Dream Gate ( 中野 浚次のブログ )   

本日はようこそ開いてくださいました!お芝居のことグルメを語ります!


          

妖艶・市川春猿とフレッシュ青年・井上恭太と!  -三越劇場・新派『滝の白糸』-

2010-11-28 | 演劇



「滝の白糸」とは、水を白い糸でもあるかのように自在に操る曲芸のことである。


その美貌の太夫が本作の主人公です。
白糸に歌舞伎の女形が挑むのは玉三郎以来のこと。新派では10年ぶりの上演だそうだ。

『滝の白糸』は泉鏡花が作り上げた精妙な細工物のような女性像です。
伝法でありながら一途で気風(きっぷ)がいい。
そのくせ初心で、馬丁の若い男に一目惚れして、学費の援助を申し出る。
その「卯辰橋」というのが新派の名場面。

白糸の魅力を最大限に引き出すために、代々の役者が魂を吹き込み、磨きあげてきた。
ですから「劇団 新派」の財産演目の一つともなったのです。



 



「白糸」という難役に、今回は市川猿之助一門の市川春猿が挑んでいる。
結論からいって、春猿は新派のニンではない。

『天守物語』の亀姫で玉三郎と共演するなど、女方として目覚ましい進境を見せたのだが、今回は勝手が違ったようだ。

新派の『滝の白糸』は、あらかじめだが段取りが決まっていて、新派の”かたち物”といった感じが強い。

たとえば大詰の「法廷の場」で、白糸は終始うしろ向きのまんまで演じなければいけないし、「卯辰橋」では島田の元結を解いて髪を巻きあげる手順が決まっている。
それでいて若い書生に心惹かれる心情を巧みに出さなければいけない。
それが充分に伝わらなかった。


対する若い書生村越欣弥の井上恭太は、久々の内部起用となった。
三島由紀夫の『鹿鳴館』の清原久雄で一躍注目された新派の誇る二枚目。

余談だが、井上恭太は堺正章、かまやつひろしのグループサウンド「ザ・スパイダース」の井上堯之の長男とか。
ロック歌手志望から転じて役者になった。
爽やかさが身上の逸材。

「卯辰橋」では勤勉な青年らしい爽やかさがあった。
だが大詰「法廷」の場で被告の白糸を諭す場面がよくない。
いかに裁判官といえども、ここはせりふを謳ってほしい。
最近の若い役者さんは変にリアルにやろうとする。
リアルにやられると、せりふがせりふだけに芝居がおかしくなる。
被告白糸を突き動かすだけの迫真性に欠ける。





ベテランの小泉まち子は茶店の婆さん。
なんでもない役だが、明治、大正の空気を漂わせて存在感がある。

あたかもそこで暮らしているような生活感が漂う。うまいものだ。
小泉まち子が出ただけで、新派を見た気分にさせてくれる。
これが新派の「風」というものだろう。


                ▼ こんな写真も撮りました ▼






『滝の白糸』は明治28年に川上音二郎一座が駒形の浅草座で初演した。

画像は当時の絵番附。

村越欣弥を演じたのは壮士芝居で名を馳せた川上音二郎だった。

                            (2010年10月25日  東京・日本橋三越劇場で所見)

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本日のかす汁

2010-11-26 | 本日の○○




また更新が大幅に遅れまして申し訳ありません。
実のところ、野暮用で先月に引き続いて今月も上京しておりました。

その間、北朝鮮のミサイル発射、柳田法相の辞任、そして市川海老蔵さんの西麻布の飲み屋での傷害事件、いろんなことがここ数日にありましたね。

今年もアッという間に12月。
コートが手放せない季節になりました。
寒いときは、なんたって”鍋物”か”かす汁”が恋しくなります。

わたしの留守中にいとこが「酒粕」を届けてくれてました。
いとこは長年、灘の「白鶴酒造」につとめています。
ですから毎年、この時節になるととどけてくれます。

そこで「かす汁」をつくってみました。
といっても、わたしのこと。いい加減なレシピですが、体が温まるのだけがなによりの御馳走です。


 



          ☆具たくさんの材料☆

材料は、豚肉、大根、人参、こんにゃく、青ネギ。
わたしはくじらの皮肉をよく使います。
それと手づくりのちくわが冷蔵庫にありましたので、それも加えました。

ただ面倒なことが一つあります。
それは、酒かすを手で小さくちぎり、ひたひたの煮汁を加えてしばらく浸けておくことです。
やわらかくなれば、すり鉢に移してなめらかな状態になるまでよく混ぜることです。
偉そうなことをいうようですが、これを「手抜き」しますと、美味しいかす汁にはなりません。

ところで、「酒かす」の良否の見分け方はご存知でしょうか。
良質の酒かすは、肉厚で表面がよく湿っていて、重みがあります。
しかもとっても香りが高いです。


         ☆かす汁の美味しいお店☆

「かす汁」のとても美味しいお店を知っています。
それは神戸っ子ならだれでも知っている神戸元町のコーヒーの「エビアン」のとなりにある「金時食堂」
東京・浅草のホツピー通りにあるような「めし屋」さんです。
神戸・元町に買い物に出かけたときは大抵寄ります。

(画像左は千枚漬と青しその香の物)



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さまざまな色合いの歌舞伎   -十月大歌舞伎  新橋演舞場ー

2010-11-07 | 演劇

親獅子(三津五郎)、仔獅子(巳之助)の花道の出



昼の部は新歌舞伎である真山青果の「頼朝の死」、中幕は三津五郎三代追善の「蓮獅子」。

切狂言は黙阿弥の世話狂言「加賀鳶」と多彩である。

まず中幕の三津五郎、巳之助親子による「連獅子」
三津五郎、巳之助親子ふたりは本公演初役だというからおどろいた。

「蓮獅子」は”石橋物”といいながら、厳しい獅子の子育てが描かれている。
それが歌舞伎の”芸”の伝承に励む親子の姿とオーバーラップする。


                                



