高江雅人  竹工芸職人の独り言  竹工房オンセ

高江雅人  竹工芸を初めて37年、徒然なる出来事をアップしています。

初めての漆塗り

2007年07月01日 06時52分49秒 | 竹細工作業工程

6_013_2 今年の新人さんが3ヶ月近くかかって、やっとバッグの仕上げである漆塗りの段階まで進んできた。簡単には作る事ができない。ヒゴ取りで怒られ、編みで間違え、起こしで旨く行かず、縁付けで歪んで、悪いのはどんどんやり直しさせられやっと、今日の漆塗りまで漕ぎ着けてきた。

最後の漆塗りで作品の表情が決まってしまう。人間で言えば「お化粧」 6_014作りの様なものだ。綺麗にお化粧して、美しく仕上げいい所にお嫁に行って下さいね。とそんな気持ちで漆を塗っていく。しかし、「土台が悪いものはどれだけお化粧しても悪いものは悪い。」辛いなー。

私の所では2回漆を塗っている。1回だけだと、どうしても下地に吸い込まれてしまい、時間と共に艶がなくなっていく。やはり、1回目で下地を固めてから、もう一度2回目の漆を塗る。その時に「いぼた」と言う蝋の6_015_1パウダーを刷り込んでいる。編み目に白い「いぼた」が入り込むことで、編み目を浮き立たせている。しっとりとした艶が出て、古典的な表情作りをしている。

6月のこの時期は、漆の乾きも早く、塗っているうちにどんどん乾いていく。丁寧な仕事は要求されるが、もたもたしていると、漆の乾きに追いつかず失敗することになる。(私の工房でもクーラーがあるのはこの漆部屋だけである。)漆は乾燥していると乾かなくて、湿度と温度があると乾くのだ。この6月の頃は一番乾きやすい時期であるが、逆に一番気をつけないと いけない時期でもある。

あと、漆は慣れないと「かぶれる」という問題がある。人それぞれの体質によるので何ともいえないが、うちの工房でも2人ほど、どうしても慣れなくて漆塗りが出来ない人も居る。後は、最初は被れるかも知れないが、自然と免疫がついて来て強くなってくる。

私も20年以上前、竹の訓練校に言っている時分、初めての漆塗りで被れた。手袋をして、長袖、腕抜き、首にはタイルを巻いて完全防備でしたのであるが、負けた。顔は火照って、体の中から痒い。肘に内側とか脇の下などデリケートな所が痒い。空気で吸い込んだ漆が体の中のリンパや血液を通って広がるのだろう。その時、一番心配したのは、チンチンが倍くらいに腫れ上がりびっくりした。「私は30歳でもう使い物にならないのだろうか?」と真剣に心配した。しかし、その腫れも1週間ほどで直り、今では素手で漆を触ったりしている。

新人に漆部屋を追い出された小野さんが工房の隅で小さくなって漆を塗っていた。きっとこの写真を載せると怒られるだろうから、彼女からクレームが付くまでの時間制限で小さく載せておこう。 

早速、クレームが入り、この写真は削除しました。

竹工房オンセ

コメント (3)
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