竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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円涼し長方形も亦涼し 高野素十

2019-07-12 | 今日の季語



円涼し長方形も亦涼し 高野素十

猛暑の折りから、何か涼しげな句はないかと探していたら、この句に突き当たった。しかし、よくわからない。素十は常に目に写るままに作句した俳人として有名だから、これはそのまま素直に受け取るべきなのだろう。つまり、たとえば「円」は「月」になぞらえてあるなどと解釈してはいけないのである。円も長方形も、純粋に幾何学的なそれということだ。いわゆる理科系の読者でないと、この作品の面白さはわからないのかもしれない。円や長方形で涼しいと感じられる人がいまもいるとすれば、私などには心底うらやましい昨今である。ふーっ、アツい。『空』(ふらんす堂・1993)所収。(清水哲男)


【涼し】 すずし
◇「涼気」 ◇「朝涼」(あさすず) ◇「夕涼」(ゆうすず) ◇「晩涼」(ばんりょう) ◇「夜涼」(やりょう)

夏の暑さの中にあって一服の涼気はことのほか心地よいものである。涼を最も求めるのは夏であることから夏の季語とされる。

例句 作者

晩涼や夫とは別の灯に過ごし 佐藤芙美子
壺涼し灼熱の火に歪みたる 大野雑草子
涼しさの頸をのべたる白鳥座 藤村真理
家涼し大き梁のもとに坐し 富永寒四郎
汽笛涼し川も列車も急カーブ 松室美千代
さざめきのなかへ柝の入る涼しさよ 矢島久栄
母ひとり住みて涼しき草屋かな 石井桐陰
すくひ売る豆腐涼しくすべらせて 牧野春江
花の実の中垣涼し梨子の窓 鬼貫
大声を上げて涼しくなりにけり 日下部宵三