Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

本日はようこそ開いてくださいました!お芝居のことグルメを語ります!


          

河村隆一のミュージカル「嵐が丘」  -シアタードラマシティー

2011-07-30 | 演劇

      河村隆一主演のミュージカル『嵐が丘』 

 

たとえば、色でいうと翳りを帯びてけれど烈しく燃える深紅といおうか・・・。
『嵐が丘』には、そんなイメージがある。

19世紀半ばに発表されたエミリーブロンチの小説は、少年のころ寝ることも惜しんで読み耽った。
激しくも切ない愛と復讐の物語だ。
幾度となく映画化もされたが、こんどはこれがミュージカルで登場。本邦初だという。

先駆の『オペラ座の怪人』はもとはB級ホラー映画だった。
これを純愛ドラマの切口でミュージカル化して成功した。
しかし『嵐が丘』は、荒涼たるヨークシャ地方の自然と風土を背景に、虐げられた孤児ヒースクリフの長年にわたる大河小説。
これを2時間程度の舞台に編むことが果たして可能なのか。
それは未踏の山に挑戦するようなものだ。

そこで、今回は荒野の中で可憐に咲く「ヒースの花」をキーワードに、ヒースクリフとキャサリンの「純愛物語」にまとめた。
いわば日本版「冬のソナタ」だ。

恋が狂気でないとしたら、そもそもそれは恋ではない

と言ったバルカの名言をおもいだす。
今回の舞台には”狂気”だとか”憎しみ”の片鱗さえ見えてこない。
登場人物の生き方が「嵐のように・・・」としか言いようのない愛憎劇を見たかったが、甘ったるい、安っぽい、ご都合主義の韓流ドラマにすぎなかった 

 

   


河村隆一(←画像/左)のヒースクリフ。
さすが歌唱力は抜群。演技力は素人芝居並み。もう少し野性味が欲しい。

キャサリンの安倍なつみ(←画像/右)は、歌唱もよく、可憐だが、炎のような愛情に乏しい。
ヒースクリフといういちばん大切なものを失っても、心の溝を埋めるためにエドガー王子と結婚する心理が見ていてわからない。
なぜかさらさらと淡白で味が薄い。

杜けやきは、語り部とメイドの二役。
導入部の語りは宝塚調で、歌唱力もあり実にうまい。
こうした大河作品にはどうしても”筋売り”役が欠かせないものだが、序幕とラストにしか登場しないのはいささか疑問がのこる。

ヒースの荒野に建つ屋敷「嵐が丘」の主が、ミュージカルの大御所上条恒彦
「嵐が丘」の主がどのような経済的背景をもってこの土地にくらしているのか、彼の人生がどんなものか、ほとんどホンに書き込まれていない。
おまけに出番が少なく、やりどころがなくて気の毒。
当時のイギリスの階級社会の歪みが、この一大悲劇を生んだドラマの重要なモーメントではなかったか。
なのに孤児ヒースクリフを拾ってきただけの役でおわっているのには閉口する。 

 


『嵐が丘』けいこ風景   東京・ベニサンスタジオ


初演は東京・赤坂ATCシアター。大阪公演は梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。
どちらもお世辞にも大ホールとは言えない。
この広大なヨークシャの荒野を舞台でどう表現するか。

さすが『モーツアルト』、『エリザベート』のミュージカルの美術を手がけた堀尾幸男の装置は、塚本 悟の照明と相俟って、ヨークシャの荒野をみごとに再現した。
いま流行のコンピューター画像を使わなかったことが良かった。

音楽は『冬のソナタ』の倉本裕基
全体に短調のナンバーが多いが、暗い葬送曲のようでなく、あくまで”美しく哀しい”イメージを貫いた。
言葉に頼らずにメロディだけでも成立する音楽は、激しく、そして美しい。


                               (2011年7月28日  シアター・ドラマシティ所見)

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秀太郎絶妙の二役  -大阪松竹座七月大歌舞伎ー

2011-07-22 | 演劇



大阪松竹座七月大歌舞伎は松嶋屋一門を中心とした座組み。

それに東京勢から三津五郎,時蔵、秀調、弥十郎らが加わっている。

出し物は夜の部が『車引』と『伊勢音頭』の通し。相の山、宿屋、追駆け、二見ヶ浦が1時間余り。

二幕目がいつもの油屋と奥庭。

そもそも”通し”はあまり面白くないものと相場がきまっている。しかし今回は序幕の「相の山」から意外に面白い。

通し狂言になると、とかく端役の手不足が目立つものだが、それを歌之丞嶋之丞ら上方役者が健闘している。

しかも仲居や通行人まで落ちこぼれのないのも珍しい。

それが大いに芝居を面白くしている。

 

