ピザやパスタの上に乗っている色鮮やかなハーブが「ルッコラ」です。イタリア語名の「ルッコラ」
はアブラナ科の一年草で、主にサラダやイタリア料理などに使用されています。葉はやわらかく生の
まま食べられ、ゴマのような香りとかすかにピリッとした辛味を持つのが特徴です。英名では葉が直
立している姿から「ロケット」と呼ばれます。日本では春の七草の「キバナスズシロ」のことです。
日本での名は葉っぱが大根と似ていることからきています。大根の古名は、「スズシロ」ですね。
西洋にも春の七草というのがあって、ルッコラはその一つです。ルッコラの名は1990年代からのイタ
リアンレストランやピザの普及とともに定着しました。現在、国内で出荷されているルッコラの多く
は水耕栽培ですが、ハウスの露地物も出回っています。露地物は風味が強く、長さも30~40cmと大き
めです。栽培は管理ができていれば、時期を問わず種を蒔けます。でも出荷量の多い食材としての旬
は5~7月と11~12月の2回あります。そして、葉先までピンとして茎がしっかりしたものが市場価値
の高い良品とされています。茨城県の生産量は全国第2位で、主要な県内産地は茨城町、水戸市、笠
間市等です。噛むとゴマのような風味とさわやかな辛味が広がるルッコラ。栽培が比較的簡単なため、
家庭菜園などでもよく育てられているハーブです。葉も花も生食で利用でき、サラダやピザ、パスタ
などに彩を添えてくれます。ぜひ食卓に取り入れたい食材の一つですね。今回は茨城県が誇る露地も
の「ルッコラ」を紹介します。
<ルッコラの生産量ランキング>
国内での生産量は、1位が静岡県(22.0%)、2位茨城県(10.7%)、3位愛知県(9.3%)で、この
3県で全国の1/3を生産しています。(2020年)
<ルッコラと近縁種のセルバチコ>
ルッコラとセルバチコの見た目の違いは葉っぱにあります。ルッコラの方が葉っぱは丸みをおびてい
てふっくらしていますが、セルバチコの葉っぱはギザギザして細いです。
- ルッコラ:炒ったごまに似た香りやピリッとした辛みが特徴のアブラナ科の一年草のハーブです。
葉形は大根に似ており、生葉に辛みと香りを有しています。成熟すると香りが強すぎるので
サラダに利用する場合は若採りします。主な調理法としては、サラダへの利用が一般的です
が、油炒め、お浸し、和え物などにも用いられています。葉を食べるイメージが強いハーブ
ですが、インドでは種子から採った油をピクルスとして使用したり、種子を砕いて作られる
ハーブティーなどとしても利用されています。ルッコラの味わい、ゴマを思わせる独特の風
味が受け入れられています。和名ではキバナスズシロ(黄色い大根の花)の名前が付けられ
ていますが、草丈は20~80cmに生長し、茎の先に淡いクリーム色(黄色ではない)をした
十字の花を咲かせます。中心から紫色のスジが入っているのが特徴です。発芽後2~3週間程
のまだ丸みを帯びた若い葉は「ベビーリーフ」の名で販売され、サラダなどに使われていま
す。
- セルバチコ(ワイルドルッコラ・ワイルドロケット):アブラナ科の植物で、多年草。
実はルッコラの原種で、野生に近い品種です。セルバチコには和名があり、「ロボウガラシ
(路傍芥子)」とも呼ばれます。名前の通り、道端に生えている帰化植物ですが、若採りを
してサラダ用に使用するために栽培もされています。ゴマのような風味と苦味、辛味も強い
です。葉には細かいギザギザがあり、水菜の葉に似た形でやや厚みがあります。形としては、
水菜の方が近いです。おしゃれで独特な葉の形が、皿の中でもしっかりと目立っています。
ルッコラ以上に、さらにゴマを思わせる香り、そしてピリッとした強めの辛みがあり、また、
食べたときに苦みも感じます。植物学上はルッコラが一年草で、セルバチコが多年草の違い
があり別種です。しかし、店頭ではルッコラの一種として販売されていることを見ることが
あります。
<ルッコラの豆知識>
(1)ルッコラに含まれる成分と性質:ルッコラの辛みの元は、わさびや、からし、大根にも含まれる
