サバの旬は晩秋〜2月頃といわれ、秋に獲れたサバを「秋鯖」、冬に獲れた鯖を「寒鯖」と呼びます。
サバの旬が秋〜冬になるのは、産卵期を4〜6月に終え、痩せ細ったサバが再び餌をたくさん食べて
脂肪を蓄えるからです。「秋鯖は嫁に食わすな」という言葉がありますが、秋から冬にかけての鯖
は脂肪分が約20%にもなり、非常に美味しい時期を迎えます。でもこれはサバの種類の中の「マサ
バ」の話で、他の種類では旬は異なります。私はサバ類の漁獲量は「茨城県が日本一」だと思い込
んでいました。しかし、直近の2019年の漁獲量は1位が長崎県(15.9%)、2位は茨城県(15.6%)、
そして3位は三重県(11.1%)でした。茨城県は2018年まで、10年以上も漁獲量1位でしたが、わず
かな差でトップを陥落していました。それでも国内では、この3県だけでサバの漁獲量の半分近く
を占める構図は長年変わりません。尚、国別のさば漁獲量世界1位は日本です。そして、2位は中国、
3位はインドネシアでした。
<日本の食卓に上がるサバの種類>
市場に出ているサバ類は主に3種類です。日本の200海里以内で水揚げされる「マサバ」 、「ゴマ
サバ 」、そして主にノルウェイから輸入される「大西洋サバ(ノルウェーサバ)」です。尚、サバ
の漁獲量はマサバとゴマサバが、同時に水揚げされることが多く、まとめてサバ類として表示され
ます。ご承知のように、サバには地域ブランドがありますね。マサバでは豊後水道の関さば・岬さ
ば(はなさば)、三浦市松輪の松輪サバ、そして、ゴマサバでは屋久島の首折れ鯖、土佐清水市の
清水サバなどです。これもサバ市場の特徴ですね。尚、大西洋サバは、80年代頃より日本に出回る
ようになりました。サバの加工品や冷凍食品のほとんどに使われ、現在もっとも多く日本の食卓に
並ぶサバです。その理由ですが、ノルウェーでは厳しい漁獲規制のもと、脂が乗った旬の時期に漁
船ごとに一定量の決められた量しか漁獲できないようになっており、このために常に高い品質が維
持されているからです。回転寿司のさばや、スーパー等で売っている、切り身、また締めさばやフ
ライ物など加工品の多くは、この大西洋サバです。加工された状態で冷凍輸入されていますが、決
して味が落ちることはなく、さらに価格の面からも利用しやすいものです。それに対して、国内漁
獲の場合、獲れるならいつでも獲れるだけ獲るというのに近い状態のため、品質や価格が常に不安
定となりがちです。
<サバの栄養価>
マサバには、EPA・DHAが豊富。青魚の中でも群を抜いて多く含まれています。他にもビタミンA、
ビタミンB2、ビタミンD、鉄、ナイアシンなど健康に役立つ栄養が豊富です。ガンや血栓症、痴呆
症の防止、高血圧や肝臓病などの成人病予防にも効果的と言われています。他にも健康な爪や皮膚
をつくり炎症を防ぐ、骨や歯の発育を促す、口内炎や口角炎を防ぐ、とり目やかすみ目を防ぐとい
われるなど、良いこと尽くめの魚です。
<調理方法>
サバは、マグロやアジと並んで世界的に消費量が多い魚で、焼き魚、煮魚、寿司、しめサバとして
多く食べられています。缶詰めにされることも多い魚です。傷みが早いので生で食べることは少な
いですが、関サバなどのブランドサバで、なおかつ、獲りたて新鮮なものに限っては刺身で食され
ることもあります。マサバとゴマサバではマサバの方が脂が多く旨味も勝るといわれています。
サバは味噌煮や竜田揚げ、などでも食べますね。でも、旬で脂ののったマサバは塩焼きが絶品です。
<サバの豆知識>
(1)日本のサバの用途(2018年)は、大きく分けて生鮮食用向けが12%、食用加工(練り製品、
缶詰)が43%、飼料や魚油向けなどの非食用向けで全体の45%を占めてい ます。大西洋サバ
は99%が店頭に並ぶ食用向けとなっています。
(2)サバで気をつけなくてはならないのは、サバの生き腐れといわれ、体内に強い酵素があって
自家消化が早く、生食すると中毒になる可能性があることです。また、もうひとつ怖いのが
アニサキスと呼ばれる寄生虫がよくつくことですね。アニサキスは、家庭用の冷蔵庫ではダ
メで、マイナス20度以上の冷凍庫で2~3日保管しないことには死滅しないといわれています。
