日本人はイチゴが大好き。なんと生食での消費量は世界一なのです。冬場のビタミ
ン補給として最適なフルーツですね。2020年度のイチゴの国内収穫量ランキングは、
1位栃木県(14.3%)、2位福岡県(10.3%)、3位熊本県(7.7%)で、この上位3県は10年
以上順位固定です。茨城県は7位(5.5%)ですが、県の主要な園芸作物です。鉾田市、
行方市、筑西市などを中心に、県内全域で栽培されており、各地域では市場出荷か
ら直売、摘み取りも積極的に実施しています。イチゴはバラ科の多年草で流通して
いるものは、ほぼオランダイチゴ属です。本来は、多雨湿潤気候の日本ではイチゴ
栽培は向いていないのですが、品種改良とビニールハウスなどの栽培技術が普及し
て、今では全国で栽培されていますね。
<日本のイチゴ市場の変遷史>
日本にも野生の野いちごがあり、昔から食べられてきましたが、現在普及している
イチゴのルーツは18世紀のオランダで生まれた、南米チリ原産種と北米東部原産種
の交雑種です。これが江戸時代末期にオランダから観賞用として伝えられ、「オラ
ンダイチゴ」と呼ばれました。 明治になって改良されたフランス品種が伝わり、こ
れを更に改良して「福羽」が生まれました。日本イチゴの基礎を作った名品種です。
しかし、高級果実として扱われ大衆へは普及しませんでした。戦後になってアメリ
カから導入された「ダナー」品種は、当時としては甘み・酸味・香りがよく調和し
ていて、日持ちや輸送性も高く、長きにわたってイチゴの主流となりました。 大衆
が手ごろな値段でイチゴを食べられるようになったのは、このダナーが普及してか
らなのです。その後、ダナーに続けと、新品種が立て続けに発表され、「幸玉」、
「宝交早生」、「はるのか」などのスターが誕生しました。宝交早生は昭和50年代
にはいちご全体の6割の生産量を占めました。その後、日本イチゴ史にさん然と輝く
2大品種「女峰」、「豊の香」が1980年代半ばに登場しました。食味の良さ、粒の
大きさなどで他の品種を圧倒し、この2品種で全国の生産量の90%を占めるまでに
成長したのです。20年以上にわたってこの2大品種は女王の座にすわり続けました
が、消費量の拡大にともない次々と新しい品種が台頭、今やイチゴの品種は300種
類ほどあります。世界全体の品種の半分以上が日本生まれだという説もあるのです。
<イチゴ栽培の適地としての条件>
イチゴを育てる上で大切なことは、気温と日射量です。どちらもイチゴの株の生育
や収穫量、果実の味に大きな影響を与えるからです。 イチゴの生産量トップ5県の
内、1位の栃木県以外の県は温暖な地域(4位長崎県、5位静岡県)です。その理由
はイチゴを育てる時期が関係しています。一般的にイチゴは9月に苗を植え、11月
から収穫が始まり翌年の6月頃まで収穫します。気温が低い冬の時期に栽培するた
め、ビニールハウスが必須ですし、他にも内張りカーテンによる二重構造、ウォー
ターカーテンの利用、暖房機による加温などが必要です。冬の気温が低い地域では
この暖房コストが大きくなります。そのため、イチゴ栽培をするには温暖な地域の
方が有利なのです。なぜ栃木県が生産量1位なのか?栃木県は温暖な気候ではない
のに、イチゴの生産量で50年以上も1位の座を守り続けています。理由の一つに冬
の日照時間が長いことが挙げられます。栃木県の日照時間は夏よりも冬の方が多く
なるのです。そのため、イチゴの光合成量が大きくなり、果実の品質も収穫量も優
れます。ですから、冬の日照時間が短い日本海側の北陸、東北地方には大きなイチ
ゴ農家はありません。
<イチゴの豆知識>
1.イチゴ表面のツブツブが果実
イチゴの表面にあるツブツブは種ではなく、ひとつひとつが果実です。それぞ
れのツブツブの中に種が入っています。一粒のイチゴは、200個から300個の果
実が集まった「集合果」。私たちが果実だと思って食べている甘い部分は、実
際は茎の先端の花床(かしょう)が膨らんだ偽果(ぎか)です。
2.イチゴの栄養成分は?
イチゴはビタミンCが豊富で、みかんやグレープフルーツの約2倍。ビタミンB
群である葉酸も多く含まれています。また、ポリフェノールの一種であるアン
トシアニンも豊富で、目の働きを高めたり、眼精疲労を予防したりする効果も
期待できます。
3.イチゴの甘い部分はどこ?
