すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

自由(バックナンバー)

2006-11-13 21:59:37 | じいとんばあ
       自由

   手も 足も カチカチで
   着替えることさえ ままならなかった
   少しでも動かせば 「痛い痛い」と泣き声で
   触れるだけで 皮膚は今にも破けそうだった

   八十も過ぎてから あなたはあんなに頑張った
   スプーンが持てた ご飯が自分で食べられた
   笑顔が増えた 歌をいっぱい歌ってくれた

   盆や正月に たくさん家族が来てくれると
   「いっぺんに来るなやあ、
   ひとりずつ 毎日来いやあ」と
   笑えるような 泣けるような冗談を言った

   頑張って 頑張って
   とうとうあなたは 
   ひとりで車椅子を動かせるようになった

   自由を手に入れた あなたに
   私たちは 心底感動し
   そして ほんの少し油断をした

   ある日 「じいちゃん」が迎えに来た
   私たちには見えない「じいちゃん」を追いかけて
   あなたは 外へと飛び出した・・・
 
   ごめんね
   痛いことが 何より嫌いだったのに
   「痛いよ、痛いよ」
   耳について 離れない

   あなたは あんなに頑張ったんだもの
   あれ以上頑張れなんて 酷だよね
 
   今 じいちゃんと一緒ですか
   歌をいっぱい歌ってますか
   私たちも頑張るから 
   私たちも
   もっともっと 頑張るから
   許してね
   そして 見守ってね








コメント (3)
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