むかしむかし、ある田舎に一人の青年がおった。青年は大変な働き者で、朝早くから仕事に出て、帰り道はとっぷりと暮れていることが多かったそうじゃ。
田舎の山道を日暮れに帰るのは、女子供でなくとも心寂しいもので、青年もいつも周りを気にしながら帰っておった。
ある秋の終わり頃、青年はいつものように山道を登っておった。するとどこからか、かすかに線香の臭いと、遠い読経が漂ってきた。
「はて、この辺りに、家があったか?」
薄気味悪くなった青年は、ますます足取りを早めた。しばらく道を行くうちに、はたと線香は匂わなくなった。気づけば読経も聞こえない。
「そうか、風に乗って、遠くの法事の線香が匂ってきたのだろう。」
青年はそう安堵して、また道を急いだ。
しばらくすると、どうじゃろう、今度は何とも甘美な香りが漂ってきたのじゃ。はじめ青年はそれが何か分からなんだ。よくよく考えてみると、それはおしろいの香りじゃった。こんな山の中に、若い女がいるとは不思議な事じゃ。いるとすれば、あの丘の下あたりか・・・。あれこれ想像しながら、青年は落ち葉をかき分けながら、道を匍匐(ほふく)前進 で進んだのじゃった。
どのくらい進んだじゃろう。青年はふと我に返った。辺りには夕闇があるだけで、女の姿はおろか、あのおしろいの香りすらなかった。全身泥と枯れ葉にまみれた自分自身を見て、初めてだまされたと気づいたのじゃ。
「やられた!タヌキめ!」
毒づいてみても、後の祭りじゃったとさ。
以上、またまたタヌキ話です。色や形だけでなく、嗅覚にも訴えるタヌキの技には感服しましたが、私はタヌキの話より何より、なんでじいやん(当時青年)がおしろいの香りがしたからと、匍匐前進せにゃならなんだのか、そっちの方が疑問で疑問で・・・?男ってそんなものなんでしょうか??
ここをクリックしてお立ち寄りください。
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ある秋の終わり頃、青年はいつものように山道を登っておった。するとどこからか、かすかに線香の臭いと、遠い読経が漂ってきた。
「はて、この辺りに、家があったか?」
薄気味悪くなった青年は、ますます足取りを早めた。しばらく道を行くうちに、はたと線香は匂わなくなった。気づけば読経も聞こえない。
「そうか、風に乗って、遠くの法事の線香が匂ってきたのだろう。」
青年はそう安堵して、また道を急いだ。
しばらくすると、どうじゃろう、今度は何とも甘美な香りが漂ってきたのじゃ。はじめ青年はそれが何か分からなんだ。よくよく考えてみると、それはおしろいの香りじゃった。こんな山の中に、若い女がいるとは不思議な事じゃ。いるとすれば、あの丘の下あたりか・・・。あれこれ想像しながら、青年は落ち葉をかき分けながら、道を匍匐(ほふく)前進 で進んだのじゃった。
どのくらい進んだじゃろう。青年はふと我に返った。辺りには夕闇があるだけで、女の姿はおろか、あのおしろいの香りすらなかった。全身泥と枯れ葉にまみれた自分自身を見て、初めてだまされたと気づいたのじゃ。
「やられた!タヌキめ!」
毒づいてみても、後の祭りじゃったとさ。
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