イチゴは先端部から熟していくため、ヘタの部分よりも先端のほうに糖が多く
蓄積しています。ヘタよりも中央、中央よりも先端が甘いので、ヘタをカット
して中央から食べ始めると、最後により甘く感じられます。
4.イチゴの保存方法
①生で食べるとき:パックから出し、重ならないようにポリエチレン袋などに
入れて、冷蔵庫で保存。水洗いした場合は、カビが生える可能性があるの
で水分を取ってから保冷。
②ジャムにするとき:いったん冷凍するのがおすすめ。生のいちごを使用する
よりも、なめらかにできあがる。冷凍するときは、いちごを水洗いしてヘ
タをとり、水分も取り除いてフリーザーバッグに入れて冷凍室へ。
<茨城県で栽培されているイチゴの品種>
県内には沢山のいちご狩りスポットやイチゴに関連するイベント開催がありますよ。
(1)「いばらキッス」:平成24年(2012年)に品種登録された茨城生まれのイチ
ゴ。甘さと酸味のバランスが良く、濃厚でジューシーな味わいが特長です。
(2)「とちおとめ」:栃木生まれの定番品種、ここ茨城県でも最も多く栽培され
ており、生産されるイチゴの90%近くを占めます。糖度が高く、ほど良く
酸味がある。
(3)「ひたち姫」:平成20年(2008年)に品種登録された茨城生まれの品種です。
糖度が高く、特に甘く感じられます。ひと粒でも大満足な食べ応えです。
(4)「バインベリー」:とちおとめの完熟収穫にこだわった、JA常陸のブランド
イチゴ。つる(バイン)を付けたまま朝採りで収穫した後に素早く冷却し
ている。
(5)「やよい姫」:平成17年(2005年)に品種登録された群馬県生まれのイチゴ。
果実はオレンジ色がかった赤色。酸味が控えめで、甘みが強いイチゴです。
<茨城県オリジナルのイチゴ「いばらキッス」>
茨城県オリジナルの「いばらキッス」は、果肉がしっかりとした「とちおとめ」
(母親)に、甘くて大きい「レッドパール」と、酸味が少なく柔らかな「章姫」の
掛け合わせ(父親)を交配して誕生しました。開発にあたっては8年という長い歳
月をかけ、様々な交配の組合せから得られた1万種類の株のイチゴを、研究員がひ
とつひとつ色や形、おいしさなどを、全てについて実際に食べながら判定し、選
抜する作業を繰り返しました。
「いばらキッス」の最大の特長は、糖度が高く、酸味とのバランスも良く、食味が
濃厚なところです。さらに、適度な硬さを持ち、ジューシーな食感も特長です。形
はやや長めで、皮は濃い赤色で光沢があります。果肉は赤色です。収量も多く、特
に2Lサイズ(15グラム)以上の大きな果実が多く収穫できます。果実表面は光沢が
強く、濃い赤色で、形状が整っているのも特長です。旬な時期は1月~4月(ピーク
は2月~4月)。収量、食味、形状、輸送性を兼ね備えていることから、栽培してい
る農家が増えています。県内のいちごの摘み取りハウスに入りますと、どこでも
「いばらキッス」を食べることができます。それだけ普及している人気の品種なのです。
<実際に食べた食味>
地元のスーパーで入手したものですが、非常に赤色が濃いです。表面の艶が強く、形
はやや楔形の傾向が見られましたが、全体的には円錐に近い。食べると、果肉は歯触
りがしっかりとありながらとてもジューシーです。確かに糖度は高いですが、甘いだ
けでなく酸味も十分感じられ、全体としてバランスがとても良いと感じました。
<主な産地と生産量>
「いばらキッス」は茨城県内しか生産されていないようです。現在JA北つくば、JA茨城
旭村、JA水戸などを中心に栽培出荷されていますが、今後その生産量が増えてくると思
われます。地元のいばらキッスブランド研究会では、100個に1~2個しか採れない果形
の美しい30グラム以上の大粒を揃えた「特選いばらきキッス」づくりにも力を入れています。
<中村いちご園のみつばち交配>・・・私はこの園での摘み取り体験者です。
イチゴがきれいな大きな実をつけるためには大切な作業があります。それは花が咲いた
ら行う受粉作業です。確実に受粉ができていないと実ができなかったりいびつな形のイ
チゴができたりします。ハウスのなかで栽培しているイチゴには、その自然による受粉
交配はほぼ不可能です。受粉作業を人の代わりにより自然に近い形で行ってくれるのが
ミツバチです。ハウスの中に花から花へみつを吸うためにとびまわることで受粉交配を
行ってくれています。ミツバチは私たちの大切なパートナーです。
東京の方は銀座にある茨城県アンテナショップで購入できます。産地直送ならではの新鮮
でツヤツヤと輝く絶品の「いばらキッス」を是非ご賞味ください!