 秀太郎の仲居万野 




夜の部の切狂言は「伊勢音頭」。
まず秀太郎の仲居万野がすばらしい出来。
つっころばしの万次郎と二役である。
信じられないが万野は今回が初役。
中年増の意地悪さ、ねっとりとした色気、悪女の憎らしさ、芝居運びのうまさは抜群である。
それでいて「酒もさかなもヤマでござんす」だの、「早よいんでおくれやす」あたりは上方色といおうか、ねっとりした味があって面白い。
俗に言う”小股の切れ上がったをんな”とは、まさに秀太郎の演じた万野のような「をんな」だと思う。

「万野はいろんな演じかたがありますが、あまり細かく考えないように演じているので、毎日少し違っているようです」
と秀太郎ご自身のブログでつぶやいている。
「万野」は作りすぎて、意地悪さばかりを強調する万野役者は多いが、秀太郎の万野はごく自然体で嫌味がない。
貢の仁左衛門とからみ合う場(←画像/上)は、今月随一の面白さである。

もう一役の万次郎はさすがに品と位があって、これも上出来。
上方狂言の「つっころばし」役とは、このように演じるのだという見本のようなもの。
いずれにせよ見事に変身した秀太郎の二役であった。


対する福岡貢は仁左衛門の当り芸の一つ。
スッキリした姿のよさ、形のあざやかさ、芝居運びのうまさ、ともに 当代一の貢である。

ことに今度あらためて感心したのは、貢の現在は御師(←伊勢神宮信仰を広め、参拝者の世話をする下級神官)だが、元はれっきとした武士であるということが、今回の通し上演で、はっきり見えてくることである。

ほかに弥十郎のお鹿が、おかしみ、情愛、ともによくやっている。

時蔵のお紺は、芝居の肚がしっかりして気持ちも十分。いいお紺である。

梅枝のお岸はよくやっているが、イマイチ情が足りない。
それに「油屋」座敷の後半は体を殺さなければいけない。それがまるで御簾越しのお姫様のごとく、表情ひとつ変えず正面切っている。
これでは後の愛想づかしで、手をふりあげる貢を止めなければならない場面がスムースにいかない。大エラーである。

吉弥の千野は不出来。
憎々しさを強調しようとして、本来の性根をあやまっている。
余談になるが、千野は成田屋の升寿さんがうまかった。往年の名演が偲ばれる。

三津五郎の喜助は江戸前のきりっとした料理人で申し分がない。

最後になったが、愛之助の林平が大出来。
この役の陽気さ、おかしみをやれるのは上方役者では愛之助か亀鶴だろう。
愛之助で『対面』の朝比奈を見てみたい。 

 

 

 巳之助の杉王丸

 

「車引」は、孝太郎の桜丸、愛之助の梅王、進之介の松王。
今回は我當の時平で、舎人が従兄弟3人で演じるという異例の顔合わせである。

なかでも松王の進之介(← 我當丈のお坊ちゃま)がいちばんの不出来。
下半身、ことに足の扱いが不安定。そのために腰がのびて力の表現に迫力がない。
だから役の大きさがなく、こじんまりした松王である。

桜丸は孝太郎で初役。
上方型では隈を取らず、衣装も鴇色の襦袢。
可愛らしさはあるが、可もなく不可もない出来。

愛之助の梅王は勢いといい、イキといい、立派である。

最後に杉王丸について書いてみたい。
大方の演劇評には、なぜか杉王丸だけは書かない。端役だからであろうか。
杉王丸は大幹部のご曹司がやることが多い。だからさしさわりのないように故意に避けているようである。
歌舞伎界とは不可解な世界である。

さて今回、巳之助の杉王丸がご立派(←画像/上)。
若さがあり、怒髪天をつく勢い。
理屈はともかく、現代風でいえば、ヤンチャで演ったことがよかった。
ただ幕切れの「絵面の見得」で、舎人3人と糸をピンと張ったような緊張感と迫力が感じられなかった。
これは巳之助のせいではないことだけを言っておきたい。

