生物の形-ポリ亭のマクロ・顕微鏡写真-

 身近な動植物のマクロ写真や顕微鏡を用いて撮るミクロ写真を載せていきます。「生物の形」を気楽に楽しんでいきたいものです。

イワシのうろこ(6)D領域付近

2007-04-21 22:00:50 | Weblog
 イワシのうろこのD付近(全体像参照)の通常光と偏光顕微鏡写真です。通常光による写真では放射状の構造が見えるくらいで,縞々構造のような明確な組織が見えません。しかし,偏光顕微鏡写真(b)では外周に沿って明るい細長い領域が形成されています。この領域では構成成分である高分子,おそらくコラーゲンが長さ方向に配向しており,うろこを補強していると思われます。(c)の写真をよく見る,境界は不明確ですが,うっすらと青っぽいバンド状の構造が存在している。この領域では放射状にコラーゲン分子鎖が配向していることになります。このことより,写真で見える領域では,コラーゲン分子鎖が放射状に配向している領域と接線方向に配向している領域が混在していることになります。このことはうろこの強度保持のためには好都合であることは確かです。
ミクロラボ Π(パイ) 参照:”高分子-ミクロの世界-”(Yahoo!ブログ)

イワシのうろこ(5)曲がり角周辺(B領域)

2007-04-21 21:50:42 | Weblog
 イワシのうろこのA付近の顕微鏡写真です。外周に沿って「縁取り」のような構造が見られます。この写真の上側はうろこ全体像の写真ではA側です。「縁取り」もその内側も縞々構造は外周にほぼ平行に走っています。しかし,右の縁付近では縞々構造は外周に突き当たるようにして終わっています。「縁取り」構造内では縞はばらばらになり,外周とは鋭角で突き当たって終わっています。
ミクロラボ Π(パイ) ポリ亭 参照:”高分子-ミクロの世界-”

イワシのうろこ(4)中央部(E領域)

2007-04-21 21:25:13 | Weblog
 いわしのうろこの中央領域の顕微鏡写真です。きれいな縞々構造が見えます。縞の周期は2.5ミクロンくらいです。縞が流れている方向より違った角度で縫い目のような構造があり,その両側では縞々構造の配列が乱れてきています。すべての縞が理想的に平行を保ちながらに走っているのではなく,くねくね曲がったり,また縞と縞の間に余分の縞が入る「刃状転位(Edge Dislocation)」のような構造の欠陥が見られます。刃状転位はもともと結晶格子(間隔はナノメータ)にしばしば見出される欠陥です。このような欠陥がうろこの縞々構造にも存在することは面白いと思います。
ミクロラボΠ(パイ) ポリ亭 参照:”高分子-ミクロの世界-”

イワシのうろこ(3)縞々構造(A領域)

2007-04-21 21:02:46 | Weblog
 写真は縞々構造の存在する側の縁周辺の通常光(左)および偏光顕微鏡(右)写真です。2枚の偏光子を直交した状態では縞々の細い領域が明るくなりました。1λの赤色石膏板を挿入すると,この領域はやや青っぽくなります。以上の結果は,細長い領域では構成成分であるタンパク質の分子鎖が長さ方向に配列しており,うろこの補強をしていると考えられます。ちょうど凧の骨のような役割を果たしているのでしょう。
ミクロラボ Π(パイ) ポリ亭 参照:”高分子-ミクロの世界-”(Yahoo!ブログ)

イワシのうろこ(2)中央付近のパノラマ写真(A-D領域)

2007-04-19 22:35:17 | Weblog
 前回のブログで示した「うろこ」の中心領域(A~D)のパノラマ写真を載せました。A~Dの領域はここでは横になっています。A付近(写真の左側)には縞々模様が見えますが,D付近(右側)では比較的平坦な形が見えます。このそれぞれの部分をもう少し拡大して眺め,構成成分である高分子鎖の配向方向などを検討した結果を次回から示します。
ミクロラボ Π(パイ) ポリ亭 参照:”高分子-ミクロの世界-”(Yahoo!ブログ)