刺激成分のアリルイソチオシアネートです。栽培方法や土壌によってもその辛みの度合いは
大幅に違ってきます。アリルイソチオシアネートは強い抗酸化力・殺菌力を持っています。
また、栄養価が高い緑黄色野菜でもあり、β-カロティンを初め、ビタミンEやビタミンKを豊
富に含んでいます。特にビタミンCが豊富で、ほうれん草の約2倍も含まれています。多く含
まれている葉の部分には、血液を浄化する働きや、利尿作用、胃のむかつきを抑える作用な
どがあります。さらに、鉄は豊栄養野菜で知られるモロヘイヤと同格に含んでいます。カル
シウム含有量は、ピーマンの約15倍もあります。体を支え、心臓や脳を保護する役割がある
ため欠かせない成分です。また、体の解毒機能を強化するといわれているグルコシノレート
も含んでいます。
(2)ルッコラの選び方:葉の色が濃いものほど風味が強い傾向にあります。また、若く茎が細い葉の
方が風味はソフトです。黄色になったものは鮮度が落ちているものなので、緑又は黄緑色が
鮮やかで、茎葉はシャキッとしているものを選んでください。尚、葉が小さいルッコラは辛
味が少ないので、風味が苦手な人は小さなものを選ぶと良いでしょう。
(3)ルッコラの保存方法:冷蔵庫の野菜室で保存します。日持ちの目安は2日ほど。新聞紙などで包
んでからポリ袋に入れておくと乾燥を防止できます。その際、水で湿らせたキッチンペーパ
ーを切り口に当てておくと、より鮮度を維持できます。ルッコラは生のまま長期に冷凍保存
するのには向いていません。長期保存では必ず加熱処理をしましょう。固めに茹でてしっか
りと水気を切ったら、保存袋に入れて冷凍庫で保存します。
(4)ルッコラの食べ方:
①生のまま:ルッコラは生のままだと少し苦いが、香り豊かな野菜なのでサラダにするのがおす
すめです。ルッコラは生のままで食べられるので、付け合わせや飾りなどのほかサンドイ
ッチに使ってもよいし、肉料理や魚料理の上に乗せれば、彩りもよくなります。
②熱を加える:実は熱を加えても美味しく食べられる野菜です。熱を加える食べ方では、炒め物
に使うとよいです。ほかの野菜と組み合わせて野菜炒めにしたり、肉やソーセージと一緒
に炒めても美味しく食べられます。
(5)ルッコラをサラダにする食べ方
①ルッコラとトマトのサラダ ②玉ねぎとルッコラのオリーブオイル和え
③生ハムとルッコラのサラダ ④カプレーゼのルッコラ乗せ
⑤ルッコラとツナのサラダ ⑥牛肉とルッコラの温サラダ
ルッコラは冷たいサラダに使うのはもちろん、牛肉やホタテなどを組み合わせた温サラダにも
おすすめです。
(6)おかずとしての食べ方
①ルッコラとえびの炒め物 ②豚肉とルッコラの野菜炒め
③人参とルッコラのソテー ④ソーセージとルッコラの炒め物
⑤ルッコラとベーコンのガーリック炒め ⑥帆立とルッコラの炒め物
ルッコラは肉や魚などと相性が良いため、一緒に炒めて味付けをするだけで彩りのよいおかず
が作れます。ガーリックバターやにんにく醤油などガツンとした味わいにすると、ルッコラの
苦みも気にならず食べられます。苦みや香りを楽しみたい場合には、シンプルで優しい味わい
にするのがおすすめです。
(7)主役に使う食べ方
ルッコラはサラダや炒め物するだけでなく、ピザやパスタなどのトッピングに使うのもおすす
めです。食べやすいサイズにカットするか、ちぎったルッコラをできあがったピザやパスタに
乗せて仕上げます。特にペペロンチーノやチーズのたっぷり乗ったパスタ、ピザに乗せると、
爽やかな香りをプラスして食べやすくしてくれます。生のまま乗せるだけなので、手軽に食べ
られるのも嬉しいポイントです。また、ルッコラのシャキシャキ感と、ほどよい苦みが主食に
よいアクセントを加えてくれます。鮮やかな緑色が彩りもよくしてくれるのです。
ルッコラは食べ方がよく分からない人も多いと思いますが、実はサラダや炒め物などいろいろな食べ方
ができるのです。また、ピザやパスタなどの主食にプラスしても美味しく食べられますから、食べたこ
とのない人は、参考にして美味しく味わってみてはいかがでしょうか。
