初演から3年。米倉涼子の元子ママが「明治座」に戻ってきた。
一冊の『黒革の手帖』をもとに夜の銀座をのし上がっていく元子と、
彼女に群がる男たちとの駆け引きー。
より艶やかに、よりミステリアスに、しかも疾走感があって見ごたえの
ある舞台に仕上がった。
銀座のクラブを描いた作品は少なくないが、”色と欲”とおよそ相場が
きまっている。
川口松太郎の『夜の蝶』、菊島隆三の『女が階段を上る時』など夜の銀座
の風俗をあつかった名作があった。
松本清張の『黒革の手帖』は風俗をあつかってはいるが、ありきたりの
風俗物ではない。
現代社会の暗黒面に巣食う”悪いやつらにメスを入れ、その実態を暴
くところが松本清張らしい。
一人の女の執念を軸に、銀行の架空預金口座の問題をはじめ、美容整形
外科医の脱税、裏口入学をめぐる予備校と政治家の関係など、弱味をも
つ人々。そんな現代人の一面をあぶり出しているのです。
米倉涼子は冴えない地方の一銀行員から、銀座の高級クラブ「カルネ」
のママにのし上がるまで、着物姿、ドレス姿など数回の衣装を替える。
みごとな変身である。
米倉涼子が登場するたびに、「キャ!!」とか「ウォ!!」と客席から
黄色い声がとぶ。
米倉の元子ママは「見せる芝居」を心得ており、迫力もある。
クラブ「カルネ」の場面では、舞台を縦横に泳ぎ、”芝居”を感じさせ
ない堂々たる銀座のママさんぶり。
それでいて永井大の議員秘書と二人っきりの場では、女の心の揺れを見
せ、”女の弱さ”を匂わせた。
萬田久子は出番こそ少ないが、登場しただけでかっこよく、存在感がある。
さすがベテランの女優である。
ホリヒロシの卓越したデザインの衣装が似合うのはこの人しかいないだ
ろう。
感心したのは、終幕の銀座の街で、馴染みの洋酒屋の兄ちゃんとの短い
会話がじつにいい。
「銀座も変わったわねぇ・・・」
色と欲とは夜の銀座の相場だが、むかしの銀座には”人情”があった。
良き時代のクラブ「燭台」のママだったが、いまは再婚して子供がいる。
それも先妻の子供。イヴだから子供にケーキを買いに銀座に出たついで
に、バー街に立ち寄ったのだという。
時の流れを感じさせ、詩情あふれる見事な場面だった。
苦言をひとつ。
「またかよゥ!!」と云いたくなるくらい、舞台転換では、上手、下手
でペアーのダンサーの踊りがある。
米倉涼子の衣装変えの時間を稼いでるのが見え見え。
回り舞台を駆使してのスリリングな舞台だけに、もう少し紗幕を多用し
てでも夜の銀座の詩情を見せてほしかった。
ほかに、左とん平、渡辺哲、横田めぐみ、松本莉緒らの助演。
甲斐正人の音楽が印象に残る。
さて、皆さんを銀座の高級クラブ「カルネ」にご案内しましょうか。
画像は「カルネ」のホステスさんに全員集合していただきました。
お目当ての元子ママさんは、残念ながらここには写っておりません。
ママは早くて夜の9時すぎ、遅いと10時ごろの出勤なんです。
お気に入りのホステスさんが見つかりましたか?
あなたは、どの女の子をご指名なさいますか?
全員がアフターOKですよ!!
と言いましても、じつは『黒革の手帖』で銀座のホステスに扮した女優
さんたちです(笑)。
衣装のドレスはすべて新調。ちなみに横田めぐみさん、松本莉緒さん、
山田奈津美さん、楓沙樹(宝塚)さんが
フォンテーヌのウィッグを着用
されています。
ヘアスタイルもぜひチェックしてみて下さいね。