ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

茨城味自慢:茨城県のオリジナル品種「春まいたけ」をご賞味あれ!

2024-07-01 07:10:51 | 日記

「まいたけ(舞茸)」は通年で購入できるお馴染みのキノコですが、天然物の旬は「秋季」ですよね。
それは正しいのですが、実は収穫の旬が6月中のわずか2週間という「春まいたけ」というのがある
のです。茨城県のオリジナルな舞茸です。「春に舞茸?」詳しいことを知りたいと思いませんか。
実は茨城県林業技術センターが、原木栽培で春まいたけの開発に取り組んだのです。その結果、秋に
発生するまいたけに比べてボリュームがあり、食感が良い、春まいたけの市場化に成功したのです。

現在、通年で皆さんが購入できる舞茸は、オガクズに栄養源を混ぜた培地を使い、冷暖房完備の施設
で栽培された「菌床栽培」が商業ベースで可能になったからです。その一方で、今でも広葉樹の丸太
に菌を繁殖させて林床へ埋め込み、自然の環境下できのこを発生させる「原木栽培」に取り組んでい
る農家さんがいます。原木栽培で作ったまいたけは、菌床栽培のものと比べて味、香り、歯ごたえと
もに天然物に近く、市場で高い人気があります。しかし、県内における原木舞茸の収穫時期が秋の9月
中旬~10月上旬の3週間に集中してしまうという大きな欠点があります。そこで、茨城県林業技術セン
ターでは、毎年春に発生するという野生のまいたけを山野から入手し、菌糸体を分離・培養し、栽培
化に向けた試験を繰り返して実施した結果、5月~6月に毎年まいたけが発生する「春舞茸」という、
とても珍しい性質を持つ舞茸の原木栽培を確立し、市場に出すことができました。まいたけの原木栽
培において、きのこを安定的に春季に収穫できる技術が確立できれば、競争相手のいない時期に全国
でも例のない新たな特産品として大きな期待が持てます。今回はこの「春まいたけ」を紹介します。

<春まいたけ誕生の背景>・・・報告書(2007年)の抜粋

平成15年6月、県北部の久慈郡大子町において、数年来、春にまいたけに似たきのこが発生している
との情報が寄せられ、当センター職員が現地調査をしたところ、このきのこは「まいたけ」であるこ
とが判明しました。

  1. 平成16年にほだ木(培養した原木)を林床に埋め込んだ試験区では、平成17年、18年、19年の
    春に3年続けて春まいたけの発生が認められました。
  2. 追試験において平成17年、18年にほだ木を林床に埋め込んだ別の試験区からも、5月に春まい
    たけの発生が認められました。
  3. 自然環境条件の異なる四箇所(コナラ林、マツ林、スギ林、ヒノキ林)の林床にほだ木を平成
    18年に埋め込んだすべての試験区から、次の5月に春まいたけの発生が認められました。
  4. 春まいたけの発生時期は、5月中旬~6月上旬を主としますが、一部は秋の9月中旬~10月上旬
    にも発生が認められました。
  5. 上記1、2、3、と同じ時期に、同じ林床に市販品種の菌を培養したほだ木を埋め込んだ試験区
    からは、秋の9月中旬~10月上旬に秋まいたけの発生がみられましたが、春季のきのこの発生
    はこれまでに一度も認められません。

 今後は「一部秋の発生」を完全に抑え、実用性を十分に確認したうえで、早期に現地普及に移し
 たいとこの報告書では結んでいます。現在はこの報告書が出てから17年が経過しています。

<まいたけが一般家庭に普及したのは「雪国まいたけ(株)」さんのおかげ>

日本には3,000~4,000種のきのこがありますが、そのうち食用になるのは、その1割の約300種。
さらにその中でも一般の生活者が買える食品として市場に出まわっているのは、わずか15種類ほ
どしかありません。その中でまいたけは新参者の部類に含まれます。八百屋やスーパーで売られ、
一般家庭の食卓に上るようになったのは、せいぜい30年ほど前から。確かに、私が子供の頃には
ありませんでした。

まいたけは「一種の薬」そして「高級食材」として扱われ、なんと「幻のキノコ」とまでいわれ、
今の「金」並みに高値で取引されていた時代もあったのです。このまいたけを1982年に創業した
「雪国まいたけ(株)」さんが、菌床栽培で育つ環境を再現することに成功して、大量育成が可
能になり、通年で安価に購入できるようになったのです!

