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『再来年の約束』田中雅秀第一句集
連句から俳句へと活動の場をする著者の第一句集。
東京から会津に移住一五年、季語の実景を享受する豊かな日常を「あとがき」に語っている。
「花冷え」「幸いあれ」「新しい感動」の三章の名は敬愛する金子兜太師から贈られた色紙二枚と、大切にするようにと言われた師の言葉からのものだという。
「海原」 新潟支部代表北村美都子氏の 跋より
「ほうほたる弱い私を覚えてて」雅秀(まさほ)俳句の表現は一貫して口語体である。軽やかに口語を駆使し、現代に生きる女性の哀歓を呟くように語りかけるように書き留める。
自選より
桐の花本音はいつまでも言えず
タイミングが合わない回転ドアと夏
夏野かな何もしないという理想
ファルセットここからはもう雪の域
乗り継いでナウマン象に会う春野
初蝶にもうなっている遺稿かな
海亀は岸に寄りけり赤児泣く
麦の秋青いザリガニ胸に飼い
紅葉かつ散る乾電池切れるまで
白鳥の声する真夜のココアかな
昭和三八年東京生まれ、平成一二年より連句に親しみ、平成一五年「海程」会員、平成一七年「青山俳句工場」参加、平成一八年福島県文学賞奨励賞受賞、平成二〇年福島県文学賞準賞受賞、平成二〇年「海程」同人、
「海程」「青山俳句工場」同人