すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

もったいないと惜しくないと

2012-06-23 21:07:21 | うちのキヨちゃん
 もったいない党党首のキヨちゃんは言わずと知れたケチである。しかし、何でもかんでもケチるわけではない。
 今日夕飯の時間に、キヨちゃんが一日の出来事を報告する。
 我が家は集落から少し離れているので、お隣とも少し距離がある。だから、犬の散歩をする人くらいでないと、なかなか立ち話をする人もいない。キヨちゃんが近所に出向いて行くこともあるが、家にいて立ち寄る人は稀だ。
 そんな中、いつもなら車で通り過ぎる近所のおじさんが、車を止めて話しかけてくれた。
 「おお、キヨちゃん、ええ野菜作っとるなあ。」
などと、畑を見ながら褒めてくれた。おじさんはとても野菜つくりが上手だが、最近は猿とイノシシにやられっぱなしである。
 おじさんにはいつも色々お世話になっているキヨちゃん、しかも野菜つくりを褒められて上機嫌になった。ふと先日鮎を沢山貰った事を思い出した。
 「なあ、鮎食べる?」
 「え?鮎ってか??」
 鮎がこの辺りではよく獲れるとは言っても、最近鮎釣りする人もおらず、いただく事は稀である。しかも買うとなると結構なお値段がする。
 「わしゃ、ここ何年も食べとらんぞ。」
 「ほなあげるわ。こないだようけ貰うたんよ。小さいけどすごく美味しいんでよ。」
キヨちゃんはそう言って、親戚にあげる予定の一パックだけ残し、残りを全部あげたのだ。
 「おいおい、こんなにかまんのか?家の分あるんか?」
 「あるある。ほれにようけ食べたんよ。」
 キヨちゃんはそう言ってあげたのだという話を、私にしてから
 「かまんよなあ。」
と同意を求めた。キヨちゃん的には、私がもっと食べたかったのではないかとか、私がお使い物にしたかったのではないか・・・と後から思ったのだろう。
 「ええよええよ、おっちゃん喜んでくれたらほんでええでえ。私も母ちゃんも十分食べたし。」
 そう言うとキヨちゃんも満足そうに頷いた。もったいない党党首、決して意地汚くはないのである。良きかな。

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コメント
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