<まいたけの生産量ランキング>

1位新潟県32,505t(65.4%)、2位静岡県5,180t(10.4%)、3位長野2,620t(5.3%)・・・
7位が茨城県241t(0.5%)です。(2020年)

キノコの二大ガリバー企業、新潟県の「雪国まいたけ」、長野県の「ホクト」の存在が大きい。
現在、滋賀県のタカラバイオが第3勢力として注目されています。

<まいたけの豆知識>

1.「まいたけ」とは:主に東北地方の深山の老木の根ぎわに生えるサルノコシカケ科のきのこで、
  いくつものカサが折り重なってできています。中には20キロや30キロの大きさに育つものもあ
  ります。山奥に生える一種の薬として珍重され、今では想像もできないほどの高値で取引され
  た過去があります。

2.茶碗蒸しにまいたけはNG!:茶碗蒸しにまいたけを入れてしまうと、茶碗蒸しが固まらなくな
  ります。プロアテーゼという「タンパク質分解酵素」が卵のタンパク質が加熱すると固まるとい
  う性質を壊してしまうのです。茶碗蒸しにまいたけを入れたい方は、茹でてから茶碗蒸しに入れ
  ましょう。この酵素の特徴を生かしてまいたけにつけこんだ肉は柔らかくなることも実証されて
  います。

3.選び方;カサの色が濃い茶褐色で、パリッとしていて肉厚なものが良品です。鮮度が落ちると
  カサが湿ったようにしなびてきます。軸は白くて張りがあり、かためのものを選びましょう。

4.保存方法:ラップに包んで冷蔵庫で保存し、なるべく3-4日で使い切るように心掛けましょう。
  また、水気がついていると傷みやすいので要注意です。冷凍する場合は、石づきを切り落とし
  小房に分け、袋に入れて冷凍庫へ(約1ヶ月保存可能)。使う時は、自然解凍、または炒め物
  にはそのまま調理することもできます。天日干しし、乾燥させたものは常温保存も可能です。
  まいたけは、冷凍することで旨味成分と栄養が増量します。冷凍して食べなきゃもったいない
  くらい冷凍向きなのです。

5.栄養と効用:
  ①ダイエットに役立つ:まいたけには「βグルカン」と呼ばれる不溶性食物繊維「βグルカン」
    が腸内環境を整えます。低カロリーで満足感が得られます。
  ②骨を丈夫にする:エルゴステロールがビタミンDを作ります。ビタミンDは、カルシウムの代
    謝をサポートし体内で骨や歯を作る働きをします。
  ③免疫力を上げる:まいたけ特有の成分「MD-フラクション」がNK細胞を活性化させて免疫力
    を高めます。細菌やウイルスに対する抵抗力が高くなります。
  ④肌荒れを予防する:「ナイアシン」と「ビタミンB」がたんぱく質や炭水化物、脂質などの代
    謝をサポートするので、皮膚や粘膜をきれいに保つ効果があります。
  ⑤脂肪を減少させる:「キノコキトサン」が体内の中性脂肪を減少させてくれます。また、
    「MX-フラクション」が基礎代謝をアップさせて筋肉質の体にしてくれます。

6.まいたけの食べ方:
  ①栄養素の流出を防ぐため水洗いはしない:ただし、天然のまいたけには土や虫などが付着して
    いる可能性があるため、食べる前に軽く水洗いしてください。
  ②60~70度の加熱で旨味成分が増加する:旨味成分グアニル酸は、60~70度での加熱を続けるこ
    とで増加します。そのため、低温で調理がおすすめです。

7.まいたけを食べる際の注意点
  ①生のまいたけを食べると、腹痛や嘔吐など食中毒のような症状を起こしたり、口の中にイガイガ
    感が生じます。必ず加熱してから食べてください。
  ②食べ過ぎは、下痢や腹痛の原因となります。1日のまいたけ摂取量は、30g~50g程度にとどめる
    こと。また、βグルカンは摂取しすぎると過剰な免疫反応が出る可能性があり、注意が必要です。

8.天然マイタケの種類:
   天然のまいたけは、ミズナラ、コナラ、オニグルミなどの大木の根本に発生します。種類は色で
   分けられ、シロフ→トラフ→クロフの順に市場価値が高くなります。

 (1)シロフ(白):早出タイプで、9月上旬~9月下旬まで発生。傘から軸にかけて、全体が白いマイ
     タケ。やわらかくてアクが少なく、煮込んでも煮汁が黒くなりません。
 (2)トラフ(茶):中出タイプで、9月中旬前半~10月上旬前半まで。一般的に、マイタケといって
     最初にイメージする人が多いです。傘が茶色くて軸が白い、シャキシャキとした歯応えが特徴
     です。
 (3)クロフ(黒);遅出タイプで、マイタケシーズン最盛期の9月中旬後半~10月上旬後半に発生傘
     も軸も黒い。食感、味、香り、すべてにおいてシロフ、トラフより濃厚で、天然物の中でも希
     少価値が高いです。

  こうした天然のマイタケは、全国各地で9月下旬頃から10月頃に収穫されますが、発生時期が短く流通
  量が少ないため値段も高め。「食べたい」と思ってもすぐに手に入るものではありません。食べられる
  のは菌床栽培や原木栽培の技術が発達したからですね。

