神戸・三宮の地下にあるショッピング街”さんちか”で開催中の「さんちか古書即売会」に行ってきました。
ひと頃のわたしは「神田詣で」が頻繁だった。
神田詣でとは、云わずと知れた東京・神田の神保町を中心した古本屋のメッカを訪れることだ。
ピーターパンにはネバーランドがあるように、わたしには神保町というワンダーランドがあった。
わたしの友人など、誰が触ったものやら得体の知れない古本なんか、気味が悪いと決めつけている。
その友人が、いつか、こんなことをいった。
「お前なんかさ、カンペキに古本中毒症候群だよ!!」
古本中毒症候群!! そんな病気があるわけも無いが、すくなくとも「初版本」発掘にはじまり、飲み屋の”はしご”こそしないが、古本屋の”はしご”は日常茶飯事だった。
およそ古書即売会にあらわれる人種は三通りにわかれると、わたしは考えている。
第一は古本と直接結びついて生きている人たち、古本業者とか郷土史家、学者などだ。
第二は古本のコレクター。古い映画のポスターやパンフレット、プロマイドなど、今流でいえば、古本オタクと呼ばれる人種。
第三は”初版本狂”というマニア。
とくに初版マニアが求めているのは、好きな作家の直筆のサインがある署名本です。
さらに深みにハマると、こんどは”發禁本”が欲しくなる。
そういった「掘り出し物」がそう見つかるわけがない。
かりに見つかったとしても、何十万と値段がグンと高くなる。
即売会は出店が10軒ほどだが、あらかじめ送られてきた「目録」の中から2冊を注文しておいた。
1冊は抽選でハズレたが、ほしかった原田康子の『殺人者』の初版本(←画像/左)は手にすることができた。
原田康子は、かつては空前のベストセラーとなった『挽歌』の作者である。
はじめて『殺人者』を読んだのは角川文庫だった。
わたしの背中に衝撃が走ったことを、今もよく憶えている。
『殺人者』という題名からミステリーを想像されるだろうが、原田康子らしいムードに溢れた恋愛長編だ。
うつろな青春をすごす娘の前に、突然あらわれた美青年の殺人犯・・・・北海道の自然を背景にひろげられる激情と感傷の物語なんです。
ほかに『野の佛』、舟橋聖一の『華燭』(←画像/右)などを買ったが、今回はお預かりとさせていただきます。