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首都圏に住んでいる高校の同級生3人が古稀を迎えたことを契機に始めた街歩き。
首都圏を中心に歴史探訪・文学散歩を楽しんでいます。今回は草加せんべいで有
名な草加市が舞台です。3人は草加駅の東口にあるおせんべい伝説の「おせんさん
像」の前に集合です。
ヤス:草加市は江戸時代の草加宿がルーツ。日光街道の江戸から二番目の宿場と
して、大川図書が近隣の人々と力を合わせて街道の整備をしたのが始まりで、
やがて幕府公認の日光街道の宿場となり、綾瀬川の舟運を利用した産業を通
して賑わった。開宿400年を迎えて、宿場町や草加松原遊歩道が整備されて
いるので歩こう。
ノブ:この周辺は戦後まで水田地帯だったけど、団地の造成や東武伊勢崎線と営団
地下鉄との相互直通運転で人口が爆発的に増え、都市化したところだよね。
ヒデ:僕は草加せんべいしか知らないけど、そのせんべいは江戸時代の草加宿で売
り出した団子の売れ残りを「おせんさん」が団子を平たく伸ばして、天日干
しにして焼いて売り出したのが起源と書かれている。それが大きな地場産業
となって現在でも草加市の特産品であり続けているなんてすごいことだね。
3人は「今様・草加宿のまちづくり」事業として整備された「草加宿エリア」と
「草加松原エリア」を歩く史跡と文学碑の探訪に向かいました。
ヤス:先ずは草加宿エリアから歩く。最初に案内するのは八幡神社。ここは龍の天
井絵と雌雄一対の大きな獅子頭が有名だから見てくれ。
次は藤城家だ。かつて味噌屋だった豪商の町屋建築で、軒先の出桁造と縦格
子が往時の風格を伝えている。
ノブ:畳敷きの帳場がガラス越しに見えるけど、内部が非公開なのが残念だね。
草加には古い建物は残っていないと聞いていたけど、あることはあるんだな。
ヤス:この辺りが草加宿の真ん中で本陣跡の石碑や道路元標もある。そして、目の
前の建物は埼玉県内初の鉄筋コンクリート校舎だったもので、今は市立歴史
民族資料館になっている。解説員がいるから展示品を紹介してもらおう。
見学を終えた3人は近所のせんべい屋さんで、天日干しをしていると聞いて出かけ
ることにしました。天日干しのせんべいは真っ白でした。
当然、おせんべいを購入しました。
ヒデ:草加市の地場産業は「せんべい」「皮革」「ゆかた染め」と教えてもらった。
せんべいの天日干しを見たから、他の地場産業の現場も見たくなったよ。
ヤス:今回は草加宿に絞るよ。ここが東福寺だ。大川図書の墓がある。本堂・山門
・鐘楼は江戸後期のものだ。特に本堂の彫刻欄間はすごいよ。山門の彫刻や
弘法大師ゆかりの「三鈷の松」なども見どころだ。この松の葉は3本なんだよ。
拾って持っていると縁起がいいと言われている。
ノブ:松の葉は通常2本だよね。確かに3本葉の松は珍しい。拾って持って帰るよ。
ヤス:ここが神明宮で草加宿の鎮守さまだ。隣接する神明庵は安政年間の古い町屋
建築だ。今は観光案内所になっている。そしてここが草加宿の終わりの場所
になる。
草加せんべい発祥の地と書かれた大きな石碑や芭蕉の弟子「曽良」の像がある「お
せん公園」で休憩後、「草加松原エリア」に入りました。宿場町から景色は一変し
ました。
ヤス:ここからは草加松原エリアだ。最初に紹介するのは高さ11mの火の見やぐら
「望楼」だ。五角形が珍しい。中に入って登ると眺望ができるよ。
そして、ここが舟運で栄えた草加宿時代からの荷揚げ場所であった「札場河
岸」だ。船着き場の石段が復元されている。
ノブ:どこの河岸も大正までは発展していたけど、鉄道などの陸上輸送の発達で衰
退し、昭和30年代で姿を消している。我々にとって河岸の賑わいは遠い昔の
話ではないんだよね。
ヤス:草加松原遊歩道を歩こう。ここは江戸時代から千本松原と言われた景勝地だ
った。今は日本の道100選に選ばれた1.5Km・634本の松並木の遊歩道として
整備されている。ここにはこの地を歩いた人たちの石碑がある。先ずはこの
松尾芭蕉像だ。奥の細道で草加宿が最初に宿泊した場所だからだろうね。
顔は名残惜しいのか江戸の方を振り返っている。そして、正岡子規・高浜虚
子の句碑がある。彼らもここにきて草加の地名が入った句を詠んでいる。
ヒデ:ここから松並木の遊歩道が見える。本当にきれいな景色なので歩くのが楽し
みだ。
ヤス:初期の日光街道は千住と越谷間の沼地のために大きく迂回していたんだ。
そこで茅野を開き沼地を埋め立てて真っすぐな新道を開いた。沼地の造成に
沢山の草が用いられたことから草加と呼ばれるようになったそうだ。この遊
歩道には矢立橋、百代橋という大きな和風太鼓橋がシンボルとして架かって
いる。
ノブ:今日は天気が良いから松が映えて、空気までおいしく感じるね。松並木と太
鼓橋はとても良くマッチしている。ところでここにあるモダンな橋は?
ヤス:ハープ橋だ。草加市は毎年国際ハープフェスタを開催し、音楽と文化のまち
づくりをしている。この橋はそのことから名付けられたものだ。欄干にはハ
ープの銅像が18個あるよ。そしてこの遊歩道には奥の細道の旅順路の石碑や
芭蕉の研究もしていた日本文学者のアメリカ人、ドナルド・キーン氏の手植
えの萩などがある。散歩を飽きさせない工夫なんだろうね。
これで今回のせんべいの街・草加案内は終了だ。
ヒデ:ありがとう。草加のことは知らなかったけど、ここを歩いてかなり理解した
よ。江戸から二番目の宿場町として賑わったのだろうね。
ノブ:せんべいの天日干し現場は初めてだった。そして都市化によって古い町屋屋
敷はなくなって、看板やプレート表示だけだと思っていたから、古い建物が
残されていることが嬉しかったね。
3人の学びの心と行動力は衰えを知りません。次回はどんな場所を探して旅をするの
でしょうか。