<原木栽培は苦戦中>

キノコ類全体に言えることですが、原木栽培が減ってきています。理由は
(1)木を伐ったり移動したりするのが重労働である
(2)きのこが発生するまでの期間が長くかかる、つまり収益化が遅い(1~2年)
(3)大量生産には向かない
(4)原木の入手が昔より難しくなってきている(伐り手がいない)等があげられます。そのため、原木
   栽培から菌床栽培に切り替える農家さんも多いのです。

それでも原木しいたけ栽培の場合ですと、まだ一定数は専業で続けられている農家さんがいて、スーパーなど
でも原木しいたけを見かけることができます。それは原木しいたけはほぼ一年を通して収穫・販売できるとい
う点が大きいのです。一方、まいたけの場合は、原木栽培の収穫時期が1年のうちの約3週間しかないため、収
益化するのが難しく、大変希少な存在となっています。春まいたけへの期待はこの点からも大きいのです。

<通常の秋まいたけの原木栽培手順>

1.原木の調達・・・11~12月頃、木を購入したり自分たちで伐採する

2.原木の殺菌・・・原木を栽培袋に入れ高熱釜で殺菌し無菌状態する

3.植菌・・・舞茸の菌を砕いて原木にふりかける

4.培養・・・施設内に置き、原木の中に菌糸を張り巡らせる

5.伏せ込み・・・6月頃、栽培袋から取り出した原木を畑の中に埋め、保湿のために上に落ち葉をかけておく

6.発生・・・10~11月頃、まいたけが発生する

7.収穫・・・適度な大きさになったら収穫する

原木シイタケはコルクなどの木片に菌糸を張り巡らせた「種コマ」を原木に打ち込むのが一般的で、ホダ木の殺
菌工程はありませんし、多くの場合、培養も露地で行えます。そして、土の中に埋めずに発生させています。
ですから、シイタケやナメコなんかは、原木に菌を植菌するだけでできます。しかし、まいたけの場合は、原木
を煮沸消毒してから菌糸を上から降りかけて植菌するスタイルです。数ヶ月菌を培養する必要があります。まい
たけの方が雑菌や乾燥に弱くデリケートなのです。そして、原木まいたけは1年のうち、約2~3週間の間しか発
生しません。それでも3~5年ぐらいは発生し続けてくれるそうです。値段も菌床栽培された舞茸と比べると10倍
の値段で取引されています。

<春まいたけの現状>

(春まいたけの評判)
  秋に発生するまいたけに比べて、遜色のない姿形であること、柄部が太くてボリュームが多く,傘部が大きく
  ボリュームがあり、食感が良いと評判です。

(春まいたけの普及活動)
  平成20年に大子町で、平成22年に鉾田市で、平成23年には水戸市、常陸太田市、高萩、桜川市で生産者グルー
  プによる試験栽培が始まりました。大子町では,平成21年に初めて春にきのこが収穫できたため,道の駅「奥久慈
  だいご」において,平成21年5月31日に実物とパネル展示、マイタケご飯の試食等のPRを行いました。こうした
  イベントやPR活動は続けられており、県内においては認知度が上がっています。しかし、全国区にはまだほど
  遠いです。

(どこで購入できるのか?)
  1.道の駅「奥久慈だいご」:大子町では、春まいたけの原木栽培、収穫をしています。ここでは実物やパネル
     展示、春まいたけご飯の試食などのPRが行われています。
  2.ふるさと納税サイト:現在は安定供給が可能になり、茨城県高萩市のふるさと納税の返礼品目となっていま
     す。サイトで、原木春まいたけを寄付として選択することで、春まいたけを手に入れることができます。
     申し込みは5月末までで、6月のみの発送です。単位は500g、寄付金額12000円以上。
     (今年は終わってしまいましたね、紹介が遅くなりました。ごめんなさい!)

  うたい文句は「春に原木から栽培して取れる、非常に貴重なまいたけです。香りが強く、食感がしっかりとした、
  とても大きなまいたけになります。火を通しても食感がしっかり残って食べごたえ十分!!シンプルに炒めても
  よし!まいたけご飯にするもよし!」そして、「生産者よりおすすめの食べ方」として、まいたけを油で炒めて、
  醤油と七味をかけて食べるとより一層まいたけのうまみと香りを楽しめます。」と紹介しています。

 3.JAグループの高萩農産物直売所(要問合せ)

 4.今では、茨城県だけではなく、山梨県の丹波山村の丹波山倶楽部でも、春舞茸を栽培していることを知りました。
   ここは原木のきのこ栽培で有名なところです。舞茸は原木を土に埋めています。ですから、ここの舞茸は畑の土
   の中から顔を出すように生えます。まるで、野菜を収穫しているようです。
   (春舞茸の栽培方法も同じなのかは確認していません)

 春舞茸の栽培地域が少し広がっているのかな!でも原木栽培だから限界はあるのでしょうね。

茨城県の貴重な「春まいたけ」を是非ご賞味あれ!

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