                                      (2011年7月21日  大阪・松竹座 夜の部所見)

 

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鬼灯(ほおずき)市のこと

2011-07-16 | わたしの歳時記

 

 

とにかく「ほおずき」が好きである。

その可憐な小花を愛す。その半ば朱を刷いた果実を愛す。そして、その風情を愛す。

いつもなら「浅草寺の『ほおずき市』に行ってきました!」と記すところだが、今年は「震災の夏」とやらで行けなかった。

自宅近くの園芸店で恰好の「ほうずき」の鉢を見つけたので購うことにした(←画像)。

ほおずきは、鬼灯、酸漿などと漢字で表記する。

つまり鬼灯はちょうちんのこと。ほおずきをお盆の精霊棚に供えてご先祖さまをお迎えするちょうちんに見立てたものらしい。

ほおずきの果実を鳴らして遊ぶ子どもたちの「頬突き」と呼ばれたことからきたともいう。

そういえば子供のころ、口の中でタネを抜いてクチュクチュ鳴らす。これが実にうまい子がいて羨ましかった記憶がある。

 

 


ほおずきの花は2センチほどの素朴で可憐な花です(←画像/左)

これが一つ一つ受粉してほうずきの実になる。ほうずきの朱い実はよく知られているが、初夏に咲く白い花を知らない人が多い。

いまの品種は朱色が美しい。かつての実の色は青かったそうだ。

梅雨が明けて夏本番に突入する時分、関東では浅草寺をはじめ各地でほおずき市がひらかれるようになった。

関西は古寺名刹が多いがほおずき市のあるのを聞かない。 

 

 


       四万六千日の暑さとなりにけり

久保田万太郎の句である。

「四万六千日」、7月10日は観世音菩薩の結縁日である。

その日に観音様にお参りすると4万6千日分の御利益があるとされる。

そして、この日にあわせて「鬼灯(ほおずき)市がたつ。

むかしは雷よけの赤トウモロコシが売られたらしいが、いつしかホオズキの市となった。

ことし東京・浅草寺境内では「ほおずき市」が開かれたのが9日~10日で、のべ50万人の人出があったそうだ。                                          
                                

  


何年前であったか、浅草寺の「ほおずき市」に出かけたことがある。

たまたま雨上がりの境内はあかあかと灯され、その灯の下にほうずき市は人を呼んでいた。

仁王門から二天門にかけて、浅草寺の境内にまでその鬼灯の店は拡がっていた。

店の若い衆の多くは素肌にさらしの腹巻、紺の法被をひっかけ、同じ法被の女性もいた。

鬼灯は多く大粒の「丹波酸漿(たんばほおずき)」である。

その丹波酸漿は半ば朱を刷いていた。

「ほおずき市」は夏の夜の風物詩だとおもった。今も下町の風情が息づいている。


鬼灯市が済むと浅草の夏はいよいよ深まってゆく。 

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熊本カフェ散歩

2011-07-10 | 喫茶店めぐり

 

 

またしても「熊本」の話です(笑)。

今回紹介したいのが『熊本カフェ散歩』(←画像)。
次から次へと出版されている「グルメ本」とか、「食べログ」とは一味ちがう。
風変りというか、味のある本というか、とにかく読んでいて日常がちょっぴり豊かになる本だといえる。

まず作者の三角由美子さんの文章に惹かれた。
どちらかというと直木賞作家の三浦しをんさんの文体に似ている。読んでいて気持ちがいい。
自分のスタイルがある。つまり、「スタイリスト」なのだ。
地元熊本生まれ。有名女子大卒で大手の出版社の編集部を経て、フリーライターに。
現在は地元の情報誌を中心にインタビューの取材・執筆が主な仕事だそうだ。

さらにいえば、実家は熊本の「三角畳店」。いうならば畳屋の娘。
「ミニ畳作り」講習会を開いたり、畳を担ぐことは日常茶飯事。
ご自分のブログにも「和の暮らしってステキ」とつぶやき中。

カラスの啼かない日があっても、お酒を飲まない日はいち日もない。
行きつけの「飲み屋」はあっても、カフエとか喫茶店にはとんとご縁がない。
そんな彼女に飛び込んできた仕事が「カフエめぐり」の取材。
「なんとかなるさ」のケセラセラでカフエ行脚がはじまったらしい。

