ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

花は見えぬけれどもあるんだよ

2016-10-10 08:11:42 | 日記


散歩道で熟した実をたくさんつけているイチジクの木を見つけました。イチジクは漢字で
「無花果」と書きますが、その名の通りに枝に花が咲くことはありません。でも花がない
のに実はできるのです。とても変わりモノの果樹ですね。

私が最初にイチジクに関心を持ったのは随分と昔です。独特の食感を持つ美味しさもあり
ますが、童謡詩人・金子みすずの「星とたんぽぽ」の詩の一節にある「見えぬけれどもあ
るんだよ」のフレーズとイチジクの花とが重なるところがあることに気づいてからでした。

    イチジクの花を見たことがない
   いつ、どうやって実をつけるのか
   おいおい、花がなければ受粉はできないじゃないか
   イチジクの花はめにみえぬ  見えぬけれどもあるんだよ
                  見えぬものでもあるんだよ

実はイチジクは実の中に小さな花をつけているので、外からは見えないのです。果実を半分
に割ると赤いつぶつぶがたくさんつまっています。あれが花です。花びらはありません。
私たちは花の部分を食べているのです。あの食感は花の食感なのです。

イチジクはアラビア南部原産で、日本には17世紀に伝えられました。原産地に近いメソポタ
ミアでは6000年以上前から栽培されていて、ヨルダンの新石器時代の遺跡から1万1千年以上
前のものと思われるイチジクが出土し、世界最古の栽培果樹ではないかと記されていました。
そういえば、裸であることに気づいたアダムとイブが体を隠すのに使ったのもいちじくの葉
だったですよね。

イチジクは本当に風変わりな木です。紹介しますと、野生状態のイチジクではイチジクコバチ
と呼ばれる小さなハチが、イチジクのおしりに開いている小さな穴から入り込んで中で卵を産
みます。成長した成虫は体に花粉を付けて外に出てくる。そして、他のイチジクに飛んで行き
産卵する。この時に、花粉を付けるので受粉できるのです。
でも実態はもっと複雑です。イチジクにはオスの木とメスの木があります。花粉を運んでいる
のはメスのイチジクコバチです。オスの木になるのがオスの実、メスの木になるのがメスの実
です。この2つの実は外見からは区別がつきません。オスの実で花粉を付けたメスバチがメス
の実に入ると、花粉が雌花に付き受粉されます。しかし、そのメスバチがメスの実に入ると雌
花が邪魔になって卵を産むことが出来ずにそのまま死んでしまいます。一方、花粉を付けたメ
スバチがオスの実に入ると、今度はイチジクには受粉できませんが、メスバチは無事に卵を産
むことができます。メスバチがオスの木、メスの木のどちらの実に入るかは半々だそうです。
オスバチはどうしているのでしょうか。オスバチはオスの実の中で一緒に生まれて、交尾をし
たメスを実の外に出すために力を使い果たして実の中で死んでしまうそうです。このように、
イチジクとイチジクコバチは遥か昔から、両方が生き残れるように共に進化してきたのです。
これを共進化と言います。

それでは、日本のイチジクの中にもイチジクコバチがいるのかというといません。その理由は
日本では寒いために生息できないこと、それに日本にあるイチジクの木はイチジクコバチが花
粉を運ばなくても、花粉が付いたのと同じように実がなる性質を持っているメスの木だからで
す。この性質は「単為結果」と言われ、自然界でもバナナやパイナップルなどは種子のない実
をつけることがあります。日本のイチジクは全てメスの木です。そのため品種改良がほとんど
されていないのも特徴です。当然、挿し木で増やします。

イチジクの主な効能効果

1.美肌・便秘解消
   ポリフェノール類を豊富に含むため、活性酸素を抑え細胞の酸化(老化)を防いでくれる
   抗酸化作用が高く、美肌やアンチエイジング食材として人気です。又、ペクチンなどの
   水溶性植物繊維量が多く、腸の善玉菌を活性化して腸内環境を整えてくれます。
2.女性の健康に
   植物性エストロゲンが大量に含まれているので、ホルモンバランスを整えてくれますの
   で、更年期障害や月経トラブルに良いといわれています。
3.栄養補給源に
   イチジクには食物繊維をはじめ、鉄分、カリウム、カルシウムなどミネラル分、ビタミ
   ンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCなどのビタミン類をバランスよく含んでい
   ます。その他にプロテアーゼなどの蛋白分解酵素による食後の胃もたれ予防、そして、
   アミラーゼ・リパーゼなどの消化酵素による糖質や脂質の消化促進の効果があります。
   そして100gのカロリーは54kcalと野菜・果物の中では比較的高めですが、イチジクを
   食べることによりタンパク質の吸収アップや、水溶性食物繊維ペクチンが糖の吸収を抑
   えるので血糖値を穏やかに上昇させる働きもあります。
4.その他
   近年ではガン細胞を麻痺させる可能性があることや果汁から抽出した抗ガン物質「ベス
   トアルデヒド」ががん抑制に効果が期待出来るそうです。もう一つ、昔から、イタリア
   料理などでイチジクが使われていたのは、イチジクのフィシンが肉のタンパク質を溶か
   すので、肉料理が軟らかくなるためだったのです。

日本では当初薬用として栽培されていましたが、生産量が増えるにつけ食用として親しまれる
ようになりました。
イチジクは今が旬です。風変わりな生態を持つイチジクを是非召し上がってください。



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