天竹(てんたけ)の場所は説明しやすい。
なにせ、晴海通りにかかる勝鬨橋(かちどきばし)のたもとにあるのだから。銀座から歩いても遠くない。
新橋から歩いてきたひともいた(笑)。
少人数のグループだが、毎年やっている新年会。今年の会場は築地でふぐ鍋だ。
会場が”湯島”のときは、なんと「ラブホテル」の多いところだと、おどろいたものだが、
こちらは築地市場に近いせいか、雨後の筍のように増えた「寿司屋」には、たまげた。
「天竹」は6階建ての"ふぐ御殿”
天竹の創業は明治の末頃、初代は門前仲町で天麩羅屋を開いた。ふぐ料理をはじめたのは二代目の時だという。
天竹は戦前、東銀座の歌舞伎座前に店があったが、戦災で焼失。いまの勝鬨橋のたもとに移り、開業した。
平成9年、1階から5階まで客室のある大きな店に建て替えた。
1階から3階は椅子席と座敷になっていて、合わせて200以上の席があるという。
おそらく、”ふぐの店”としては東京で一番大きいだろう。まさに「ふぐ御殿」といえる。
仲間が3人揃ったところで、5階にある個室に案内された。瀟洒で小粋な和室である。
天竹ではコースもいろいろ用意されているが、ふぐのフルコースを味わいたいので、特上コースを予約しておいた。
天竹のふぐは下関からの空輸便
特上コースとは、下関から空輸されたふぐを、ふんだんに使ったふぐのフルコースである。
お通し(ふぐわさ、ふぐ寿し)、トラふぐ刺し、ふぐのお刺身(←画像・上)、ふぐ皮の酢の物、ふぐの煮ここり、
ふぐの唐揚げ(←画像・下)、雑炊、メロンと苺のデザート。
それに料理長からの「北海道産の生ウニ」の差し入れのイッピン。
あとで数えてみると全部で10品でした(笑)。
ふぐの白子は和食のフォアグラ
まだあります!!フォアグラよりも美味しい白子(←画像・上)をオーダーしました。
白子はふぐの鍋料理に欠かせません。まさに食べるジュエリーです。
(白子の画像は、出席者の市島くんのご提供によるものです。この場を借りて厚くお礼申し上げます。)
ふぐ料理の極意とは
ふぐの”通”の人にきいたことがある。
ふぐ料理を食べる正道はフグ刺しを食べたあと、すぐフグちりに移ることだそうだ。
あまり余分なものを口にしないほうが良い。
ふぐの淡白な味には、その日の味覚を繊細にしておくべきだ、と。
雑炊で締めるのが鍋の常道。こちらも微妙なふぐのダシがきいていて、旨いことかぎりない。
家に帰れば "いとしい妻も待っていよ"
天竹の女将の見送りで、店を後にしたのが夜の8時すぎだった。
出席者の2人ともが、家に帰れば”いとしい妻 も待っていよ”……ですから、ここで解散しようと思った。
しかし……”わしは待つ人もない 捨小舟(すておぶね)♪”であり、ちょっぴり寂しかったのが本音。
結局それから銀座に出かけることになった。
かくして3人は夜の銀座の灯(あかし)の中に消えて行ったのであります。