
長い歴史を持つ企業の多くは企業ミュージアムを開設しています。内容としては自社の製品、
保有技術、専門知識を公開したものと創業者や最高責任者が個人的な趣味から収集した美術、
絵画、骨董を展示したものに大別されるようですが、いずれにせよ企業活動の成果が今の日
本人の生活・文化を創ってきたのは異論のないところです。企業ミュージアムには創業の精
神から創出された製品が展示されており、目指す未来の姿も開示しています。時代ごとの社
会情勢や自己の体験と重ね合わせて見学すると面白いです。
最近、品川区にある「ソニー歴史博物館」が今年12月末で閉館されることを知りました。
これが最後の機会だと懐かしき家電製品を見に、急ぎ品川へ向かいました。物は次いでと申
しますから、品川駅~大崎駅間にある他の企業ミュージアムにも立ち寄ってきました。
1.味の素「食とくらしの小さな博物館」
品川駅から徒歩10分、プリンスホテル高輪の裏側にあります。日本人の食卓を彩ってき
た味の素の100年に渡る歴史と将来に向けた活動が紹介されており、館内は懐かしいCM
映像、歴代の商品、広告物、時代ごとの食卓風景の展示があって楽しいミュージアムです。
味の素の志は「美味しく食べて健康づくり」。エピソードとしてチンドン屋による宣伝
活動で、三郎が鰹節屋の前で「味の素があれば昆布や鰹節はいりません・・・」と大声
を出して、店の主人に怒鳴られ、慌てた三郎は、とっさに「鰹節のだしに「味の素」を
ほんの少し入れるだけでうま味が倍増、鰹節の味が格段に引き立ちます」と切り抜けた
のですが、本当に50年後にうま味の相乗効果が証明されたと書かれていました。
「うま味」とは?の疑問にズバリ答えてくれます。それにしても、大きな企業になった
ものだなと事業領域の裾野の広さに驚きました。
2.物流博物館
(1)から徒歩6分ほどです。開館20周年を迎えます。前身は日本通運本社内の「通運
資料室」で、現在は「利用運送振興会」が運営している。電気・ガス・水道と同じよう
に、私達の暮らしと産業に欠かせない「物流」を江戸時代から昭和までの発達の様子を
パネルで、そして展示物コーナーでは航空、港、鉄道、トラックの各ターミナルの大き
なジオラマ模型があって、物流に関するビデオ、クイズ、ゲームなどを通して、物流の
仕組みを紹介しています。訪問した日の企画展は「トレーラーと牽引車(トラクター)」
でした。写真と解説が充実していて、当時を知る私は見入りました。
3.ソニー歴史博物館
(2)から徒歩5分ほどです。やはりソニーの展示品は魅力的でした。1946年に20名
でスタートし、いかにして世界のトップ企業に成長できたのか。「人のやらないこと
をやる」ソニー精神が生み出した歴代製品250点。ウォークマン一号機などの懐かしい
姿やおひつの内部に電線を張り巡らしたような炊飯器の試作品一号機の失敗作など、
くすっと笑ってしまう展示品もある。設立趣意書や源流となった創業時の製品にも目
がいったが、何と言っても、カセットレコーダーだ。初めてレコーダーから流れてく
る自分の声が分からずに、思わず「誰がしゃべっているの?」と友人に聞いたことを
思い出しました。今後は本社ビルで展示されるそうだが、どのようにリニューアルさ
れるのか楽しみだ。ここに来られて良かった。
4.容器文化ミュージアム
(3)から歩いて10分ほどです。東洋製罐の展示場で容器包装の文化を発信する場と
して開設された。巨大なジュース缶やシャンプー容器をかたどったパネルがとても楽
しい。実際に触りながら、容器の製造方法や役割、容器の歴史やリサイクルの方法を
知ることができる。入口にあ る100年以上前の「自動製缶機」は圧巻だ。昭和の末
まで現役でした。これにより、製缶工程が半田ごての手作業から脱却し、缶詰製造業
が大いに発展しました。缶、びん、ペットボトルなど、私達の周りにある容器につい
て、見方が変わるかもしれません。
紹介した企業ミュージアムは品川~大崎間の短い距離(約2.5㎞)でめぐることができます。
興味を持った方は是非お立ち寄りください。