カーメン・マクレエを知ったのは、銀座にある「サンボア」というバーだった。
店のカウンターで、ひとり"ハイボール”のグラスをかたむけながら聴いていた。
冷たいような甘いような、けだるいような、なまぬくいような・・・・。
地下にある深夜のBarの雰囲気によく似合っていた。
後に彼女は、女性ジャズシンガーのカーメン・マクレエであることを知った。
歌っていたのは『サムシング・アイ・ドリームド・ラストナイト』というパラードだった。
これはケンカをして夫(愛する人)が家を出て行ってしまったあとの話。
カーメンは、おさえた表情に哀しみをにじませて歌う。
次第に感情がたかまり、ついに哀願のクライマックスとなる。
カーメンは実にすばらしい。
まったくナチュラルなビート感!!ちよっとしたフレーズにもジャズの心を感じさせるのです。
全体的にジャズのフィーリングとテイストが満ちていると思うんです。
もしカーメンの一曲だけを聴いてみたいかたには、迷わずこの曲をお奨めします。
『ブック・オブ・パラード』(←画像/左下)のアルバムに入っています。
まちがいなく彼女の傑作の一つだと思います。
あらためて云うまでもなくカーメン・マクレエはキャリアの長い歌手。
アルバムの数も多いし、どれもこれも”カーメンならでは”というおおきな魅力があります。
たとえば『ブルームーン』のフエイク気味の自在なフレージング。
『ラフイング・ボーイ』の優しさのあふれた語り口。
『イフ・ラヴ・イズ・グッド・トゥ・ミー』のさりげない”こぶしまわし”の効果も見逃せません。
さて今夜は「カーメンのどの曲を聴こうかな・・」
なんだか夜の愉しみがふえたような気がしてなりません。