三津五郎の前半清涼山の描写がまことに丁寧かつ端正である。
「人のたしなみ・・・」で膝をついたまま上手を振り返る色気。さすがである。
あたりまえのことかもしれないが、扇子ひとつで山の険しさ、谷の深さをみごとに表現した。
仔獅子を蹴り落としてのハラに憂いを見せた。

対する仔獅子の巳之助はきびきびした動きと力強さがあって申し分がない。
しっかりして頼もしい。今後が楽しみである。


                                 


話は変わるが、今年の9月に国立劇場の「俳優祭」で、踊り「春駒」を見た。
平成生まれの歌舞伎役者ばかりの出演で「曽我対面」をもじった舞踊劇だった。
その中で巳之助は曽我五郎を踊った。もちろん”むきみ隈”のかお(化粧)ではない。素顔の若者である。
素踊りとはいえ素晴らしい出来栄えだった。藤間流家元の振り付けである。

それと、もう一つ。
ことし2月に博多座で見た染五郎、亀治郎の清元「三社祭」もよかった。
わずか20分の所作事だが、いつもなら長く感じられる踊り。正直このときばかりは5~6分ぐらいにしか感じなかった。
テンポがよく、踊りの面白さを堪能した「三社祭」であった。






さてその成長株巳之助が「加賀鳶」の序幕「本郷木戸前勢揃い」に出る。
加賀藩お抱えの大名火消しと町火消しの諍いである。

巳之助は前髪でまさかりの鬘。若衆火消しである。
江戸時代に衆道の流行で禁止になった美少年による「若衆歌舞伎」を彷彿させる。

黙阿弥得意の流麗なツラネも、花道で旬の花形役者が揃い、名乗りをきかせる姿は壮観である。
江戸歌舞伎の洗練さと粋が感じられる舞台であった。

最後になったが真山青果の「頼朝の死」
梅玉の頼家は初演からの持ち役。
さすが青果調の音吐朗々たるせりふはお家芸になってきた。

錦之助の畠山重保は、この出し物でいちばん”おいしい役”なのだが、あまりにも苦悩を見せようとして、逆に性根のない武士にみえてしまう。
錦之助のニンだけに惜しい。
頼朝の「死」というミステリアスな悲劇がもう少しリアリティが出ればいいのだが。




       ▼ こんな写真も撮りました ▼


                                         松花堂弁当  「篝火」


幕間は地下にある食堂「あずま」で松花堂弁当の”篝火”(←7.000円}。

築地の魚河岸に近い劇場だけに、お刺身は最高!!お味は京風でした。

わたしの大好物「さざえのつぼ焼き」がありました。ほんとに美味しかったです。

ちなみにお料理「篝火」の名前は、夜の部「盛綱陣屋」で魁春(加賀屋)さんが演じたお役の名前から。

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わたしの好きなティールーム③    ー木挽町「ルノアール」ー

2010-11-01 | 喫茶店めぐり



今日から11月です!!
カレンダーはあと1枚。いえ2か月毎のカレンダーだとあと0枚、つまり今年はこれでオシマイです。
とにかく1年なんてあっという間。年々早く感じられます。
これは私だけでしょうか?

さて、今回紹介する喫茶店は晴海通りの近くにある「ルノアール」
お店は2階にありますが、大きな窓からの見晴しがすばらしい。
今しがた雨の上がった夕昏れの大都会の風景がすごく好きなんです。

新橋演舞場で「10月大歌舞伎」を見て、劇場前にある宮本亜門さんのお父さん(86歳)がやっているコーヒー店に寄るつもりでした。
ですが、値段は安いのですがコーヒーの味がイマイチなんです。
なんでも新橋演舞場の楽屋へコーヒーの出前が今も多いらしい。
宮本亜門さんが幼少のころから劇場へは木戸御免だったという。
新橋演舞場に出演している役者さん達は珈琲オンチなんですかね。




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さて、「ルノアール」は新橋演舞場から徒歩で2分程度。
お芝居を見たあと、何も考えずボケっとしている時間も大切です。

「木挽町」とタイトルに記しましたが、それはひと昔も前の町名。
その頃は、川口松太郎の小説によく登場する築地川という色っぽい名前の川が流れていました(←いまは埋め立てられていますが)。
それに和光の時計台がある銀座4丁目の交差点は、その頃は尾張町の交差点と呼んでました。
当時はもちろん『君の名は』で有名になった数寄屋橋、日劇もありました。

ところで注文したのが レモンアイスティー
コスターのデカイのにタマゲましたが、それよりも驚いたのは、お客さんの大半がi-padを使っています。
ケイタイを使っている私は時代遅れのような感じがして恥ずかしかったです。
さすが銀座のサテンだとは思いましたが、世の中は確実にハイスピードで流れています。







昨日は日本橋の三越劇場で、新派の『滝の白糸』、本日は新橋演舞場で歌舞伎。観劇のはしごです。

ご存知かと思いますが、東京・歌舞伎座は現在建て替え中。ですから歌舞伎は200㍍ほど離れた新橋演舞場で歌舞伎公演をしています。

私はどちらかというと築地に近い「新橋演舞場」のほうが好きです。
もともと新橋芸者さんの「東おどり」のために建てられた劇場。あたりは色町らしく「金田中」(← 一見さんお断り)をはじめ高級料亭が軒を連ねています。
現に「人力車」が劇場前で待機してました。

ここには、まだ「江戸の粋」が息づいているような気がします。



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