しっとり柔らかくて噛めば噛むほど甘さの増す干し芋は、安心して食べられる
懐かしい感覚のお菓子であり、その甘さからスイーツでもありますね。私は干
し芋の食感が好きです。実は干し芋は茨城県を代表する特産品で、何と全国で
のシェアが9割を誇ります。中でも特に盛んなのはひたちなか市で、始まった
のは明治時代後期といわれています。さつまいもの生育に適した土壌や、冬場
に雨が少なく海風の吹く気候風土が乾燥の工程に向いていたことなどから、全
国に誇れる特産品へと発展しました。おいしくて栄養価も高い、自然の恵みが
いっぱいの干し芋を紹介します!
<干し芋生産がひたちなか市を中心に定着した理由>
江戸時代の文政年間に静岡県御前崎で干し芋づくりが誕生しました。それが明治
時代に茨城県に伝わり、特に那珂湊(現ひたちなか市)で盛んになり、今でも生
産が盛んな地域として続いているのです。発祥地の静岡県ではなく、茨城県が特
産の地になった理由ですが、①静岡県は「お茶」や「メロン」など、他の農産物
に主流が移った。②水はけのよい土壌が、さつまいもの生育に向いていた。③那
珂湊は、冬場に海から吹く冷たい風も適しており、冬場の漁師の副業(魚を乾す
網棚が使えた)として広がったというのが定説です。
<愛情が込められた干し芋づくり>
(1)おひさまの恵み:厳選されたさつまいもをふっくらと蒸して、乾燥。この工程にも
長い年月をかけて積み重ねられた職人の技と、お日さまの愛情がつまっています。
(2)プロの技:干し芋は「蒸す」「切る」「乾燥させる」という、いたってシンプルな加
工法だからこそ、ごまかしがきかず、どの工程にもプロの熟練の技が必要です。
(3)自然な甘味:干し芋のおいしさは、自然な甘さがポイント。さつまいもに多く含ま
れるデンプンは、熱を加えると甘みが倍増。さつまいもを蒸してつくる干し芋の甘
さは、自然がつくった甘味そのものです。
(4)安心・安全:干し芋には、ビタミンB1、ビタミンC、カリウムなどの成分がたくさ
ん。しかも自然のままのさつまいもを使用し、乾燥させているので、子供からお年
寄りまで安心して食べられます。
<30年ほど前までは、現在よりも乾燥度合いが強く、もっと固かった>
昔は「味気なくて硬い」食べ物でした。それが現在のように「天然のスイーツ」と
言っても過言ではない程、柔らかく、美味しさも格段に向上したのには理由があります。
静岡で生産方法が確立した明治時代の干し芋は「軍人イモ」と呼ばれ、戦時下の携
帯保存食でした。生産拠点が茨城に移っても、ほんの30年前までは乾燥度合いが強く、
固くなるまで天日干しされていました。子供の頃はこれを食べていましたから、良い
イメージはなかったですね。当時はまだ保存に重点が置かれていたからでしょう。
今のようなしっとりとした干し芋は、干し芋が保存食よりも嗜好品として受け入れら
れるようになってきた時代の流れがあります。
<干し芋の種類>
「平干し 干し芋」
干し芋の定番といえばさつまいもをスライスした平干し。手のひらくらいの大きさの
ものが見栄えが良く人気ですが、糖化が進みやすいのは、実はこぶりな端っこの方だ
ったりします。ちなみに、白い粉がふいているのは糖分が表面に浮き出て結晶化した
もの。甘く美味しいほしいもの証です!平干しは扱いやすく、長期保存するための冷
凍保存にも適しています。また、食べやすいことからも人気です。ストーブの上やオ
ーブントースターでちょっと加熱するとグッと甘みが増して美味しくなります。
「丸干し 干し芋」
干し芋大国の茨城県ならではのご当地干し芋と言えば、蒸した原料芋を丸々干した丸
ほしいもです。平干しに比べ厚い分、乾燥にかかる期間が2倍~3倍のため生産量は極
めて少なく、希少で高級です。でも、その手間がかかる分、とびっきりの甘さと柔ら
かさを楽しめます。特に水分量の多い内側はねっとりとした独特の食感が楽しめます。
平干しいもよりもさつまいもの風味をより味わえると、干し芋好きには人気です。
<三ツ星生産者>
干し芋の生産農家や集荷販売業者、農業関係機関から構成される「ひたちなか・東海
・那珂ほしいも協議会」では、消費者に信頼されるほしいもづくりを目指し、「ほし
いも三ツ星生産者」認証制度を開始。生産履歴の記帳、衛生加工の実践、適正品質表
示の3項目を満たした生産者を審査認定しています。又、品評会を開催し技術の向上に
努めている。品評会は原料であるさつまいもの品種別に最もポピュラーな「玉ゆたか
の部」、小金色に輝く美しい色合いが特徴で近年主流となりつつある「紅はるかの部」、
生産・加工が難しく生産量も少ないことから、幻の品種とも称される、いずみ、シル
クスイート他の「希少品種の部」の3部門からなります。審査基準は「味」「見た目」
「食感」でイベント会場来場者の審査投票で決まります。
これなら、美味しい干し芋ができて“あたりまえ”だなと思いませんか。是非ひたちなか市
の「干し芋」をご賞味あれ!