さて紹介されているのは、熊本市の中心街と東西南北で出会ったカフエ50軒。
ありきたりのカフエ探訪記ではない。
まるで刑事ドラマの聞き込み捜査のごとく、知らない店の扉をひらく。
ときには猫も棲まないという路地裏の喫茶店まで足をのばす。

大方の「グルメ雑誌」にありがちな、お店の雰囲気だとか、コーヒーの味がどうだとか、ユニークなスイーツが格安だとか。
どちらかというと取材される側が宣伝してほしいところの提灯持ちはいっさいしない。
「カフエという空間」に作者の目線がある。

テレビのニュースのネタとか、人間ドックのはなし、ペットのはなし、ゴルフの打ちぱなしの話など,客とマスターのたあいない話が「カフエ空間」に広がる。
それにしても常連さんのチカラってすごいと作者はいう。
マスターが手を離されないときや、話がとぎれると、すかさず横から援護してくれる。

コーヒーを飲むのなら、コンビニでもファーストフード店でも手短かにすませられる。
そのほうが時間効率を優先する人には適っているだろう。

しかしカフエの席に座ってポーと窓の向こうの景色を眺めたり、カウンターで居合わせた人と他愛ない話をして笑うことも、気持ちを満たしてくれるものだ。
つまり、こんな人生の「余白」があってもいい。
『熊本カフェ散歩』が、それを教えてくれたのです。


   熊本カフエ散歩    

 著者   三角 由美子

 発行所  書肆 侃侃房(しょし かんかんぼう)

 定価   1300円(本体)+税

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節電の夏

2011-07-05 | わたしの歳時記

 


 7月です。
今夏のキーワードは「節電」 。
東電管内だけかと思ったら、関西電力も昨年比15%の節電。
暑さはこれからが本番。
「試練の夏」は、関電さんの求める9月22日まで3か月も続く。

ひとり暮らしなのに、大口なのか、関電の社員があいさつに見えました。
エアコンは高めの設定。つまり28°Cが目安だそうだ。

そこで対策。
2階にある書斎を、階下の和室に移動することにした。
エアコンは室温に関係なくオフ。オンボロ扇風機を持ち出してくる始末。

節電も発想次第というけれど、まして熱中症予備軍だといわれる年齢。
冷房の28度設定は、ちと厳しい。

 

 

 

    首の回らない扇風機。

    おまけに音がデカイ。

      ゴトン、ゴトン、ゴトン、ガチャン、ガチャン、ゴトン・・・・・。  

      別名”江ノ電”と云ってます。

      回転しなくても、音がデカくても、風力は抜群です。

    「楽天市場で2000円で売っとるぜ!!」(←息子曰く)。

   2千円であろうが、2万円であろうが、買いません。

   今夏はこの扇風機で辛抱します。

   風量切替、タイマーは、いまのところ異常ありません。

   午後2時~4時頃が電気使用のピークだそうです。その時間帯は・・・・・

   急ぎの原稿に追われているときなどは、筆記用具と原稿紙を抱えて

   行きつけの喫茶店へ。

   コーヒー一杯で2時間程度ねばることは珍しくありません

 

     
     暑いときこそ、ネスプレッソのある生活を!!




夏になると、きまって作るものがあります。
ネスプレッソコーヒーアイスクリームです(画像/左)
ネスプレッソスタイルで、純粋にシンプルに・・・・・・。

なんのことはない。極上のネスプレッソを沸かして、市販のアイスクリームにかけるだけ。
友人や来客に出すと、きまってよろこんで頂けます。

ネスプレッソコーヒーメーカー(画像/右)は5年前に購入したもの。
散在しているカプセルコーヒーは、場面や気分によって選べる9種類が揃っています。
今回使用したコーヒーカプセルは「アルペジオ」。
純粋なアラビカ豆からなる本場イタリアのあじわい。力強い風味です。
アイスクリームはロッテの『爽』(バニラ)。
これはコンビニで売ってます。

「冷房の28度は涼しくないが、とにかく乗り切らなければ・・・・ね」

 

【 演劇の更新のお知らせ 】

7月は、大阪松竹座・七月大歌舞伎(更新済み こちら)  

 ドラマシティ『嵐が丘』/河村隆一主演のミュージカル(更新済み こちら

 

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