日本にはなぜか本格的な男性ジャズ・シンガーがあらわれなかった。
ところが彗星のごとく本格派の男性歌手が誕生した。
それが小林 圭くんです。
今回紹介したいアルバムは、東芝EMIでの第1作『ソー・ナイス』(←画像)です。
彼は1979年生まれだから、このアルバムをレコーディングした当時は弱冠20歳の若者だった。
友人のススメで大分前に買ったのですが、長いことCDボックスで眠っていた。
今度あらためて聴いてみると、彼のフイリング、のりのよさ、スキットでも歌えるジャズのセンス。
それに歌詞を通しての表現のよさ。
聴き手は安心して彼の歌にスムーズに入っていける。
しかも躰全体がジャズになっているのです。
アルバム『ソー・ナイス』は著名なトランペッターやサックス奏者と共演しています。
なのに少しもおくすることなく、堂々と歌っている。
彼の父はジャズピアニスト、母親はジャズ・シンガー、祖父もジャズ・ミュージシャン。
並の環境ではない。
どうりで彼のジャズ・フィリングも天才的なものを感じるのです。
お気に入りは「ヴァーモントの月」
ジャズのスタンダートといえば、圧倒的に愛や恋が多い。
そうでないのがアルバムの4番目に収録の「ヴァーモントの月」です
先日でしたか某局のラジオ番組で、この曲が採りあげられたとき・・・・。
「ハウスヴァーモントカレーだよね」
「ちやう ちやう」
アナウンサーも大阪弁で必死に否定してましたが・・・・(笑)。
このヴァーモントというのは、アメリカの北東部、カナダとの国境に近い州をさしています。
ヴァーモントは、豊かな自然に恵まれ避暑地として有名です。
夏はサマーキャンプ、冬はスキーやりんご狩りで観光客が目白押しだそうです。
私がヘタに説明するよりも小林 圭くんの曲を聴けば、行ったことのないヴァーモントがどんなに美しい所かおわかりになる。
冬のヴァーモントの夜空に凍てつく月。
そして・・・寄り添う若い男と女。
同じ月を、もし同じ場所で見られたら唄がもっと近くなる気がするのです。
最後の詞章がいい。
You and I and moonlight in Vermont
これを小林 圭くんの歌唱で聴くと、もう最高のラブソングなのだ。
アルトサックスの美しい音色が、とつとつと、ヴァーモントの月を輝かしてくれるのです。
「ヴァーモントの月」の洋盤を銀座の山野楽器から取り寄せたのだが(←画像/上)、さほど感銘はしなかった。
小林 圭くんの「ヴァーモントの月」の歌唱には、アメリカの黒人ミュージシャンに似たピート感がある、と思った。