
赤蜻蛉飛ぶや平家のちりぢりに (正岡子規)
※ 源平合戦において、源氏は白、平家は赤の旗を掲げた。
赤とんぼ (秋の季語:動物)
赤蜻蛉 赤トンボ 秋茜(あきあかね)
● 季語の意味・季語の解説
赤とんぼとは、赤い色をしたトンボの総称である。
秋茜(アキアカネ)、深山茜(ミヤマアカネ)など、様々な種類がある。
オスの方がより鮮やかな赤色をしており、メスは黄色っぽい。
蕪村の次の俳句は、赤に染まりきっていないメスの赤とんぼに愛しさを覚えて詠んだ句かもしれない。
染めあへぬ尾のゆかしさよ赤蜻蛉 (与謝蕪村)
夕日や紅葉と同じ色をしている赤とんぼは、秋の訪れを切々と感じさせてくれる。
江戸時代の俳人たちも、赤とんぼを見かけると、胸にせまってくるものがあったようだ。
盆つれて来たか野道の赤蜻蛉 (沢露川)
秋の季の赤とんぼうに定まりぬ (加舎白雄)
● 古今の俳句に学ぶ季語の活かし方
秋という季節は、木々や野の草が赤く色づいていく季節です。
ですから、赤とんぼは、夏の青さを、秋らしい赤に変えていくための色素を運んできた、秋の遣いのようにも思えます。
秋風をあやなす物か赤とんぼ (松岡青蘿)
あやなす=美しく彩る。
赤とんぼは、その赤い色とともに、音の無い静かな飛翔によっても秋の訪れを切々と感じさせ、心の中をしみじみとした情感で満たします。
心の中に生じたその情を直接的な表現は用いず、目に映る景を上手に詠むことで、間接的に表現できたら成功です。
夕汐や艸葉の末の赤蜻蛉 (小林一茶)
夕汐=ゆうしお。 艸=くさ(草)。
生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉 (夏目漱石)
赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり (正岡子規)
赤とんぼみな母探すごとくゆく (細谷源二)
赤とんぼ離れて杭のいろの失せ (上野泰)
会津なり顔にぶつかる赤とんぼ (藤田湘子)
さすりけり赤蜻蛉ゐし農馬の背 (凡茶)
シーソーの持ち上げてゐる赤とんぼ (凡茶)
参照 http://haiku-kigo.com/category/7337848-1.html