とにかく面白いです。
ことしの元旦から『古川ロッパ昭和日記 戦後編』を読みはじめているのですが、まだ半ばなんです。
読了まで今年いっぱいはかかりそうです(笑)。
というのは、2年かけて刊行された『古川ロッパ昭和日記』は、『戦前編』『戦中編』『戦後編』『晩年編』の全4巻。各巻平均930ページ。いちどに4巻すべて買い込んだワケ。
ところで古川ロッパ(←以下ロッパと略称)は、類まれな日記魔だったそうです。次々と登場する大人物(←サトウ八チロー、菊田一夫、片岡千恵蔵、藤原義江、斉藤寅さん、永田のラッパ、菊池寛、中野実・・・きりなし)との交遊記、美食、興行への旺盛な意欲・・・そして、焼け跡からの家探し。苦い戦争の記憶などが、一日たりと休むことなく綴られています。
当世では、お笑いといえば”吉本”ですよね。いまは上海の子供でも知っています(笑)。
かつて東京喜劇は、エノケン、ロッパのふたりが大立物といわれ、一世を風靡した時代があったわけです。
このブログをお読みの皆様はおそらくご存知ではないと思いますが・・・まあ最後まで付き合って下さいな。
日記といえば、時代風俗の記録としてもかの永井荷風『断腸亭日乗』がありますが、これは美文調の格調高いもので、日記文学の最高峰とまで言われた文学的香りの濃い名作です。
反してロッパの昭和日記は、メモ書き、走り書き、言葉が少々ワルイですが、落書き!!といえましょう。それでいて名人の話芸を聴いているような絶妙の”間”があるわけです。”間”は”魔”と申します。ついハマってしまうのです。
しかも戦後まもない日本が垣間見えてきます。
同時代のエノケン(←榎本健一)は庶民、ロッパは華族の出身。個人で税金を払うことを知らなかったようです。
どっと押し寄せる未払いの税金。ワルイ事は重なります。そのうえ結核と診断されます。
追い詰められたロッパは、飢えないために、金のために、どんな端役にもすがりついたのです・・・
ともあれ昭和という時代を生きた社会風俗史であり、大衆芸能史でもあります。
ロッパの日記をひとつの戦後史とみてもよし、ふんどしより長い小説として読むのもまた一興です。
これだけ興味をもって読める戦後の記録は他にないと思います。
オススメの一冊です。