<“食味の主役”ルッコラ>
ハーブ類は今、洋風レストランを中心に業務用需要者にとっては欠かすことができない香辛野菜です。
生鮮のハーブ類が日本でも生産されるようになり、卸売市場の専門仲卸などを通じて末端のレストラン
まで流通する仕組みができて、もう20年以上の歴史があります。ハーブ類の多くは、肉や魚料理の風味
付け、臭い消しなど独自の機能や利用法が決まっています。それはちょうど和食における妻物類と同様
の役割です。それだけに、ある意味、専門性が高い調味料であり、一般にはなかなか普及しなかったこ
とも事実でした。そんなハーブ類のなかで、近年最も成長したのはルッコラです。ルッコラは、かすか
にゴマの香りのするハーブで、どちらかといえば、サラダ用の野菜類の仲間として多用されるようにな
ったのです。また、過去20年で地道に成長してきたサラダ野菜“ベビーリーフ”でも、欠かすことができ
ない“食味の主役”としても認知度が上がってきました。
<露地栽培と水耕栽培>
ルッコラは発芽率が90%以上と高く、また、生育も早く、とても育てやすいです。そして、病気等もほ
とんど無く、種まきの時期をずらせば、ほぼ1年中収穫出来ます。水耕栽培キットも発売されており、
室内で栽培を楽しむこともできます。
(1)露地栽培:苦味や辛味が水耕栽培のものより強め。長さは20~40cmほど。
種まきは、春まきであれば、4月上旬〜7月中旬が適期。秋まきの場合は、9月上旬〜10月下旬
に種まきを行います。春まきの場合は、5月上旬〜8月中旬が収穫時期です。秋まきの場合は
10月〜12月が収穫時期です。草丈が15cmほどに生長すれば収穫です。株ごと引き抜くか、株
元をハサミで切って収穫していきます。外葉から順番に葉だけを収穫する場合は、外葉を切っ
て収穫します。尚、ルッコラ農家が行う露地栽培ではほとんどが、株ごと引き抜いて収穫して
います。ルッコラを長く収穫するためには、花を咲かせないことが大切です。でも、花や蕾も
スープやサラダにして食べることができますよ。しかし、葉だけ収穫したい時は、花芽ができ
たら摘み取って、葉数を増やしていきます。
<県内産のルッコラは露地栽培が主流のようです>
土で育てたルッコラは、後味がさわやかで、味も濃い。ぴりっと際だつ辛みと、ごまに似た力
強い鮮烈な香りが特徴です。このこだわりのため、県内ではハウス栽培や露地栽培の土を使っ
た栽培が盛んのようです。
<農家さんのつぶやき>
ルッコラ農家さんがYouTubeで、「ルッコラは収穫の手間が本当に大変なのだ」とつぶやいて
いました。確かに葉ものですから、機械化は無理、広い畑の中で、丁寧な手作業で収穫してい
ました。栽培が容易なルッコラですが、生産者の立場になると、収穫作業時に隠れた苦労があ
るようです。
(2)水耕栽培:苦味や辛味が露地栽培のものより控えめ。長さは15~20cmほど。
ルッコラは水耕栽培しやすい野菜とされているため、管理自体はとても簡単です。家庭用の水
耕栽培キットも各メーカーから販売されています。注意点は、寒暖差が激しかったり、水が清
潔でないと、美味しいルッコラは育たないということです。家内栽培では昼間は室内の日当た
りの良い窓際などの場所へ置き、夜の窓際は冷え込むので場所を変えてあげると良いです。ま
た、水やりをするときも、なるべく前の水を捨てて新しい水を加えてあげると良いです。
<水耕栽培工場>
水耕栽培には太陽光利用型と人工光利用型とがありますが、人工光型は建設には平均で3億円は
かかるといわれます。それに付随して空調設備の維持費や電気代、水道代などもかかってくる
ので、コストの安い、葉もの野菜だけを生産しているところは苦戦しています。新規参入のベ
ンチャー企業の挑戦はニュースになりますが、なかなか普及はしていません。そんな中、トマ
ト、レタス、ルッコラの栽培は優秀な生産品目になっているようです。
是非、茨城県の露地栽培の「ルッコラ」をご賞味あれ!
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