イワシのうろこ(1)全体像と撮影場所

2007-04-19 22:04:26 | Weblog
 カレイの皮膚を包丁で擦るとじゃりじゃり音がして「うろこ」が剥がれてきます。以前のブログに載せましたように,カレイの「うろこ」1個は数本の釘のような形をしたもので皮膚に刺さっているので,それを無理に剥がすときの音がしているのです。
 一方,イワシの「うろこ」はちょっと手で擦っただけで簡単に取れてしまいます。写真は乾燥したイワシの「うろこ」の全体像と撮影場所を示しています。「うろこ」はC付近で上下に分離しやすく,またBより上の縁から内部には数本の亀裂ができています。
 イワシの「うろこ」は写真のAまたはDのどちらかが皮膚の表面に埋まっている程度なのかも知れません。今回は剥がれ落ちている「うろこ」を観察したので,全体像のAかDのどちら側が皮膚につながっているのか確かめられませんでした。
ミクロラボ Π(パイ) ポリ亭 参照:高分子-ミクロの世界-(Yahoo!ブログ)

アジのうろこ(7)翼の補強

2007-04-16 21:10:36 | Weblog
アジのうろこは全体として三角翼のような形をしています。三角翼の両端を皮膚に固定し,Cの部分上からBの下方に抜けるトンネルを通る組織でしっかりと皮膚に繋がっています。三角翼の羽の前面(AD間)を少し倍率を上げて顕微鏡写真を撮りました。まるで網目のような構造が見えてきます。これはCa成分(おそらくはヒドロキシアパタイト)が網目を作っているのでしょう。このため,翼のこの付近は硬く丈夫にできていることになります。粘弾性的性質を示すタンパク質(高分子)をCa成分が補強した「複合材料」と考えてもよいでしょう。この付近は偏光顕微鏡で眺めても,複屈折はあまり強くありません。
ミクロラボ Π(パイ) ポリ亭 参照:”高分子-ミクロの世界-”(Yahoo!ブログ)

アジのうろこ(6)トンネル構造

2007-04-15 18:02:22 | Weblog
 アジのうろこをスライドガラス上に載せると,自然に三角翼の先端部分(B領域)がスライドガラスにくっつき,三角翼の底辺部分が上方に持ち上がります。翼が下のほうに下がっていることになります。この状態で三角翼底辺部の中心付近(C領域)の写真を撮りました。
 ”トンネル”の入口のような構造が見えます。トンネルの上のエッジに焦点が合わせてあります。写真に見える三角翼の底辺部(C領域)の上方からあいている”トンネル”は三角翼の先端方向の下部に抜けています。
 トンネルの部分に皮膚表面から伸びてきたタンパク質が通り抜けて,うろこを皮膚から剥がれにくくしていると考えられます。この部分と両端が皮膚に固定され,包丁でうろこを擦ると,うろこの先端の尖った部分がぐっと持ち上がって擦る力に対抗します。B側から手で擦ると怪我をしそうです。

アジのうろこ(5)D領域

2007-04-14 13:35:31 | Weblog
 アジのうろこ(1)で示したうろこの全体像のD領域の写真です。上は通常光,下は偏光を使って撮った写真です。例によって,青い領域ではうろこを構成する高分子鎖が右斜め上に向かって配向しています。下の写真を見ると,青い領域は中心から翼の広がる方向に伸びるようにあります。このことり,タンパク質繊維が翼のような構造の長さ方向に配向して,その方向の強さを強化していることが分かります。今までの結果より,うろこの上下を貫通するように孔があき,そこに体表面から伸びてきたタンパク質が通っているのでうろこは剥がれにくいこと,また翼の長さ方向にはタンパク質繊維が配向しているので,引張りにも強いということができます。
ミクロラボ Π(パイ) 参照:”高分子-ミクロの世界-”(Yahoo!ブログ)

アジのうろこ(4)C領域

2007-04-13 21:26:00 | Weblog
 アジのうろこのC領域の顕微鏡写真です。翼のように左右に広がったうろこの内側で,針のような突起が突き出しています。「アジのうろこ(1)」の写真をもう一度見てください。C領域の尖った部分の裏側には孔があいており,B領域の表側に貫通しています。この孔の部分にタンパク質の組織が通っているのでしょう。アジのうろこは,包丁の刃で擦ったくらいでは,なかなか取れないのはそのためです。
 カレイのうろこは包丁の刃でこすると,ばりばり音がしながらうろこが剥がれ落ちました。イワシはもっと弱い力を加えただけでうろこが剥がれ落ちました。アジのうろこは皮ごと削りとるようにする必要がありました。このような差は,うろこの皮へのくっつき方の差に基づいて説明できるようです。
ミクロラボ Π(パイ) ポリ亭 参照:”高分子-ミクロの世界-”(Yahoo!ブログ)