれたのかなと思わせるぐらいに雰囲気が似ている。
   今日は混むだろうと朝早く来たのに、もう人が並んでいるわ。いいポジションには
   三脚が立ち並んで動かないわね。さあ、挑戦。モネの絵のようなのが撮れるといいな。

夫: 睡蓮やコウホネが浮かぶ池の中を悠々と泳ぎまわる錦鯉。エメラルドグリーンの水は
   非常に綺麗で、優雅に泳ぐ錦鯉がよく映える。写真だと水が写らないから、まるで
   魚が空を飛んでいるかのようだな。確かにモネの「睡蓮」の連作に描かれた池の雰
   囲気を醸し出している。水の透明度が非常に高いのは湧き水が硬水のため、微生物
   が育ちにくいからだと書かれていたけど、そんな環境が偶然に重なってできた、こ
   こでしか実現できないミラクルなのだろうな。
   この神秘的な雰囲気は眺めているだけで心が落ち着く。モネの池に来て良かった。
   ここは生で見たい幻想スポットだよ。

妻: 関市の広報には山からの湧き水が常に池の底を流動しているため、青く透きとおって
   いるのではないかと書かれていたわ。

夫: その理由の方が納得だ。見てごらん。この池の底は白い細かい石がひき詰められてい
   て平たんだね。池の底は天然の白い小石でできているんだよ。普通なら泥が溜まる
   けど、この白い石畳みのような底は、常に新しい水の流れで掃除されているんだ。
   普通の池は表面は入れ替わるけど、底は溜水の場合が多い。でもここは新鮮な湧き
   水で池の底が掃除されているから、高い透明度が維持されているんだろうな。

妻: 湧き水の温度は年間を通して14℃と水温が低いために夏に咲くコウホネが枯れにく
   く、黄色からオレンジ、さらに赤色へと美しい色の変化が楽しめるそうよ。この点
   もここの魅力ね。それに透明度の高い池だから日の当たり方によって、水のブルー
   も濃淡がさまざまに変わり、いつ行っても趣の違う美しさに出会えるのよね。
   この池を見るためだけに、遠くから多くの人々が訪れるというのがうなずけるわ。

夫: その言葉で思い出したけど、印象派の画家とは絵の中に光をどう描写するかを追求
   した人たちで、特にクロード・モネは光の画家という別称があり、時間や季節とと
   もに移り行く光と色彩の変化を生涯にわたり追求した画家なのだ。そのために自宅
   兼アトリエに日本庭園の池を作り睡蓮を植えて「睡蓮」を200点ぐらい連作している。

妻: それでなのかな、いい場所で三脚を立てて長い時間陣取っている人たちは、モネの
   ような作品を撮りたいと、移り行く光と色彩の変化をあそこで追い求めているのね。

夫: 皮肉かい。まぁ、他の人たちのためにも三脚立ちの長居はしてほしくないね。この池
   の見頃は午前10時ごろから11時半ごろまでの午前中のようだから、彼らはそこまで
   頑張るかもしれないね。

二人は「ハートの鯉」「V字の鯉」「ゴールドの鯉」「プラチナの鯉」など、ネットで紹介
されていた錦鯉たちを見つけては、その錦鯉たちの動きとコウホネ・睡蓮の花との対比など、
慎重に構図を探りながら、傑作写真をものにしようとシャッターを切り続けました。

夫: ところで、この池にはモネの絵画に描かれているものとは違うものがあったけど分か
   るかい。

妻: モネの絵の橋は太鼓橋だけど、この池の橋は平たん。それと、モネの絵には錦鯉が描
   かれていないから、池には錦鯉がいなかったと思われる点ね。
   車の中で話したじゃない。

夫: そうだったか。橋の形状が少し違う、いるはずのない錦鯉が泳いでいるくらいじゃ、
   このモネの池の価値は損なわれないんだね。むしろ、超透明度の池の中で錦鯉が空を
   飛んでいるように泳いでいることで、睡蓮だけの池より日本人好みにブラッシュアッ
   プされた「モネの池」になっているから人気が出たのかもしれないな。

妻: この池は昔からあったものだけど、地元でもあまり知られていなかったらしいわ。
   そこへ池の隣接地に花苗の「フラワーパーク板取」を開業した小林さんが地域の人
   と池の周りの雑草を刈り取り、池の底も綺麗にして睡蓮やコウホネを植えたのが始
   まりで、鯉は地元の方や錦鯉振興会から提供されたようね。
   だから根道神社の池を綺麗にしたいとの思いで整備したものなんだけど、多くの偶
   然が積み重なってできたこの景観が「夢を見ているような錯覚にとらわれる神秘的
   な池」として、ネットで取り上げられたという経緯なんだって。

夫: なるほどね。ところで睡蓮が美しいのは6月中旬から1ヵ月ぐらいだな。ちょうどそ
   のころは、ここまで来るのに通ってきた日本の道100選に選ばれた紫陽花ロード、
   そしてこの根道神社にある紫陽花園がきれいだろうから、その時期に再度来たいね。

妻: この辺りは蛍も飛ぶから、一番いい時期かもしれないわね。でも注意点が一つ、雨が
   降ると、池の水が濁ってしまい透明度がダウンしちゃうの。透き通るまでに数日か
   かるらしいから、天気のチェックが必要ね。

夫: この池には大きなモミジの枝が池に張り出しているし、板取周辺にはモミジの名所も
   多いから、これからの紅葉の季節もいいと思うよ。

通称:モネの池はいつまでも眺めていたくなる、本当に幻想的で不思議なところでした。
皆さんも機会があればぜひ訪れてみてください。


<追記>
  書くか、書かないか迷ったのですが・・・・
  地元の方とお話しする機会がありました。
  地元の方いわく「あれ、良い~か?普通だぞ~!」だって。
  ご近所を周ると庭に池があり、錦鯉が泳いでいるご家庭が実に多かったです。
  ここは錦鯉振興会があるぐらいですから、錦鯉の飼育に熱心なところです。錦鯉を見る
  ことは特別なものではないから、モネの池も単に錦鯉が泳いでいるだけの池に見えるの
  でしょう。なぜあの池が注目を集めるのか理解に苦しむようです。