そして、酢締めにしても死なないという強靭な寄生虫です。アニサキスは体長2~3㎝ほどあ
り、白色で少し太い糸のように見えます。白色なので、白身の中では見えにくいですが、目
視で見える大きさです。
(3)保存にも調理にも便利で栄養価も高いサバ缶ですが、独特の臭みが苦手という声も多く聞き
ます。サバは青魚独特の生臭さが特に強く、缶詰になってもその臭いが強烈に残っています。
味噌煮などの味付けサバ缶ではそこまで気になりませんが、シンプルな水煮のサバ缶は生臭
さがダイレクトに感じられてしまいます。このサバの生臭さのほとんどは「トリメチルアミ
ン」という臭み物質によるもので、一般的な腐敗臭とは別のものです。サバに限らず収穫し
た魚は時間が経つと、身の中の細菌が旨味成分である「トリメチルアミンオキサイド」をト
リメチルアミンに変化させていきます。サバはこの変化するスピードが早いため、他の魚に
比べて臭みが強くなってしまうのです。
<茨城沖の漁獲方法>
マサバは1年を通して漁獲できますが、茨城沖では12月から3月下旬が漁期。12月から1月にピ
ークを迎え北海道沖や三陸沖で餌を食べ、脂をたっぷりとため込み、南下してき たところを
漁獲します。サバは鮮度低下が早い魚として知られていますが、漁獲直後から冷海水で一気に
冷やし鮮度良く水揚げします。水揚げ後の市場ではサイズごとに仕分けられ、鮮魚や缶詰、
干物などの加工用として流通します。茨城県内では大津、久慈町、大洗町、波崎の4漁協で主
に水揚げされています。主な漁法は、沖合では「まき網漁業」、沿岸では「定置網漁業」の
2種で漁獲されます。まき網の漁場は八戸から房総海域にかけて、北部太平洋海域の広範囲で
漁獲されますが、常磐沖で獲れるマサバは漁場も近いため、非常に鮮度がよいです。まき網
漁業では、魚群探知機でマサバの群れを探し、長さ1,000m~1,800m程度の網を素早く魚群
を囲むように投網します。通常1船団は網船、魚探船、運搬船に役割分担され、連係プレー
で漁を行います。昔は「サバを読む」という言葉があるくらい獲れましたが、今は漁獲量が
減っています。定置網ではサバ以外にも雑多な魚が漁獲されます。
<サバ漁は知恵比べ>
まき網魚の漁師さんのお話ですが、「水深150~300メートルの海域がサバの通り道。その周
辺をソナーで探索し、魚群を発見したら潮流や魚の進行方向などを計算しながら、素早く網
で魚群を囲い込んで漁獲します。」「複数の船で連携しながら、長さ1キロメートル以上ある
巨大な網を素早く沈めて群れを囲み、数百トンのサバを漁獲するんだ」「この大規模 でダイ
ナミックなところがサバ漁の醍醐味だ」と語っていました。一方、サバ漁には数多くの難し
さがあり、網を投入する際に潮流や魚群の動きを正確に読みとる技術、漁場内に混泳するイ
ワシを避けて旬で市場価値が高いサバだけを漁獲する技術など、様々な技術が求められるそ
うです。これらをこなすためには、最新設備の力だけではなく、長年の経験に基づく「勘」
が不可欠とのこと。なお、相手のサバも年を重ねて成長するほど賢くなり、網の下をくぐり
抜けて逃げるなど、獲りにくく、手強くなるのだそうですよ。
<茨城沖のマサバは旨味あふれる、上質の青魚>
茨城沖のサバは「茨城常磐のマサバ」と呼ばれています。「青魚の王様」と呼ばれるほど栄
養価が高いサバですが、中でも茨城常磐のマサバは絶妙な脂の乗りと身の締りが良く、分厚
い身と質の良さ、豊かな旨味で、市場からの支持は絶大です。小骨が少なく、調理しやすい
のも大きなポイント。みそ煮、しめさば、塩焼き、煮つけ、竜田揚げなど、調理法によって
さまざまな食感と風味を楽しむことができます。一度冷凍したうえでの刺身もお勧めの一品
ですよ。
サバは味のみならず、健康面と金銭面でも優れていますので、コロナ禍での料理への関心の高ま
りと共に人気が高まり、ちょっとした「サバブーム」になっているようです。皆さ んも日々の生
活で生じる悩みやストレスを解消するためにも、食事面からの健康改善に意識を向けてみましょう。
その時は、絶妙な脂の乗りと身の締りが良い、茨城常磐の「マサバ」をご賞味くださいね。