もう十年以上も前、私がアマチュア演劇に熱中していた頃の話である。両親共に私の芝居は一度も観たことがなかったのだが、この舞台を最後に芝居を辞め、田舎に帰ると決めたこともあり、一度だけ揃って観に来てくれたことがある。
田舎の年寄り二人、私がサポート出来れば良かったのだが、私は朝から搬入、リハーサルと抜けられない為、芝居を観に来てくれる友人二人に両親を預けることにした。
ふたりのボディーガードは優秀で、マンツーマンで腕を組み、迷子にならないようにきちんとサポートしてくれたらしい。お陰で無事観劇も出来、慣れない街で迷子になることもなく充実した一日だったようだ。だから一日面倒を見てくれたふたりに感激したキヨちゃんは、食事をおごりたいと思い、四人でトンカツ屋に入ったのである。そして
「ここは私が払う。これは御礼なんだから、いいのいいの。」
と、遠慮して手を振るふたりを押し戻し、キヨちゃんはレジへと向かったのである。しかし、この一瞬の油断がいけなかったのである。
お会計をとどこおりなく済ませたキヨちゃんは
「どうもごちそうさまでした。」
と店員に深々と頭を下げ、そのまま厨房へと入って行ったのである。もちろん出口を間違えたのだ。
ふたりのボディーガードは、この任務が失敗に終わった事を痛感させられ、がっくりと肩をおとしたのである。許せ・・・友よ。
田舎の年寄り二人、私がサポート出来れば良かったのだが、私は朝から搬入、リハーサルと抜けられない為、芝居を観に来てくれる友人二人に両親を預けることにした。
ふたりのボディーガードは優秀で、マンツーマンで腕を組み、迷子にならないようにきちんとサポートしてくれたらしい。お陰で無事観劇も出来、慣れない街で迷子になることもなく充実した一日だったようだ。だから一日面倒を見てくれたふたりに感激したキヨちゃんは、食事をおごりたいと思い、四人でトンカツ屋に入ったのである。そして
「ここは私が払う。これは御礼なんだから、いいのいいの。」
と、遠慮して手を振るふたりを押し戻し、キヨちゃんはレジへと向かったのである。しかし、この一瞬の油断がいけなかったのである。
お会計をとどこおりなく済ませたキヨちゃんは
「どうもごちそうさまでした。」
と店員に深々と頭を下げ、そのまま厨房へと入って行ったのである。もちろん出口を間違えたのだ。
ふたりのボディーガードは、この任務が失敗に終わった事を痛感させられ、がっくりと肩をおとしたのである。許せ・・・友よ。